「銀河英雄伝説」ワルター・フォン・シェーンコップの名言・台詞をまとめていきます。
1巻 黎明篇
第五章 イゼルローン攻略
「堅牢な要塞に拠るほど、人は油断するもの。成功の可能性は大いにあります」
「失礼ながら、提督、あなたはよほどの正直ものか、でなければルドルフ大帝以来の詭弁家ですな」
「とにかく期待以上の返答はいただいた。この上は私も微力をつくすとしましょう。永遠ならざる平和のために」
「こううまくいくとは、正直なところ思わなかった。IDカードまでちゃんと偽造して来たのに、調べもせんのだからな……」
「どんな厳重なシステムも、運用する人間しだいという、いい教訓だ」
「こいつは戦闘と呼べるものではありませんな、閣下。一方的な虐殺です」
第六章 それぞれの星
「私は自分の人生の終幕を老衰死ということに決めているのです」
「150年ほど生きて、よぼよぼになり、孫や曾孫どもが、やっかい払いできると嬉し泣きするのを聴きながら、くたばるつもりでして……壮烈な戦死など趣味ではありませんでね」
「ぜひ私をそれまで生き延びさせて下さい」
2巻 野望篇
第三章 ヤン艦隊出動
「そもそも軍人というのが、あたなの柄じゃありませんよ。それでもこのうえなくうまくやっているんだ、独裁者だってけっこううまくこなせるでしょう」
3巻 雌伏篇
第五章 査問会
「(マシュンゴなら)首都に残っている柔弱な連中なら、片手で一個小隊はかたづけるでしょうよ」
「私なら一個中隊ですな」
第七章 要塞対要塞
「それはそれで、ヤン司令官の策略かもしれないと敵に思わせることもできるさ」
「そう、このまま要塞主砲どうしで撃ちあえば、共倒れということにもなる。その恐怖を敵に教えれば、敵もうかつに主砲は撃てなくなるでしょう」
「双方、手づまりになれば、つまり時間をかせぐこともできる。いま弱みを見せるわけにはいきません」
「敵もどうして、打つ策が早い!」
「白兵戦の用意をしろ。大至急だ。おれが直接、指揮をとる」
「すこし運動してくるだけです、すぐもどりますよ」
「コーヒーを一杯たのむ。砂糖はスプーンに半分、ミルクはいらない。すこし薄めにな。生涯最後のコーヒーかもしれんのだ、うまいやつを頼むぞ」
「まあね、女とコーヒーについては、死んでも妥協したくありませんでね」
4巻 策謀篇
第四章 銀河帝国正統政府
「おれの趣味は、ポプランほど悪くないよ」
「ゴールデンバウム家の専制権力を復活させるのが正義ですか。ビュコック提督にならって言えば、あたらしい辞書が必要ですな。反対する者はいないのですか」
「17、8の美少女だったら、熱狂の度はもっと上がるでしょうな。だいたい民衆は王子さまとか王女さまとかが大好きですから」
「なるほど、言論の自由は思想の自由よりテリトリーが狭いというわけですか。自由惑星同盟の自由とは、どちらに由来するのですかな」
「自由の国か。私は6歳の時に祖父母につれられてこの自由の国に亡命してきたんですよ。もう28年も前になりますがね、よく憶えています」
「針を撃ちこんでくるような風の寒さと、亡命者をこじきあつかいする入国管理官の、卑むような目つきをね。たぶん、死ぬまで忘れんでしょうな」
「つまり、私は一度、祖国を喪失した男です。一度が二度になったところで、いまさら驚きも嘆きもしませんよ」
第八章 鎮魂曲への招待
「ロイエンタール提督?」
「私はワルター・フォン・シェーンコップだ、死ぬまでの短い間、憶えておいていただこう」
「期待はずれのことを言わんでください。私は、いつかも言いましたが、あなたはラインハルト・フォン・ローエングラムにだって勝てると思っているのですから」
「その部下ごときに勝てなくてどうします」
5巻 風雲篇
第二章 ヤン提督の箱舟隊
「ほう、勝機!? すると、勝てると思ってはいらっしゃるのですか」
「独裁者を支持するのも民衆なら、反抗して自由と解放を求めるのも民衆です」
「民衆の多数が民主主義ではなく独裁を望んだとしたら、そのパラドックスをどう整合させるのか」
「要塞とか人妻とかいうものは、そう簡単に借りられないものですがね」
「ひっかけるしかないでしょう」
第七章 バーミリオン
「信念なんぞないくせに、戦えば必ず勝つ。唯心的な精神主義者から見れば許しがたい存在でしょうな、こまった人だ」
第九章 急転
「司令官! お話があります」
「さあ、政府の命令など無視して、全面攻撃を命令なさい。そうすれば、あなたはみっつのものを手に入れることができる」
「ラインハルト・フォン・ローエングラム公の生命と、宇宙と、未来の歴史とをね。決心なさい! あなたはこのまま前進するだけで歴史の本道を歩むことになるんだ」
「ユリアン、失礼な言種だが、お前さんはおとなになったな。おれもお前さんに見習って受けいれるべきは受けいれるとしよう」
「だが、どうしても譲れないところがある。それもまたお前さんの言うとおりだがな」
6巻 飛翔篇
第二章 ある年金生活者の肖像
「せっかく軍隊という牢獄から脱出しながら、結婚というべつの牢獄に志願してはいるとは、あなたも物ずきな人ですな」
第五章 混乱、錯乱、惑乱
「この罠の悪辣さは、罠と知りつつしたがうより他に対応のしようがないという点にあると見るべきだろう」
「専制政治だの民主政治だの、着ている服はちがっても、権力者の本質は変わらない。戦争をはじめた責任には口をぬぐって、戦争を終わらせた功績ばかり振りかざす輩だ」
「自分たち以外の人間を犠牲にしておいて、そら涙を流してみせるのが、奴らのもっとも得意な演技なんだからな」
「あの連中は、吾々が政府に対する造反の相談をしているのではないか、と、うたがっている。というより、期待している。だとしたら、期待に応えてやるのが俳優の義務だろうよ」
「その当時、つまり19、20歳のころの乱行ぶりを思い出すと……」
「いやいや、その当時に帰りたくなる。あのころは女という存在がじつに新鮮に見えた」
「おれは命令するのは好きだが、命令されるのはきらいでね」
第七章 コンバット・プレイ
「おれたちが迫ってもイエスと言わんかもしれんが、奥さんがすすめれば、おのずと異なるさ。第一、ノーと言って獄中で死んだところで、誰ひとり救われん」
「花園は盗賊に荒らされるものだし、美しい花は独占してよいものではないさ」
「一個人の人権を守るために国家の総力をあげるのが民主国というものでしょう。まして、ヤン・ウェンリーが、あなたたちのために貢献してきた過去を思ってもごらんなさい」
「なるほど、あなたは良心的でいられる範囲では良心的な政治家らしい」
「だが、結局のところ、あなたたち権力者はいつでも切り捨てるがわに立つ。手足を切りとるのは、たしかに痛いでしょう」
「ですが、切り捨てられる手足から見れば、結局のところどんな涙も自己陶酔にすぎませんよ」
「自分は国のため私情を殺して筋をとおした、自分は何とかわいそうで、しかもりっぱな男なんだ、というわけですな」
「『泣いて馬謖を斬る』か、ふん。自分が犠牲にならずにすむなら、いくらだってうれし涙が出ようってものでしょうな」
「ヤン・ウェンリーという男には悲劇の英雄などという役柄は似あわない。観客としてはシナリオの変更を要求したいわけですよ。場合によっては力ずくでね」
「どういたしまして。長生きするにしても、おもしろい人生でなくては意味がありませんからな。あなたをお助けするゆえんです」
「あなたのように、つねに命令を受け法にしばられてきた人間が、そういった桎梏を逃れたとき、どう考え、どう行動するか。私には大いに興味がありましてね。お気にめしませんか?」
「それで変わるとしたら、あなたもそれまでの人だ。歴史はくりかえし、単なる歴史年表上の人物がひとり、後世の中学生にとって頭痛の種にくわわるだけでしょうよ」
「まあ、とやかく味を云々する前に、食べてみたらどうです」
「まあそれもいいでしょう。不老不死でいられるわけではないし、死ぬのだったら納得して死にたい」
「帝国の奴隷のそのまた奴隷として死ぬより、反逆者ヤン提督の幕僚として死ぬほうを、すくなくとも私の子孫は喜ぶでしょうよ」
「けっこうな論理ですな。国家が個人を売るのはよいが、その逆は許されないとおっしゃる」
「無用な心配をするな。おれは150歳まで生きる予定なんだ。あと115年ある。こんな場所で死にはせんよ」
「さっさと行け! 砂時計の砂粒は、この際ダイヤモンドより貴重だ」
7巻 怒濤篇
第五章 蕩児たちの帰宅
「美人か?」
「美人だったら、おれの娘だ。そうでなかったら同姓同名の別人だ」
第八章 前途遼遠
「愛してもいない女を抱くには、人生は短すぎるだろうな」
「愛してもいない男に抱かれるにも、人生は短すぎるだろうよ」
「おれのことを不良中年だと言ってまわっているそうだが、おれはまだ中年じゃない」
8巻 乱離篇
第二章 春の嵐
「おれとしては、何も悪いことをできなかったような甲斐性なしに、30歳になってもらいたくないね」
第五章 魔術師、還らず
「助力が必要なら、キャゼルヌ中将、婦人兵にかぎって小生ひとりで全員を眠りの園から呼びもどしてさしあげようか」
第六章 祭りの後
「……おい、よせよ、ここは演劇学校の練習場じゃない。悲劇の舞台げいこなんぞやりたくもないぜ……」
「おれはこんな気分を味わうために、帝国から亡命してきたんじゃない。まさか国を捨てた報いじゃあるまいな」
「だとしたら、どうせのこと、国を捨てるより滅ぼしておいたほうが、後顧の憂いがなかったかもしれんて。だが、まあ、過去はともかく問題はこれからだ」
9巻 回天篇
第一章 辺境にて
「ヤン・ウェンリーの語調を借りれば、こういうことになるかな。歴史はどう語るか」
「ユリアン・ミンツはヤン・ウェンリーの弟子だった。ヤン・ウェンリーはユリアン・ミンツの師だった。さて、どちらになるものやら」
第三章 鳴動
「クロイツェル伍長がおれのことをどう思うか、それは彼女の問題であって、おれの問題ではないね。おれが彼女をどう思っているか、ということなら、それこそおれの問題だがね」
「美人をきらったことは、おれは一度もないよ。まして、生気のいい美人をね」
第七章 剣に生き……
「ユリアン、ひとつおれをムライ中将といっしょにハイネセンに行かせろよ」
「主目的はそれだが、ついでにやっておきたいことがあるのでな。つまり、左手にロイエンタール元帥の首……」
「そして右足の下に、ヨブ・トリューニヒトの首。右手に戦斧。この姿で記念写真を撮影して、ジャーナリズムに売りこんでやりたいのでね」
第八章 剣に斃れ
「要するに敵も味方もセンチメンタリストの集まりだってことだな。イゼルローンは聖なる墓、か」
10巻 落日篇
第二章 動乱への誘い
「そうか、それもいいさ。おれたちは変化を待っていた。いま変化がおこった。これに乗じて、変化の幅を大きくするのも、りっぱな戦略だ」
「同情するふりをしてもらわなくて結構だ。エキジビジョン・ゲームは二流俳優にまかせて、名優は皇帝陛下御前興行に出演するさ」
「むろん、惑星ハイネセン奪還作戦に決まっている。そう遠くのことでもあるまい」
第五章 昏迷の惑星
「独身者だけの楽しいパーティーに、妻帯者をまぜるわけにはいかんからね」
第七章 深紅の星路
「決まった。かの美しきブリュンヒルトに乗りこんで、皇帝の首をあげてやろう」
「……OK、ユリアン、先に皇帝と対面したほうが、やりたいようにやるさ。礼儀正しく話しかけるか、あの豪奢な黄金色の頭に、戦斧を振りおろして、大きな紅玉に変えるか」
「いや、屍体はひとつでいい。ラインハルト・フォン・ローエングラムの屍体だけでな。この世でもっとも美しく貴重な屍体ではあるが……」
「美人に頼られては、いやとは言えないね」
「さて、カリン、おれにもひとつ頼みがあるんだがな」
「恋愛は大いにやるべきだが、子供を産むのは、20歳をすぎてからにしてくれ。おれは30代で祖父さんになる気はないからな」
第八章 美姫は血を欲す
「ユリアン、ここはおれたちが防ぐ。お前さんは皇帝に会え。会って話あうなり、敬意をこめて首をはねとばすなり、お前さんの判断で歴史を創るんだ」
「事の軽重を誤るなよ、ユリアン。お前さんは皇帝に会って、対等の交渉をおこなうのが責務。おれたちはそのために環境をととのえるのが役目だ」
「むろん、そのつもりさ。ものわかりの悪い父親になって、娘の結婚をじゃまするという楽しみができたからな。さあ、さっさと行ってしまえよ、時間がない」
「あのとき三分間長く闘っていたら、ロイエンタール提督の首は、おれのものだったさ。そうしたら盾の表面に、あの金銀妖瞳(ヘテロクロミア)を宝石のように飾ってやったのにな」
「若いの、名を聞いておこうか」
「なに、ワルター・フォン・シェーンコップに傷を負わせた奴の名を、知っておきたかっただけさ」
「さて、誰が名誉を背負うのだ? ワルター・フォン・シェーンコップが生涯で最後に殺した相手、という名誉をな」
「ワルター・フォン・シェーンコップ、37歳、死に臨んで言い残せり──わが墓碑に銘は要らじ、ただ美女の涙のみ、わが魂を安らげん、と」
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。