「銀河英雄伝説」ラインハルト・フォン・ローエングラムの名言・台詞をまとめていきます。
1巻 黎明篇
第一章 永遠の夜のなかで
「卿の能弁は認める。しかしその主張を認めるわけにはいかぬ。撤退など思いもよらぬことだ」
「吾々が敵より圧倒的に有利な態勢にあるからだ」
「わが軍は敵に対し、兵力の集中と機動性の両点において優位に立っている。これを勝利の条件と言わずして何と呼ぶか!」
「吾々は包囲の危機にあるのではない。敵を各個撃破する好機にあるのだ」
こいつは無能なだけでなく低能だ。
「翌日には卿はその目で実績を確認することになるだろう」
「ジークフリードなんて、俗な名だ」
「でもキルヒアイスって姓はいいな。とても詩的だ。だから僕は君のこと、姓で呼ぶことにする」
「ルドルフに可能だったことが、おれには不可能だと思うか?」
第六章 それぞれの星
「そうだな……おれはあの男に友情や忠誠心を期待してはいない。あの男はおれを利用しようとしているだけだ。自分自身の目的を果たすためにな」
「……だから、おれも奴の頭脳を利用する。奴の動機などどうでもいいさ。奴ひとり御しえないで宇宙の覇権を望むなんて不可能だと思わないか」
第八章 死線
「勝つためだ、キルヒアイス」
「勝利はすでに確定している。このうえはそれを完全なものにせねばならぬ。叛乱軍の身のほど知らずどもを生かして還すな。その条件は充分にととのっているのだ」
「卿らの上に大神オーディンの恩寵あらんことを。乾杯(プロージット)!」
第九章 アムリッツァ
「私が魔法の壺でも持っていて、そこから艦隊が湧き出て来るとでも奴は思っているのか!?」
「ビッテンフェルトに伝えろ。総司令部に余剰兵力はない。他の戦線から兵力を回せば、全戦線のバランスが崩れる」
「現有兵力をもって部署を死守し、武人としての職責をまっとうせよ、と」
「10万隻の追撃戦ははじめて見るな」
「いや、やめておく。この段階で私がしゃしゃり出たら、部下の武勲を横どりするのかと言われるだろう」
「……おれは宇宙を手に入れることができると思うか?」
第十章 新たなる序章
「皇帝が死んだ? 心臓疾患だと……自然死か。あの男にはもったいない」
あと五年、否、二年長く生きていれば、犯した罪悪にふさわしい死にざまをさせてやったのに。
「出すぎるな、オーベルシュタイン。もう決めたことだ」
2巻 野望篇
第二章 発火点
「平和か。平和というのはな、キルヒアイス。無能が最大の悪徳とされないような幸福な時代を指していうのだ。貴族どもを見ろ」
そう、これこそが現実なのだ。では現実を変えなければならない。
「貴族どもが右往左往している。どちらに味方すれば有利かと、ない知恵をしぼってな。近来の名喜劇だ」
「貴族どもを、ほんとうに追いつめる必要はないのだ。追いつめられる、と、奴らに信じこませればそれでいい」
「もうすぐだ、キルヒアイス。もうすぐ、宇宙はおれたちのものになる」
第四章 流血の宇宙
「奴らにふさわしい名称があるぞ。賊軍というのだ。公文書にはそう記録しろ、賊軍とな、いいか」
「オフレッサーは勇者だ。ただし、石器時代のな」
第六章 勇気と忠誠
「自由な手腕か。そこが問題だ。メルカッツにそうさせるだけの器量が、ブラウンシュヴァイク公にあるとも思えないな」
「生死は問わぬ。ブラウンシュヴァイク公を私の前へつれてこい。成功した者は、一兵卒でも提督に昇進させてやるぞ。それに賞金もだ。機会をつかめ」
第八章 黄金樹は倒れた
「全宇宙が私の敵になっても、キルヒアイスは私に味方するだろう。実際、いままでずっとそうだった。だから私も彼に酬いてきたのだ。そのどこが悪いのか」
「フロイライン・マリーンドルフが言ったものだ。貴族の士官に対する平民兵士の反感が、私の勝因のひとつになるだろう、とな。みごとに的中したな」
第九章 さらば、遠き日
「嘘をつくな、ミッターマイヤー。卿は嘘をついている。キルヒアイスが、私を置いて先に死ぬわけはないんだ」
「帝国宰相たるかたを死刑にはできまい。自殺をお勧めせよ。苦しまずにすむ方法でな」
「(一族の)女子供は辺境に流刑。10歳以上の男子は、すべて死刑」
「私が幼年学校にはいったのは10歳のときだった。その年齢までは半人前と言っていいだろう。だから助命する。もし、成長して私を討とうとするなら、それもよい」
「実力のない覇者が打倒されるのは当然のことだからな」
「卿らも同様だ。私を倒すだけの自信と覚悟があるなら、いつでも挑んできてかまわないぞ」
「私はいままで多くの血を流してきた。これからもそうなるだろう。リヒテンラーデ一族の血が数滴、それに加わったところでなんの変化があるか」
「わが友」(キルヒアイスの墓碑名)
3巻 雌伏篇
第二章 はばたく禿鷹(ガイエ)
「百戦して百勝というわけにもいくまい。いちいち陳謝は無用である」
「体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ」
「滅びるべき男だったのだ。ことさら、おれが滅ぼしたのではない」
簒奪が世襲より悪いなどと、誰が定めたのか。
第四章 失われたもの
「心配ない、フロイライン。私も幼児殺害者になるのはいやだ。皇帝は殺さぬ」
「あなたが言ったように、私には敵が必要だ。そして私としては、敵より寛大で、なるべく正しくありたいと思っているのだから……」
第八章 帰還
「誤解するな、オーベルシュタイン。私は宇宙を盗みたいのではない。奪いたいのだ」
「これが権力をにぎるということか。おれの周囲には、おれを理解しようとしない奴ばかり残る。それとも、やはり、おれ自身の罪か……」
第九章 決意と野心
「卿に罪はない。一度の敗戦は、一度の勝利でつぐなえばよいのだ。遠路の征旅、ご苦労であった」
「……そうだな、ミュラーのような男は得がたい存在だ。無益な戦いで死なせるような愚行はやめよう。それでいいだろう、キルヒアイス?」
「奪ったにせよ、きずいたにせよ、最初の者は称賛を受ける資格がある。それは当然だ」
「……だが、自分の実力や努力によることなく、単に相続によって権力や富や名誉を手に入れた者が、何を主張する権利を持っているというのだ?」
「奴らには、実力ある者に対して慈悲を乞う道が許されるだけだ。おとなしく歴史の波に消えていくことこそ、唯一の選択だ」
「血統による王朝などという存在自体がおぞましいと私は思う。権力は一代かぎりのもので、それは譲られるべきものではない、奪われるものだ」
「私の跡を継ぐのは、私と同じか、それ以上の能力を持つ人間だ。そして、それは、何も私が死んだ後とはかぎらない……」
「……私を背後から刺し殺して、それですべてが手にはいると思う人間は、実行してみればいいんだ」
「ただし、失敗したらどんな結果がもたらされるか、その点には充分な想像力をはたらかせてもらおう」
4巻 策謀篇
第一章 雷鳴
「帝国の歴史家どもは、ルドルフ大帝の怒号を雷にたとえているが、ご存じだろう、フロイライン・マリーンドルフ」
「なかなか巧みな比喩だ。雷というやつは……要するにエネルギーの浪費だ。巨大な熱と光と音を持っているが、ただ荒れ狂うだけで、何ひとつ他を益するものはない」
「まさにルドルフにふさわしい。おれはちがう。おれはそうはならない」
「これは困った。一流の戯曲が一流の劇として完成を見るには、一流の俳優が必要だそうだが、卿の演技はいささか見えすいていて興をそぐな」
「三つの勢力のうちふたつが合体するとして、その一方が必ずフェザーンだなどとは思わぬほうがよいのではないか」
第二章 迷路
「いまでさえ厳重すぎるほどの警備をしているわけでもないのだ」
「宇宙には、あのイゼルローン要塞を無血占領するほどの男もいるといいうのに、たかだが皇帝ひとり誘拐することもできぬ輩と手を組めるか」
「よかろう。その赤ん坊に玉座をくれてやろう」
「子供の玩具としては多少おもしろみに欠けるが、そういう玩具を持っている赤ん坊が宇宙にひとりぐらいいてもいい。ふたりは多すぎるがな」
第三章 矢は放たれた
「もし、自由惑星同盟と称する叛徒どもが、この不逞なくわだてに荷担しているとすれば、奴らには必ず負債を支払わせる」
「奴らは一時の欲にかられて大局をあやまったと、後悔に打ちひしがれることになるだろう」
第四章 銀河帝国正統政府
「私はここに宣告する。不法かつ卑劣な手段によって幼年の皇帝を誘拐し、歴史を逆流させ、ひとたび確立された人民の権利を強奪しようとはかる門閥貴族の残党どもは、その悪業にふさわしい報いを受けることとなろう」
「彼らと野合し、宇宙の平和と秩序に不逞な挑戦をたくらむ自由惑星同盟の野心家たちも、同様の運命をまぬがれることはない」
「誤った選択は、正しい懲罰によってこそ矯正されるべきである。罪人に必要なものは交渉でも説得でもない。彼らにはそれを理解する能力も意思もないのだ」
「ただ力のみが、彼らの蒙を啓かせるだろう。今後、どれほど多量の血が失われることになろうとも、責任は、あげて愚劣な誘拐犯と共犯者とにあることを銘記せよ……」
第六章 作戦名「神々の黄昏」
「……作戦名は『神々の黄昏(ラグナロック)』」
「そのていどの力量は奴に期待してもよかろう。もし力量がなければないで、奴は自分の地位と権力を守るため、不平派の弾圧に狂奔しなくてはなるまい」
「当然ながら憎悪と反感は奴の一身に集中する。それが限界に達する寸前に奴を私の手で処断すれば、私としては効率よく古道具を処理できるというわけだ」
「しかもリアクションなしにな」
「だが、姉に嫌われても、私はもうもどれない。私がここで覇道を退いたら、誰が宇宙に統一と秩序を回復する?」
「自由惑星同盟の身のほど知らずや、旧体制の反動家どもに、人類の未来をゆだねるのか」
第八章 鎮魂曲への招待
「そうだ、終わりのはじまりだ、フロイライン」
第九章 フェザーン占領
「完璧に、とはなかなかいかぬものだ。卿にできなかったとあれば、他の何びとにも不可能だろう。謝罪の必要はない」
5巻 風雲篇
第一章 寒波到る
「敵の姿を見てその場で戦わないのは卑怯だ。などと考える近視眼の低能が、どこにもいるからな」
「だが、それ(消耗戦)では興がなさすぎる」
「ぜひ敵に秩序ある行動を望みたいものだ……」
自分は、敵が存在しないという状態に耐えうるだろうか。
第三章 自由の宇宙を求めて
「フロイライン・マリーンドルフ、私は覇者たろうと志してきたし、それを実現するためにひとつの掟を自分自身に科してきた。つまり、自ら陣頭に立つことだ」
「かつて戦って倒してきた能なしの大貴族どもと私が異なる点はそこにある。兵士たちが私を支持する理由もだ」
「フロイライン、私は戦いたいのだ」
「フロイライン、どうせ宇宙をこの手につかむなら、手袋ごしにではなく、素手によってでありたいと思うのだ」
第四章 双頭の蛇
「わが軍は彼らの挨拶に対し、相応の礼をもってむくいるとしよう。双頭の蛇の陣形によって……」
「この陣形には後方などというものはないのだ、ミュラー、あるのはふたつめの頭だ」
「私は勝つためにここへ来たのだ、ミッターマイヤー、そして勝つには戦わなくてはならないし、戦うからには安全な場所にいる気はない」
「エミール、勝利を願ってくれたお前のために、私は勝とう。だから、お前は生きて還って、家族に伝えるのだ」
「ラインハルト・フォン・ローエングラムをランテマリオの戦いで勝たせたのは自分だ、とな」
「同盟軍のあれは勇猛ではなく狂躁というのだ。ミッターマイヤーは闘牛士だ。猛牛に押しまくられているかに見えて、じつはその力を温存し、勝機をねらっている。だが……」
「案外、本気で攻勢に辟易しているのかもしれんな。そろそろ私も動くことにしようか……」
「なかなか楽には勝てぬものだ。老人はしぶとい。メルカッツもうそうだったが」
「……やはり使わざるをえないか。ビッテンフェルトに連絡せよ。卿の出番だ。黒色槍騎兵の槍先に敵の総司令官の軍用ベレーをかかげて私のところへ持ってこい、と」
「何を恐れるか! この期におよんで同盟軍の新規兵力が出てきたところで、各個撃破するまでのことだ。うろたえるな! 秩序をたもって後退せよ」
「万が一、フェザーン方面への道が閉ざされたら、このままバーラト星系へ直進し、同盟の死期を早めてやるだけのことだ」
「そしてイゼルローン回廊を通って帝国へ凱旋する。それですむではないか」
第五章 暁闇
「案ずるな、エミール。能力が同じであれば運が勝敗を左右する。私は自分自身の運の他に、友人からも運をもらった。その友人は運だけでなく、生命も未来も私にくれたのだ」
「私はふたり分の運を背負っている。だからヤン・ウェンリーなどに負けはせぬ。案ずるな」
第六章 連戦
「その点(対策)は考えている。ひとつ卿らの不安をはらってやるとしようか」
「見るがいい。薄い紙でも、数十枚をかさねれば、ワインをすべて吸いとってしまう。私はヤン・ウェンリーの鋭鋒に対するに、この戦法をもってするつもりだ」
「彼の兵力は私の防御陣のすべてを突破することはかなわぬ」
「そして、彼の進撃がとまったとき、卿らは反転した艦隊をもって彼を包囲し、その兵力を殲滅し、私の前に彼をつれてくるのだ。生死は問わぬ」
「彼の姿を自由惑星同盟の為政者どもにしめし、彼らに城下の盟を誓わせよう」
「いや、だめだ、フロイライン。私は誰に対しても負けるわけにはいかない。私に対する人望も信仰も、私が不敗であることに由来する」
「私は聖者の徳によって兵士や民衆の支持を受けているわけではないのだからな」
「エミールよ、それはちがう。名将というものは退くべき時機と逃げる方法とをわきまえた者にのみ与えられる呼称だ」
「進むことと闘うことしか知らぬ猛獣は、猟師のひきたて役にしかなれぬ」
「(私も)逃げる必要があれば逃げる。必要がなかっただけだ」
「エミール、私に学ぼうと思うな。私の模倣は誰にもできぬ。かえって有害になる。だが、ヤン・ウェンリーのような男に学べば、すくなくとも愚将にはならずにすむだろう」
「私には他の生きかたはできないのだ。いや、もしかしたらできたのかもしれないが、子供のころにこの道を歩むようにさだまったのだ」
「私は奪われたものをとりかえすために歩みはじめた。だが……」
「もう寝なさい。子供には夢を見る時間が必要だ」
「お前が望んだことだ。望みどおりにしてやったからには、私の前に出てくるんだろうな、奇跡のヤン」
第八章 死闘
「してやられたか……勝ちづつけて、勝ちつづけて、最後になって負けるのか。キルヒアイス、おれはここまでしかこれない男だったのか」
「出すぎたまねをするな。私は必要のないとき逃亡する戦法を誰からも学ばなかった。卑怯者が最後の勝者となった例があるか」
「ここでヤン・ウェンリーに殺されるとしたら、私はそのていどの男だ。何が宇宙の覇者か」
「私に敗死した奴らが、天上(ヴァルハラ)や地獄で私を嘲笑することだろう。卿らは私を笑い者にしたいのか」
「吾に余剰兵力なし。そこで戦死せよ。言いたいことがあればいずれヴァルハラで聞く」
第九章 急転
「……私は勝利をゆずられたというわけか。なさけない話だな。私は本来、自分のものでない勝利をゆずってもらったのか。まるで乞食のように……」
第十章 「皇帝ばんざい!」
「それほど民主主義とはよいものかな。銀河連邦の民主共和政は、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムという醜悪な奇形児を生んだではないか」
「それに卿の愛してやまぬ──ことと思うが──自由惑星同盟を私の手に売りわたしたのは、同盟の国民多数が自らの意志によって選出した元首だ」
「民主共和政とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体のことか」
「正義は絶対ではなく、ひとつでさえないというのだな。それが卿の信念というわけか」
「私は真理など必要としなかった。自分の望むところのものを自由にする力だけが必要だった。逆にいえば、きらいな奴の命令をきかずにすむだけの力がな」
「私には友人がいた。その友人とふたりで、宇宙を手に入れることを誓約しあったとき、同時にこうも誓ったものだ」
「卑劣な大貴族どものまねはすまい、必ず陣頭に立って戦い、勝利をえよう、と……」
「私はその友人のために、いつでも犠牲になるつもりだった」
「だが、実際に、犠牲なったのは、いつも彼のほうだった。私はそれに甘えて、甘えきって、ついには彼の生命まで私のために失わせてしまった……」
「その友人がいま生きていたら、私は生きた卿ではなく、卿の死体と対面していたはずだ」
「フロイライン・マリーンドルフ、私は心の狭い男だ。あなたに生命を救ってもらったとわかっているのに、いまは礼を言う気になれぬ。すこし時を貸してくれ」
「どこへでも行くがいい。滅びるべきときに滅びそこねたものは、国でも人でも、みじめに朽ちはてていくだけだ」
「ゴールデンバウム家再興の夢を見たいというのであれば、いつまでもベッドにもぐりこんで現実を見なければよい。そんな奴らに、なぜこちらが真剣につきあわねばならぬ」
6巻 飛翔篇
第一章 キュンメル事件
「用心すれば死なずにすむのか? 病気になれば、その影武者が私のかわりに病原菌を引きうけてくれるとでもいうのか。二度とらちもないことを言うな」
「ここで卿のために殺されるなら、予の命数もそれまでだ。惜しむべき何物もない」
「ケスラー、卿が生命をねらわれたとする。犯人をとらえたとして、犯人が所持している凶器を卿は処罰するか?」
お前とともに、強大な敵と戦うのは楽しかった。だが、自分がもっとも強大な存在になってしまった今、おれはときどき自分自身を撃ちくだいてしまいたくなる。
世のなかは、もっと強大な敵に満ちていてよいはずなのに。
7巻 怒濤篇
第一章 黄金獅子旗の下に
「去年のワインのまずさをなげくより、今年植える葡萄の種について研究しよう。そのほうが効率的だ」
「それにしても、ヤン・ウェンリーひとりを容れることもできない民主政治とは、なんと偏狭なものではないか」
「次官の職責は尚書につぐものだ。卿の才幹がシルヴァーベルヒをしのぐものであれば、彼ではなく卿を尚書に任じたであろう。卿は恭謙にして自分自身を知る。それでよし」
「ビッテンフェルトの言やよし。予は考えすぎた。大義名分の最大にして至高なるものは、宇宙の統一である」
「予に居城など必要ない。予のあるところがすなわち銀河帝国の王城だ。当分は戦艦ブリュンヒルトが玉座の置きどころとなろう」
第三章 「神々の黄昏」ふたたび
「フロイライン・マリーンドルフは、ものごとの道理をよくわきまえている。密告などを予が喜ぶものと思っている輩には、よい教訓になったろう」
「フロイライン・マリーンドルフは、人の心を映す銀の鏡を持っているようだな」
第六章 マル・アデッタ星域の会戦
「比類なく聡明なフロイラインでも錯覚することがあるとみえる。もしヤン・ウェンリーに敗北することがなければ、予は不老不死でいられるのだろうか」
「卿の進言は誤っていない。だが、歴戦の老提督がおそらくは死を賭しての挑戦、受けねば非礼にあたろう」
「他にも理由がないわけではないが、予と予の軍隊にとってはそれで充分のはずだ」
「あれはあれでよい。ビッテンフェルトが自重に度をすごすようなことがあれば、黒色槍騎兵の長所をかえって殺ぐことになろう」
「他人に何がわかる……」
「お前は予などよりずっと気宇が大きいな。予には銀河系だけで充分だ。他の星雲はお前が征服するといい」
第七章 冬バラ園の勅令
「不満か。卿の忠誠心は貴重だが、度をすぎればそれが予をルドルフにするぞ」
「卿らのためにさく時間は、予には貴重すぎる。ひとつだけ聞いておこう。卿らがことをおこなったとき、卿らの羞恥心はどの方角をむいていたのか」
「……フロイラインの予言したとおりだった。腐肉を食う輩は、自分の嗜好で他人を量るものらしいな」
「……奴らが下水の汚泥とすれば、マル・アデッタで死んだ老人はまさに新雪だったな」
「不死鳥は灰のなかからこそよみがえる。生焼けでは再生をえることはできぬ。あの老人は、そのことを知っていたのだ。奴らを処断して、ヴァルハラであの老人にわびさせよう」
「りっぱな男たちだ。そのような男たちが中堅以下の地位にとどまっているようだからこそ、同盟は滅びたのだ。その者たちに危害を加えてはならぬ」
「さしあたり従順な者たちだけを登用して政務を担当させよ」
第九章 祭りの前
「ミッターマイヤー、そのくらいにしておけ。卿の口は大軍を叱咤するためにあるもの。他人を非難するのは似合わぬ」
「ここに宣言する。予はヤン・ウェンリーを予の前にひざまずかせぬかぎり、オーディンはおろかフェザーンへも帰らぬことを……」
「……予は呪われた生まれつきかもしれない」
「平和よりも戦いを好むのだ。流血によってしか人生をいろどりえなくなっている。あるいは他にやりようがあるのかもしれないのにな」
8巻 乱離篇
第一章 風は回廊へ
「ハイネセンが真に同盟人の敬慕に値する男なら、予の処置を是とするだろう。巨大な像など、まともな人間に耐えられるものではない」
「ヤン・ウェンリーがいかに希謀を誇ろうとも、この期におよんで軍事上の選択肢はふたつしかありえない」
「進んで戦うか、退いて守るか、だ。彼がどう選択し、どう予をしとめようとするか、大いに興味がある」
「名将の器量が他の条件に規制されるとは気の毒なことだな」
「フロイライン、予が休息するとしたら、ヤン・ウェンリーに対する負債を、まず完済せねばならぬ。彼を屈伏させ、宇宙の統一をはたしてから、予にとってはすべてがはじまるのだ」
第三章 常勝と不敗と
「ヤン・ウェンリーも戦いを欲するか」
「ちがうな。勝利か死か、ではない。勝利か、より完全な勝利か、だ」
第四章 万華鏡
「これだ、これでなくてはな」
「予はこれまで戦うにあたって、受け身となってよき結果を報われたことは一度もなかった。それを忘れたとき、軍神は予の怠惰を罰したもうた」
「今回、いまだ勝利をえられぬゆえんである」
「ヤン・ウェンリーは狭隘な回廊の地形を利し、わが軍に縦隊列を強いて、わが軍の多数に対抗している。予はそれに対し、巧緻をもって報おうとしたが、これは誤りであった」
「正面から力をもって彼の抵抗を撃砕し、彼をふたたび起つあたわざらしめることこそ、予と予の軍隊の赴くべき道であろう」
第五章 魔術師、還らず
「宇宙の支配者に対してそうも歯に衣を着せない人間は、生者ではあなただけだな、フロイライン」
「あなたの勇気と率直さは賞賛に値するが、予がいつもそれを喜ぶと思ってもらってはこまる」
「キルヒアイスが諌めにきたのだ。キルヒアイスが言ったのだ、これ以上ヤン・ウェンリーと争うのはおよしください、と。あいつは死んでまでおれに意見する……」
第七章 失意の凱旋
「あなたから凶報を聞いたことは幾度もあるが、今回はきわめつけだ。それほど予を失望させる権利が、あなたにあるのか?」
「誰も彼も、敵も味方も、皆、予をおいて行ってしまう! なぜ予のために生きつづけないのか!」
「予には敵が必要なのだ」
「予はあの男に、予以外の者に斃される権利などを与えたおぼえはない。あの男はバーミリオンでもイゼルローン回廊でも、予を勝たせなかった。予の貴重な将帥を幾人も斃した」
「そのあげくに、予以外の者の手にかかったというのか!」
「ひとりの貴族が死んで一万人の平民が救われるなら、それが予にとっての正義というものだ。餓死するのがいやなら働け。平民たちは500年間そうしてきたのだからな」
「もし予が死んで血族なきときは、予の臣下でも他の何者でもよい、実力ある者が自らを帝位にでも王位にでもつけばよかろう。もともと予はそう思っていた」
「予が全宇宙を征服したからといって、予の子孫が実力も名望もなくそれを継承すべき理由はあるまい」
第八章 遷都令
「キルヒアイスの墓がオーディンにある。予が予のつごうで政庁と大本営を遷したからといって、故人の眠る場所をほしいままに動かすわけにはいくまい」
「予はいずれオーディンに還る。だが、その時期はまだ予の掌中にはない。還る日までに、すませておかねばならぬことが数多くあるはずだから」
9巻 回天篇
第二章 夏の終わりのバラ
「フロイライン」
「帰らないでほしい。ここにいてくれ。今夜は、ひとりでいることに耐えられそうにないのだ。たのむ、予をひとりにしないでくれ」
第三章 鳴動
「陰気で消極的なビッテンフェルト、女気なしのロイエンタール、饒舌なアイゼナッハ、浮気者のミッターマイヤー、無教養で粗野なメックリンガー、いたけだかなミュラー、皆、彼ららしくない」
「人それぞれ個性というものがある。ロイエンタールが法を犯したとか、相手をだましたとかいうならともかく、色恋ざたで一方だけを被告席に着かせるわけにもいくまい」
第五章 ウルヴァシー事件
「無用の心配をするな、エミール、予はいますこし見栄えのする場所で死ぬように決めている。皇帝の墓所はウルヴァシーなどというのは、ひびきがよくない」
「撃つがいい。ラインハルト・フォン・ローエングラムはただひとりで、それを殺す者もひとりしか歴史には残らないのだからな。そのひとりに誰がなる?」
「予は、卿を、死後に元帥にするがごときを望まぬ。いくら遅れてもかまわぬ、後から必ず来いよ」
第六章 叛逆は英雄の特権
「……ルッツはよく予を見すてずにいてくれたものだ。それどころか、生命を擲って予を救ってくれた」
「予は愚かだった。小人の権利を守って、有能な忠臣に不満と不安をいだかせていたとはな」
第七章 剣に生き……
「だが、ロイエンタールを討って、それでおれの心は安らぎをえるのだろうか」
第九章 終わりなき鎮魂曲
「おれ自身が戦ってこそ、ロイエンタールを満足させてやれたのだろうか……」
「卿は死ぬな。卿がいなくなれば、帝国全軍に、用兵の何たるかを身をもって教える者がいなくなる。予も貴重な戦友を失う。これは命令だ、死ぬなよ」
10巻 落日篇
第三章 コズミック・モザイク
「皇紀の忠告はもっともだが、寝台の端に蚊が一匹ひそんでいては、安眠もできかねる。戦いは共和主義者どもが望んだことだ、望みをかなえてやろうではないか」
第四章 平和へ、流血経由
「予は誤ったようだ。オーベルシュタインは、いついかなる状況においても、公人としての責務を優先させる。そのあらわれかたこそが、他者に憎悪されるものであったのにな」
「皇紀、予はオーベルシュタインを好いたことは、一度もないのだ。それなのに、顧みると、もっとも多く、おの男の進言にしたがってきたような気がする」
「あの男は、いつも反論の余地を与えぬほど、正論を主張するからだ」
「彼女たち(宮廷の美女)は、皮膚はまことに美しいが、頭蓋骨のなかみはクリームバターでできている。おれはケーキを相手に恋愛するつもりはない」
第五章 昏迷の惑星
「(拒絶したら)いかがする? そのときは奴らこそが、流血と混乱に対する責任を負うことになろうよ」
第七章 深紅の星路
「彼らが兵をもって挑んでくるのであれば、こちらにそれを回避すべき理由はない。もともと、そのためにこそ親征してきたのだ」
「かのヤン・ウェンリーは、勝算がなければ戦わぬ男だった。ゆえに予の尊敬に値したのだが、彼の後継者はどうかな」
「戦わずして後悔するより、戦って後悔する」
「戦うにあたり、卿らにあらためて言っておこう。ゴールデンバウム王朝の過去はいざ知らず、ローエングラム王朝あるかぎり、銀河帝国の軍隊は、皇帝がかならず陣頭に立つ」
「予の息子もだ。ローエングラム王朝の皇帝は、兵士たちの背中に隠れて、安全な宮廷から戦争を指揮することはせぬ」
「卿らに誓約しよう、卑怯者がローエングラム王朝において至尊の座を占めることは、けっしてない、と……」
第八章 美姫は血を欲す
「待て! 卿らふたりとも、介入することを許さぬ。このまま放置しておけ」
「ヤン・ウェンリーの精神的な遺産を継承したと称するほどの男なら、先人に智はおよばずとも、勇においていささかは非凡なところがあろう。ヤンの後継者の名は何といったか」
「そのミンツなる者が、予の兵士たちの抵抗を排して、予のもとに至りえたならば、すくなくともその勇を認め、対等の立場で要求を受諾してやってもよい」
「それとも、いわゆる専制君主の慈悲や、その臣下の協力がなければ、ここへ至る力もないというのでは、何を要求する資格もあるまい」
「すべて、その者が姿を予の前にあらわしてからのことだ」
「銀河帝国の皇帝ともあろう者が、客人に会うのに、服装をととのえぬわけにはいくまい。たとえ招かれざる客であってもな」
「来させろ。まだその男は、予のもとに到着していないぞ」
「医師を呼んでやれ。予には無用のものだが、この者には役だとう。それと、ミッターマイヤー、この者の大言に免じて、戦闘をやめさせよ」
「ここまで生き残った者たちには、最後まで生き残る資格があろうから」
第九章 黄金獅子旗に光なし
「ハイネセンで死なねばならないとしたら、ここで死ぬ。避難民のように逃げまどうのはいやだ」
「予はフェザーンに帰る。予を待っていてくれる者たちが幾人かいるのでな。最後の旅をする価値があるだろう」
「卿もフェザーンへ来るがいい」
「そのほうがよい。予よりもむしろつぎの支配者に、卿の抱負と識見を語っておくべきだろう。皇紀は予よりはるかに政治家としての識見に富む」
「具体的なことは、むしろ彼女と話しあうがよいだろう」
第十章 夢、見果てたり
「夢を見ていました、姉上……」
「……いえ、もう充分に見ました。誰も見たことのない夢を、充分すぎるほど」
「帝国などというものは、強い者がそれを支配すればよい。だが、この子に、対等の友人をひとり残してやりたいと思ってな」
「皇紀、あなたなら、予より賢明に、宇宙を統治していけるだろう。立憲体制に移行するなら、それもよし」
「いずれにしても、生ある者のなかで、もっとも強大で賢明な者が宇宙を支配すればよいのだ」
「もしアレクサンデル・ジークフリードがその力量を持たぬなら、ローエングラム王朝など、あえて存続させる要はない」
「すべて、あなたの思うとおりにやってくれれば、それ以上、望むことはない……」
「宇宙を手に入れたら……みんなで……」
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。