「銀河英雄伝説」ヤン・ウェンリーの名言・台詞まとめ

「銀河英雄伝説」ヤン・ウェンリーの名言・台詞をまとめていきます。

 

1巻 黎明篇

第一章 永遠の夜のなかで

「ひとつ狂うとすべてが狂うものだな」

 

「要するに3,4000年前から戦いの本質というものは変化していない。戦場に着くまでは補給が、着いてからは指揮官の質が、勝敗を左右する」

 

硬直した固定観念ほど危険なものはない。

 

第二章 アスターテ会戦

「心配するな。私の命令に従えば助かる。生還したい者は落着いて私の指示に従ってほしい。わが部隊は現在のところ負けているが、要は最後の瞬間に勝っていればいいのだ」

 

「(失敗すれば)頭をかいてごまかすさ」

 

第四章 第一三艦隊誕生

「(負けたのは)首脳部の作戦指揮がまずかったからさ」

 

本来、名将と愚将との間に道義上の優劣はない。愚将が味方を100万人殺すとき、名将は敵を100万人殺す。

その差があるだけで、殺されても殺さないという絶対的平和主義の見地からすれば、どちらも大量殺人者であることに差はないのだ。

 

「生意気言うな、子供のくせに。子供ってのはな、大人を喰物にして成長するもんだ」

 

「やたらと恩賞を与えるのは窮迫している証拠だと古代の兵書にあります。敗北から目をそらせる必要があるからだそうです」

 

「少数をもって多数を破るのは、一見、華麗ではありますが、用兵の常道から外れており、戦術ではなく奇術の範疇に属するものです」

「それと知らないローエングラム伯とは思えません。次は圧倒的な大軍を率いて攻めて来るでしょう」

 

「ボタン戦争と称された一時代、レーダーと電子工学が奇形的に発達していた一時代をはぶいて、戦場における用兵にはつねに一定の法則がありました」

「兵力を集中すること。その兵力を高速で移動させること、この両者です。これを要約すればただ一言、『むだな兵力を作るな』です」

 

第五章 イゼルローン攻略

「貴官を信用しないかぎり、この計画そのものが成立しない。だから信用する。こいつは大前提なんだ」

 

「恒久平和なんて人類の歴史上なかった。だから私はそんなもの望みはしない。だが何十年かの平和で豊かな時代は存在できた」

「吾々が次の世代に何か遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和が一番だ」

「要するに私の希望は、たかだかこのさき何十年かの平和なんだ。だがそれでも、その十分ノ一の期間の戦乱に勝ること幾万倍だと思う」

「私の家に14歳の男の子がいるが、その子が戦場に引き出されるのを見たくない。そういうことだ」

 

「……そう、その通りだな。帝国軍の悪いまねを吾々がすることはない。大佐、彼らに降伏を勧告してみてくれ。それが嫌なら逃げるように、追撃はしない、と」

 

「武人の心だって?」
こんな奴がいるから戦争が絶えないのだ。

 

「どいつもこいつも全然、わかっていやしないのさ」

「魔術だの奇術だの、人の苦労も知らないで言いたいことを言うんだからな。私は古代からの用兵術を応用したんだ。敵の主力とその本拠地を分断して個別に攻略する方法さ」

「それにちょっとスパイスを効かせただけで、魔術なんぞ使ってはいないんだが、うっかりおだてに乗ったりしたら、今度は素手でたったひとり、帝国首都を占領して来い、なんて言われかねない」

 

「賞められるのは勝っている期間だけさ。戦い続けていれば、いつかは負ける。そのときどう掌が返るか、他人事ならおもしろいがね」

 

第六章 それぞれの星

傍にいるこの少年が、彼と同じ星を見上げる必要はいささかもない。
人は自分だけの星をつかむべきなのだ。たとえどのような兇星であっても……。

 

第七章 幕間狂言

「勝敗は結局、相対的なもので……彼が犯した以上の失敗を我々が犯せば、彼が勝って我々が敗れる道理です」

 

「私は権力や武力を軽蔑しているわけではないのです。いや、じつは怖いのです。権力や武力を手に入れたとき、ほとんどの人間が醜く変わるという例を、私はいくつも知っています」

「そして自分は変わらないという自信が持てないのです」

 

第八章 死線

「(民衆を助けるのは)吾々がルドルフにならないためにさ」

 

「まったくみごとだ、ローエングラム伯」

自分にはここまで徹底的にはやれない。やれば勝てるとわかっていてもやれないだろう。それがローエングラム伯と自分の差であり、自分が彼を恐れる理由でもあるのだ。

──この差が、いつか重大な結果を招くことになるかもしれない……。

 

第九章 アムリッツァ

「中尉……私は少し歴史を学んだ。それで知ったのだが、人間の社会には思想の潮流が二つあるんだ。生命以上の価値が存在する、という説と、生命に優るものはない、という説とだ」

「人は戦いを始めるとき前者を口実にし、戦いをやめるとき後者を理由にする。それを何百年、何千年も続けて来た……」

「このさき、何千年もそうなんだろうか」

「いや、人類全体なんてどうでもいい。私はぜんたい、流した血の量に値するだけの何かをやれるんだろうか」

 

第十章 新たなる序章

「他人に言えるようなことじゃないよ。まったく、人間は勝つことだけ考えていると、際限なく卑しくなるものだな」

 

「司令官が自ら銃をとって自分を守らなければならないようでは戦いは負けさ。そんなはめにならないことだけを私は考えている」

 

2巻 野望篇

第一章 嵐の前

「もし私が銃を持っていて、撃ったとしてだ、命中すると思うか?」
「じゃ、持っていてもしかたがない」

 

「用心しても、だめなときはだめさ」

 

「地位が上がるにつれて、発想が不純になっていくのがよくわかるよ」

 

どの時代にも狂信者の種はつきない。それにしても、これはひどすぎる。
老衰した辺境の一惑星をうばいかえすために、何百万人もの血を流してよい、という発想はどこからくるのであろう。

 

「皆さん、楽しくやってください」(二秒スピーチ)

 

「(クーデターが)発生すれば、鎮圧するのに大兵力と時間を必要としますし、傷も残ります。ですが、未然に防げば、憲兵の一個中隊で、ことはすみますから」

 

第三章 ヤン艦隊出動

「戦わずに降伏させることを考えてみよう。そのほうが第一、楽だ」
「ところが、世の中の半分以上は、兵士を多く死なせる司令官ほど苦労をしていると考えるのさ」

 

「私はベストよりベターを選びたいんだ。いまの同盟の権力がだめだってことはたしかにわかっている。だけど、救国軍事会議とやらのスローガンを君も見たろう」

「あの連中は、いまの連中よりひどいじゃないか」

 

「独裁者ヤン・ウェンリーか。どう考えても柄じゃないね」

 

第五章 ドーリア星域の会戦

「未来のヤン・ウェンリーがいるかもしれないさ。平和な時代なら、まだ私は無名のままさ。歴史学者の卵で、まだひよこにすらなっていないだろう」

 

「もうすぐ戦いが始まる。ろくでもない戦いだが、それだけに勝たなくては意味がない。勝つための計算はしてあるから、無理をせず、気楽にやってくれ」

「かかっているものは、たかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば、たいした価値のあるものじゃない……それでは、みんな、そろそろ始めるとしようか」

 

第七章 誰がための勝利

「人間は誰でも身の安全をはかるものだ。この私だって、もっと責任の軽い立場にいれば、形勢の有利なほうに味方しよう、と思ったかもしれない。まして他人なら、なおさらのことさ」

 

「信念で勝てるのなら、これほど楽なことはない。誰だって勝ちたいんだから」

 

「専制とはどういうことだ? 市民から選ばれない為政者が、権力と暴力によって市民の自由をうばい、支配しようとすることだろう」

「それはつまり、ハイネセンにおいて現に貴官たちがやっていることだ」
「貴官たちこそが専制者だ。そうではないか」

 

「政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。それは個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂をとってもそれを批判することが出来ない状態を、政治の腐敗というんだ」

 

「人それぞれの正義さ」

 

第九章 さらば、遠き日

正論を吐く人間はたしかにりっぱであろう。だが、信じてもいない正論を吐く人間は、はたしてどうなのか。

 

「今日は危なかった」

トリューニヒトと会ったとき、嫌悪感がますばかりだったが、ふと思ったんだ」
「こんな男に正当な権力を与える民主主義とはなんなのか、こんな男を支持しつづける民衆とはなんなのか、とね」

「我に返って、ぞっとした。昔のルドルフ・フォン・ゴールデンバウムや、この前クーデターを起こした連中は、そう思いつづけて、あげくにこれを救うのは自分しかいないと確信したにちがいない」

「まったく、逆説的だが、ルドルフを悪逆な専制者にしたのは、全人類に対する彼の責任感と使命感なんだ」

 

3巻 雌伏篇

第一章 初陣

「抵抗できない部下をなぐるような男が、軍人として賞賛に値するというなら、軍人とは人類の恥部そのものだな。そんな軍人は必要ない。すくなくとも、私にはね」

 

「一度も死んだことのない奴が、死についてえらそうに語るのを信用するのかい?」

 

「兵力の逐次投入は、この際、かえって収拾の機会を減少させ、なしくずしに戦火の拡大をまねくだろう。全艦隊をもって急行し、敵の増援が来る前に一戦して撤退する」

 

第五章 査問会

何十年かに一度出るかどうかという偉人に変革をゆだねること自体、民主政治の原則に反する。

英雄や偉人が存在する必要をなくすための制度が民主共和制であるのだが、いつ理想は現実に対して勝者となれるのだろうか。

 

「将兵の生命より無人の衛星が惜しいとおっしゃるなら、私の判断は誤っていたことになりますが……」

 

「それが非難に値するということであれば、甘んじてお受けしますが、それにはより完成度の高い代案を示していただかないことには、私自身はともかく、生命がけで戦った部下たちが納得しないでしょう」

 

「あれは私には珍しく見識のある発言だったと思います」

「国家が細胞分裂して個人になるのではなく、主体的な意志を持った個人が集まって国家を構成するものである以上、どちらが主でどちらが従であるか、民主社会にとっては自明の理でしょう」

 

「そうでしょうか。人間は国家がなくても生きられますが、人間なくして国家は存立しえません」

 

「無用な誤解とは、どういうものか、具体的に教えていただけませんか」
何か証拠があっての深刻な疑惑ならともかく、無用の誤解などという正体不明のものに対して備える必要を、小官は感じません」

 

第六章 武器なき戦い

「すばらしいご意見です。戦争で生命を落としたり肉親を失ったりしたことのない人であれば、信じたくなるかもしれませんね」

「まして、戦争を利用して、他人の犠牲の上に自らの利益をきずこうとする人々にとっては、魅力的な考えでしょう」

「ありもしない祖国愛をあると見せかけて他人をあざむくような人々にとってもね」

 

「人間の行為のなかで、何がもっとも卑劣で恥知らずか」

「それは、権力を持った人間、権力に媚を売る人間が、安全な場所に隠れて戦争を賛美し、他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場へ送り出すことです」

「宇宙を平和にするためには、帝国と無益な戦いをつづけるより、まずその種の悪質な寄生虫を駆除することから始めるべきではありませんか」

 

「わかりました。イゼルローンにもどりましょう。あそこには私の部下や友人がいますから」

 

「何にしても、わが同盟政府には、両手をしばっておいて戦いを強いる癖がおありだから、困ったものですよ」

 

「おっしゃるとおりです。何と言ってもイゼルローンは私の家ですからね」
「じゃあ、大尉、わが家に帰るとしようか」

 

第八章 帰還

何百年かにひとり出現するかどうか、という英雄や偉人の権力を制限する不利益より、凡庸な人間に強大すぎる権力を持たせないようにする利益のほうがまさる。

それが民主主義の原則である。

 

「そうだね。私だったら、要塞に要塞をぶつけただろうね。どかんと一発、相撃ち。それでおしまいさ。何もかもなくなった後に、別の要塞を運んでくれば、それでいい」

「もし帝国軍がその策できたら、どうにも対策はなかったが、帝国軍の指揮官は発想の転換ができなかったみたいだ」

 

「もっとも、それですでにやられていたら、むろん対策はないんだが、これからその策で来る、ということであれば、ひとつだけ方法はあるけどね」

 

「気づいたな……だが、遅かった」

 

第九章 決意と野心

「これが名将の戦いぶりというものだ。明確に目的を持ち、それを達成したら執着せずに離脱する。ああでなくてはな」

 

「ルドルフ大帝を剣によって倒すことはできなかった。だが、吾々は彼の人類社会に対する罪業を知っている。それはペンの力だ」

「ペンは何百年も前の独裁者や何千年も昔の暴君を告発することができる。剣をたずさえて歴史の流れを遡行することはできないが、ペンならそれができるんだ」

 

「人類の歴史がこれからも続くとすれば、過去というやつは無限に積みかさねられてゆく」

「歴史とは過去の記録というだけでなく、文明が現在まで継続しているという証明でもあるんだ。現在の文明は、過去の歴史の集積の上に立っている」

「……だから私は歴史家になりたかったんだ。それが最初のボタンをかけまちがえたばかりに、このありさまだものなあ」

 

「まあ、なかなか思いどおりにはいかないものさ。自分の人生も他人の人生も……」

 

4巻 策謀篇

第四章 銀河帝国正統政府

だが、いずれにしても、同盟政府は責任をとらねばなるまい。原因ではなく結果に対して……。

 

「ムライ少将……組織のなかにいる者が、自分自身のつごうだけで身を処することができたらさぞいいだろうと思うよ。私だって、政府の首脳部には、言いたいことが山ほどあるんだ」

「とくに腹だたしいのは、勝手に彼らが決めたことを、無理に押しつけてくることさ」

 

「思うのは自由だが、言うのは必ずしも自由じゃないのさ」

 

第五章 ひとつの出発

「現在の状況は古来から固定しているものと吾々は誤解しがちだ。だけど、考えてもごらん」

「銀河帝国なんて代物は500年前には存在しなかった。自由惑星同盟の歴史はその半分の長さだし、フェザーンにいたっては一世紀そこそこの歳月を経ただけだ」

 

「絶対的な善と完全な悪が存在する、という考えは、おそらく人間の精神をかぎりなく荒廃させるだろう」

「自分が善であり、対立者が悪だとみなしたとき、そこには協調も思いやりも生まれない。自分を優越化し、相手を敗北させ支配しようとする欲望が正当化されるだけだ。

 

人間は、自分が悪であるという認識に耐えられるほど強くはない。人間が最も強く、最も残酷に、最も無慈悲になりうるのは、自分の正しさを確信したときだ。

 

「どれほど非現実的な人間でも、本気で不老不死を信じたりはしないのに、こと国家となると、永遠にして不滅のものだと思いこんでいるあほうな奴らがけっこう多いのは不思議なことだと思わないか」

「国家なんてものは単なる道具にすぎないんだ。そのことさえ忘れなければ、たぶん正気をたもてるだろう」

 

軍事が政治の不毛をおぎなうことはできない。それは歴史上の事実であり、政治の水準において劣悪な国家が最終的な軍事的成功をおさめた例はない。

 

「いいか、ユリアン、誰の人生でもない、お前の人生だ。まず自分自身のために生きることを考えるんだ」

 

「うん……つぎに会うときは、もうすこし背が伸びているだろうな」

 

第八章 鎮魂曲への招待

まったく、世のなかには、未発に終わる計画や構想がどれほど多く存在することか。ひとつの事実は、それに1000倍する可能性の屍の上に生き残っている。

 

ロイエンタールのような一流、あるいはそれ以上の有能な将帥の足もとをすくうには、むしろ二流の詭計をしかけて虚をつくべきではないか。

 

「君が思いこむのは自由だが、主観的な自信が客観的な結果をみちびき出すとはかぎらないよ」

 

5巻 風雲篇

第二章 ヤン提督の箱舟隊

「世のなかは、やってもだめなことばかり。どうせだめなら酒飲んで寝よか」

 

「私にとっては政治権力というやつは下水処理場のようなものさ。なければ社会上、困る。だが、そこにすみついた者には腐臭がこびりつく。近づきたくもないね

 

「その疑問には、誰も解答できないだろうね。だけど……人類が火を発見してから100万年、近代民主主義が成立してから2000年たらずだ。結論を出すには早すぎると思う」

 

「戦略および戦術の最上なるものは、敵を喜ばせながら罠にかけることだろうね」

 

第三章 自由の宇宙を求めて

「テロリズムと神秘主義が歴史を建設的な方向へ動かしたことはない」

 

第四章 双頭の蛇

個人が勝算のない戦いに挑むのは趣味の問題だが、部下をひきいる指揮官がそれをやるのは最低の悪徳である。

 

第五章 暁闇

「さしあたり、負けた後のことだけを考えておいていただきましょう。勝ったら、しばらくは安心できるはずです」

「その後、平和外交をおこなうなり軍備を再建するなり、それは政治家の領分で、軍人の口出しすることではありません」

 

「当然だろう。せっかくの年金も、同盟政府が存続しないことにはもらいようがない。したがって、私は、老後の安定のために帝国軍と戦うわけだ。首尾一貫、りっぱなものさ」

 

「それは正論だ。だが、正しい認識から正しい行動が生み落とされるとはかぎらないからね」

 

「ユリアン、吾々はチグリス・ユーフラテスのほとりにはじめて都市を築いた人々とくらべて、それほど精神的に豊かになったわけではない」

だが、よしあしは別として、知識は増え、手足は伸びた。いまさら揺籠(ゆりかご)にもどることはできない」

 

「ユリアン、戦っている相手国の民衆なんてどうなってもいい、などという考え方だけはしないでくれ」

 

第七章 バーミリオン

「お前にむけて閉ざすドアは私は持っていないよ。はいりなさい」

 

「いや、私はそれほどロマンチストじゃないよ。私がいま考えているのは、ローエングラム公のロマンチシズムとプライドを利用していかに彼に勝つか、ただそれだけさ」

「じつはもっと楽をして勝ちたいんだが、これが今回は最大限、楽な道なんだからしかたない」

 

「……私は最悪の民主政治でも最良の専制政治にまさると思っている」

 

それにしても、最悪の専制は、破局の後に最善の民主政治を生むことがあるのに、最悪の民主政治が破局の後に最善の専制を生んだことは一度もないのは奇妙なことだ。

 

第八章 死闘

「表現は正確にすることだ。ローエングラム公が何を考えているかということと、何をやっているかということ、この両者の間には一光年からの距離があるよ」

 

「良将だな。よく判断し、よく戦い、よく主君を救う、か」

 

第九章 急転

「……うん、その策もあるね。だけど私のサイズにあった服じゃなさそうだ」

 

「他人がこんなことをしたら、あほうにちがいないと私も思うだろう。だけど、私は結局こんな生きかたしかできないんだ」
「かえって、私の好きな連中に迷惑をしいるとわかりきっているのになあ……」

 

第十章 「皇帝ばんざい!」

「私が帝国に生を享けていれば、閣下のお誘いを受けずとも、すすんで閣下の麾下にはせ参じていたことでしょう」

「ですが、私は帝国人とはちがう水を飲んで育ちました。飲みなれぬ水を飲むと身体をこわすおそれがあると聞きます」

 

「失礼ですが、閣下のおっしゃりようは、火事の原因になるという理由で、火そのものを否定なさるもののように思われます」

「私は(専制政治を)否定できます」
「人民を害する権利は、人民自身にしかないからです」

 

「これは私がそう思っているだけで、あるいは宇宙には唯一無二の真理が存在し、それを解明する連立方程式があるのかもしれませんが、それにとどくほど私の手は長くないのです」

 

6巻 飛翔篇

第二章 ある年金生活者の肖像

「仕事をせずに金銭をもらうと思えば忸怩たるものがある」

「しかし、もはや人殺しをせずに金銭がもらえると考えれば、むしろ人間としての正しいありかたを回復しえたと言うべきで、あるいはけっこうめでたいことかもしれぬ」

 

「誰しも給料に対しては相応の忠誠心をしめさなくてはなりませんからね。私もそうでした。あれは紙でなくじつは鎖でできていて人をしばるのですよ」

 

「吾々は敵の堕落を歓迎し、それどころか促進すらしなくてはならない。情けない話じゃないか。政治とか軍事とかが悪魔の管轄に属することだとよくわかるよ」

「で、それを見て神は楽しむんだろうな」

 

「信念とは、あやまちや愚行を正当化するための化粧であるにすぎない。化粧が厚いほど、その下の顔はみにくい」

 

「信念のために人を殺すのは、金銭のために人を殺すより下等なことである。なぜなら、金銭は万人に共通の価値を有するが、信念の価値は当人にしか通用しないからである」

 

第三章 訪問者

「運命は年老いた魔女のように意地の悪い顔をしている」

 

「野に火を放つのに、わざわざ雨季を選んでする必要はない、いずれかならず乾季がくるのだから」

 

「メモなんてとる必要はないんだ」

「忘れるということは、当人にとって重要でない、ということだ。世のなかには、いやでも憶えていることと、忘れてかまわないことしかない。だからメモなんていらない」

 

第五章 混乱、錯乱、惑乱

「戦争の90パーセントまでは、後世の人々があきれるような愚かな理由でおこった。残る10パーセントは、当時の人々でさえあきれるような、より愚かな理由でおこった」

 

「心配しなくてもいいよ。何の罪やら見当もつかないが、まさか裁判なしで死刑にもしないだろう。ここは民主主義国家だ。すくなくとも政治家たちはそう言っている」

 

「法にしたがうのは市民として当然のことだ。だが、国家が自らさだめた法に背いて個人の権利を侵そうとしたとき、それに盲従するのは市民としてはむしろ罪悪だ」

「なぜなら民主国家の市民には、国家の侵す犯罪や誤謬に対して異議を申したて、批判し、抵抗する権利と義務があるからだよ」

 

「自分自身の正当な権利が侵害されたときにすら闘いえない者が、他人の権利のために闘いうるはずがない」

 

第七章 コンバット・プレイ

「生命のさしいれ、ありがとう」

 

不本意な死にかたをしいられることと、不本意な生きかたを強制されることと、どちらがまだしも幸福の支配領域に近いと言えるのだろうか……。

 

7巻 怒濤篇

第二章 すべての旗に背いて

「宇宙はひとつの劇場であり、歴史は作者なき戯曲である」

 

「最高指導者は文民でなくてはならない。軍人が支配する民主共和制など存在しない。私が指導者なんかになってはいけないんだ」

 

「さあてね、両手に贈物をかかえたところにナイフを突き出されたら、よけようがないからね」

 

「イゼルローンに帰るか……」

 

第四章 解放・革命・謀略その他

「鷹と雀では視点がちがう。金貨の一枚は、億万長者にとってとるにたりないが、貧乏人には生死にかかわるさ」

 

「いずれ必ず枯れるからといって、種をまかずにいれば草もはえようがない。どうせ空腹になるからといって、食事をしないわけにもいかない」

 

第八章 前途遼遠

「それでは彼らは自分自身の処刑命令書にサインしたことになる。皇帝ラインハルトは彼らの醜行をけっして赦さないだろうよ」

 

「陰謀やテロリズムでは、結局のところ歴史の流れを逆行させることはできない。だが、停滞させることはできる」
「地球教にせよ、アドリアン・ルビンスキーにせよ、そんなことをさせるわけにはいかない」

 

「ユリアン、吾々は軍人だ。そして民主共和政体とは、しばしば銃口から生まれる。軍事力は民主政治を産み落としながら、その功績を誇ることは許されない」

「それは不公正なことではない。なぜなら民主主義とは力を持った者の自制にこそ真髄があるからだ」

「強者の自制を法律と機構によって制度化したのが民主主義なのだ。そして軍隊が自制しなければ、誰にも自制の必要などない」

 

「自分たち自身を基本的には否定する政治体制のために戦う。その矛盾した構造を、民主主義の軍隊は受容しなくてはならない」

「軍隊が政府に要求してよいのは、せいぜい年金と有給休暇をよこせ、というくらいさ。つまり労働者としての権利。それ以上はけっして許されない」

 

8巻 乱離篇

第二章 春の嵐

民主共和政治の建前──言論の自由のおかげである。政治上の建前というものは尊重されるべきであろう。
それは権力者の暴走を阻止する最大の武器であり、弱者の甲冑であるのだから。

 

「皇帝ラインハルトは、私と戦うことを欲しているらしいよ。その期待を裏切るような所業をしたら、彼は私を永久に赦さないだろうな」

 

「運命というならまだしも、宿命というのは、じつに嫌なことばだね。二重の意味で人間を侮辱している」

ひとつには、状況を分析する思考を停止させ、もうひとつには、人間の自由意志を価値の低いものとみなしてしまう」

「宿命の対決なんてないんだよ、ユリアン、どんな状況のなかにあっても結局は当人が選択したことだ」

 

「半数が味方になってくれたら大したものさ」

 

第四章 万華鏡

「つまりは、人は人にしたがうのであって、理念や制度にしたがうのではないということかな」

 

第五章 魔術師、還らず

「作戦をたてるだけでは勝てない。それを完全に実行する能力が艦隊になくては、どうしようもない」
「ここで会談の申しいれを拒否して、短時日のうちに再戦することになっては自殺行為だよ」

 

「ごめん、フレデリカ。ごめん、ユリアン。ごめん、みんな……」

 

第六章 祭りの後

「生きるということは、他人の死を見ることだ」

 

「戦争やテロリズムは何よりも、いい人間を無益に死なせるからこそ否定されねばならない」

 

「きらいな奴に好かれようとは思わない。理解したくない人に理解される必要もない」

 

第九章 八月の新政府

「戦略は正しいから勝つのだが、戦術は勝つから正しいのだ。だから、まっとうな頭脳を持った軍人なら、戦術的勝利によって戦略的劣勢を挽回しようとは思わない」

「いや、正確には、そういった要素を計算に入れて戦争を始めたりはしないだろうよ」

 

「戦術は戦略に従属し、戦略は政治に、政治は経済に従属するというわけさ」

 

9巻 回天篇

第一章 辺境にて

「歴史とは、人類全体が共有する記憶のことだ、と思うんだよ、ユリアン。思いだすのもいやなことがあるだろうけど、無視したり忘れたりしてはいけないのじゃないかな」

 

第二章 夏の終わりのバラ

「偉人だの英雄だのの伝記を、子供たちに教えるなんて、愚劣なことだ。善良な人間に、異常者をみならえというも同じだからね」

 

第三章 鳴動

「平和の無為に耐えうる者だけが、最終的な勝者たりうる」

 

「ことばで伝わらないものが、たしかにある。だけど、それはことばを使いつくした人だけが言えることだ」

 

「正しい判断は、正しい情報と正しい分析の上に、はじめて成立する」

 

「何かを憎悪することのできない人間に、何かを愛することができるはずがない」

 

第八章 剣に斃れ

「いうなれば、宇宙はひとつの劇場だよ」

 

10巻 落日篇

第二章 動乱への誘い

「ユリアン、陰謀だけで歴史が動くことはありえないよ。いつだって陰謀はたくらまれているだろうが、いつだって成功するとはかぎらない」

 

敵をして、その希望がかなえられるかのように錯覚させる。さらに、それ以外の選択肢が存在しないかのように、彼らを心理的に追いこみ、しかもそれに気づかせない。

 

第七章 深紅の星路

「戦術レベルにおける偶然は、戦略レベルにおける必然の、余光の破片であるにすぎない」

 

「相手の予測が的中するか、願望がかなえられるか、そう錯覚させることが、罠の成功率を高くするんだよ。落とし穴の上に金貨を置いておくのさ」

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

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