「箱根の坂(司馬遼太郎)」北条早雲の名言・台詞をまとめていきます。
(当初は伊勢新九郎と名乗っている)
箱根の坂 上巻
新九郎
「すべて万一のことを考えるのが、細工というものじゃ」
「世間は、広大じゃな」
千萱
「君にあられましては、願阿弥のように、すべてをお捨てあそばすのが、唯一つ御身の立つ瀬であるかと存じます」
骨皮道賢
世は、きっとかわる。
「いったん決まって下知した以上は異論はゆるさぬ。無用の論をなす者は斬る。敵をおそれるな。下知どおりにすればかならず勝つ」
なまじい刃物などもてばかえっておそろしかろう、これならば死ねる。
「こういうはめになったのだ。人間というものは、信念や計算のとおりにゆかぬものだ」
「左衛門尉の官位が下落したか、骨皮道賢が上昇したか、掌は一つでは鳴らぬ。両の掌を拍してはじめて鳴るように、その鳴る現象がこの世間をうごかしはじめているのだ」
ここが、物事の切所というものだ。兵庫と小次郎に、足軽の心をわからせたい。
「敵のおびえもまた、力だ。わずか三人で飛びかかれば、敵は気狂いしたように武器をふりまわし、蛇をおおぜいで叩き殺すようにして、こっちがやられてしまう」
一夜念仏
人間は、愚劣だ。
兵火
この世のやつらに、うかと、飼われはせんぞ。
早雲
「人間は、需められる場所で生きるのがもっとも幸せだと私はおもっている。だからこそ、義視どののもとさえ去り、鞍をつくって生きているのだ」
急転
この乱世では、正嫡ということが決定的な意味をなさぬのだ。
いつ死ぬかわからぬ独り身の境涯に、財など要らぬことだ。
中巻
征途
「私は、いままで正直な人とのみつきあってきた。長くもない世にあって、不正直な言葉など、かけらもききたくない」
「私は、駿河へは無駄骨を折りにゆく。行って、奔走して、たとえ命があったとしても、小城ひとつが持てるかどうか。わが目的は、あくまでも千萱のために骨を折りにゆくことだ」
「泡を食って駆けつけたところで、わしにできることは何もない。その間に万一弑されるとあらば、それは天運だ」
富士が嶺
「学問の上だけじゃ。軍勢を動かしたこともござらぬ。しかしただいま喫緊のことは、戦ではない。竜王丸さまのお命を守り奉ることでござる」
(孫子・呉子について聞かれた時)
「世の移り変りほどおもしろいものはござらぬな」
太田道灌
「国人・地侍・百姓の駿河でござる」
興国寺城
そのときは、亡びればよい。
「今出川の伊勢屋敷の一隅にいたわしが、この齢になってはじめておれの家というものに入ることになる」
「この幸福、笑止というべきか」
「死ぬときは、死ぬ」
伊勢の弓
「逆ではあるまい。駿河一国の安寧をまもるということでは、同心でござろう」
無量光、うれしや、望の月、われに武運をさずけたまえ。
夢にも出よと願うたが、いざ叶えられれば、果報こそおそろしい。
歳月
「わしの駿河での役目は、竜王丸様の成人を見とどけるのみだ。それまでは旅人にすぎぬ」
人は世に在る。世以外に、棲みようがない。世に在るありかたは単純なほうがいい。
「得の裏は損ではないか。二つは紙の表裏にすぎず、損ならば得、得ならば損、一つのことではないか」
空よりひろき
「心でござる。形は簡素に。──かたち簡素なれば、水の容器に満つるごとく心のみがあふれましょう」
丸子と駿府
「ある・なしというものではござりませぬ。感ずるところ鋭ければ、この世に満ち満ちております」
「守護たる位置はつらきものと覚悟召されよ」
「駿河一国のことなら、掻餅の欠けたるようなことでもよい。私に教えてもらいたい」
「僧というのは、名すら無いほうがいい。僧が仕えるべき主人は、空だ。みずからも空になろうとしている。空に名があってはおかしかろう」
「国人・地侍を軽んずる守護は、何国であれ、ほろぶときが参りましょう」
急襲
「たとえ、いまにわか雨が降ってきても、駿府館には駆けこまぬ」
面白の都や
このあとは、その患をのぞくのみ。
下巻
伊豆の山
わしがさきに死ねばわしの分が尽きただけのこと。
「一生の贅沢には、分があるそうじゃ。わが分は、京にいるころに尽き申した」
修善寺の湯
無常というのはまだまだ楽の音で、楽しくもある。死は琴の糸が切れるのだ。音も絶える。音が絶えて、なお無常などといううたをうたっていられようか。
「あなた様はおそらく尊貴なるお人でございましょう。しかし、どなた様であるのか存じ上げもせぬのに下座はできませぬ」
「傀儡師をみよ、芸をして食を得る、たれに憚ることがある。足利家は乞食、傀儡師に恥じよ、恥じねば、一人のこらず地獄へ墜ちよ」
「天地人を見てきめるのだ」
「戦国でいえば、伊豆の公方など、王でもない。侯でもなく、伯でもない。いわば、貴族の姿をとったまぼろしでござるな」
「あれどもは、人か」
襲撃
「いまは末世である。武権をもつ者は民を搾り、おのれのみ栄華をなし、ついに餓死する民も出ている。わが守護する国の民、ねがわくはゆたかであることを」
「命をその場で了えるまでだ。旅はそこでおわる」
伊豆は、出てゆくところだ。
出陣
「わしは、唐の英雄豪傑などとはちがう。尋常の人間なのだ」
高見原
「いくさのかけひきは、人が作るのではなく、山河が生むものだ」
三島明神
わしが、小田原をとれば、もはや乱などではなく、おそるべき世になるだろう。
「しかしわしは、仁を仮る者ではない。本気で仁を布こうと思っているのだ」
「そのために、武をつかう。武略も用いる。あざむきもする」
「伊豆のやり方でやれば、百姓はよろこび、国人や地侍もうるおう。ひいては地頭の安泰になる」
坂を越ゆ
小田原を討とう。奇道をもって。それも一挙に。
「人は、古きになじむ。世をあげて、わしを悪というであろう」
「相模においてぼろぼろに朽ちたる世をこわす」
「伊豆は、関東の吉例ぞ」
早雲庵
「城の普請だけはいそげ。あとはなにごともゆるゆるとやる。無理は禁物と心得よ」
「いくさというものは、勝つためにやるのだ」
「旧来の地頭にして三浦を思う者は遠慮なく退転せよ。さもなくて心を改めたくばすぐさま馳走せよ」
「世は、変った。往事は忘れた」
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