シャーロック・ホームズの名言まとめました

コナン・ドイル作「シャーロック・ホームズシリーズ」
ホームズの名言や推理の考え方を作品別にまとめていきます。

緋色の研究

「だがいまこうして知ったからには、これからはせいぜいそれを忘れるように努めなきゃ」

人間の脳の記憶量には、限界があると考えているホームズ。
ワトスンが話した探偵として必要のない知識は、聞いた端から忘れようとしている。

「それがぼくにとってなんの役に立つんです?」
「われわれは太陽のまわりをまわっている、そうきみは言う」
「ですがね、たとえわれわれのまわっているのが月のまわりであろうと、それはぼくにとって、あるいはぼくの仕事にとって、これぽっちの差異ももたらすわけじゃないんです」

太陽と地球の関係を話すワトスンに対して、全く興味を示さないホームズ。
ちょっと極端だが、「必要性」の一点のみがホームズの価値観となる。

「そもそも犯罪というやつには、それぞれにいちじるしい類似性があるものでね」
「だから、およそ一千もの事例に精通しているかぎり、一千一例めのやつが解き明かせないというほうが、かえって不思議なくらいなんです」

犯罪について、過去の膨大な情報を把握しているホームズ。
観察はもちろんだが、この膨大な知識量がホームズの推理を支えている。

「きょうび、まともな犯罪や犯罪者には、めっきりお目にかかれなくなった」
「せっかくぼくほどの頭脳をそなえていながら、職業のうえでは、それがなんの役にも立っていない」

誰よりも探偵という職業に自信を持っているホームズ。
しかしその技術を活かせる犯罪や犯罪者が、いなくなったことを嘆いている。

「ぼくには一目でわかったんだが、どうしてわかったのかを説明するほうが、かえってむずかしい」
「二足す二が四になることはよく知ってても、そうなる理屈を説明しろと言われたら、ちょっと困るのとおなじでね」

ある人物の外見的特徴から、前職を言い当てたホームズ。
それを聞いたワトソンは説明を求めたが、返って困惑している。
車の運転は出来ても、その動作を説明するのは難しいですよね。

「まだ判断の材料がないからね」
「具体的な証拠がそろわないうちに、論を立てようとするのは大きなまちがいだよ」
「それは判断をゆがめるおそれがある」

事件について何も考えないホームズに対して、ワトソンが問いかけ時に答えてたこと。
間違った予想をしてしまうと、その予想に都合の良いものだけ採用してしまう。

「よく言われることだが”天才とは無限に努力しうる才能”なんだそうだ」
「ずいぶん雑駁(ざっぱく)な定義だが、それでも探偵仕事にはたしかにあてはまるね」

ホームズが殺人事件の現場確認の後、ワトスンに話したこと。
探偵には天才が必要ということか、それとも自分がその天才だということか?

「手品師はいったん種明かしをしてしまったら、もう感心されないし、尊敬もされなくなる」
「ぼくの捜査方法にしてもおなじだ」
「きみにあんまり手のうちを明かしすぎると、なんだ、所詮はおまえもただの凡人じゃないか、ってな結論を出されかねないからね」

現在までに分かっている推理を、ワトスンに話すホームズ。
しかし少し話しすぎたと考えて、最終的な結論は話さなかった。

「ああいった物乞いの子供ひとりが、十人もの警官に匹敵することだってあるんだ」

ホームズが情報収集に利用している、浮浪児6人からなる「ベイカー街少年隊」
その優秀さをワトスンに話している。

「もっと自分を信頼すべきだったな。とっくにわかっててもよかったんだ」
「あるひとつの事実が、そこまでたどってきた長い推理の筋道と矛盾するように見えるときは、必ずやそこに、なにかべつの解釈がありうるということに」

実験の結果が悪かったため自分の推理を疑うホームズ。
しかし実験方法自体が間違っていたことに気づき、正しい実験方法にたどり着く。

「あのね、どれだけ仕事をしたかなんてこと、世間じゃたいして問題にはされないのさ」
「問題はむしろ、どれだけの仕事をしたと、世間に信じさせられるかどうかなんだから」

事件を解決したのはホームズだが、手柄は両警部になっていることを指摘するワトスン。
それに対する答えだが、そもそも名声には興味のないホームズだった。

「いつかも話したことだが、異常な事柄というのは、手がかりにこそなれ、けっして捜査の妨げにはならない」

特殊な出来事や不思議な発見があると、人は混乱するもの。
しかしホームズにとっては、ヒント以外の何物でもなかった。

「たいていのひとは、一連の出来事を順序だてて説明されれば、その結果がどうなるかを言いあてることができる」
「それらの出来事を頭のなかで積み重ねていって、そこから出てくる結果を推測するわけだ」
「しかるに、ある結果だけを先に与えられた場合、自分の隠れた意識の底から、論理がどういった段階を経て発展して、そういう結果にいたったのか、それを分析できる人間はほとんどいない」
「あとへあとへと逆もどりしながら推理する、もしくは分析的に推理するとぼくが言うのは、この能力のことを意味してるんだ」

ホームズが行っている推理の筋道になる。
例えば、「1+1=」の答えは誰でも知っているが、「2という答えから、私が考えている数式を当てなさい」という問題を答えるのが難しいのと同じですね。

四人の署名

「ぼくはけっして名利はもとめない。ぼくの名が新聞紙上を飾ることもない」
「ただ純粋にその仕事そのもの、ぼくの独特の能力を発揮できる舞台を見いだす喜び、それだけがぼくにとってのこのうえない報酬なのだから」

探偵は生活する上での仕事でもあるが、それ以上の物を感じているホームズ。
探偵という名の職人ですね。

「ぼくはけっして当て推量はしない。当て推量なんて、とんでもない悪習だよ」
「論理的な能力を損なうだけのものさ」

ワトスンから渡された時計を見て、持ち主を言い当てたホームズ。
その時に語ったことだが、「想像」や「カン」では無く論理的なことを優先している。

「なによりたいせつなことはね、相手の個人的資質によって、その相手への判断を狂わされないようにすることさ」
「依頼人というのはこのぼくにとって、ある問題を構成するひとつの単位、ひとつの因子にすぎない」
「好悪の感情なんてものは、明晰な推理の敵以上のなにものでもないんだから」

依頼人が善人に見えても、また美人であっても、それを一切考慮しないホームズ。
それに対してワトスンは、美人の依頼人にすっかり興奮している。

「ぼくは例外を認めない。例外は原則を否定するものだ」

ワトスンの抵抗に対して、あくまで自分の考えを優先するホームズ。
探偵としては好ましいが、人としては難しいところですね。

「それは逆だよ。刻一刻とはっきりしてきている」
「あとほんの二つ三つ、欠けている鎖の環が見つかりさえすれば、全体がぴたりとつながるんだ」

余りの奇々怪々な状況に、混乱するばかりのワトスン。
しかし奇々怪々な状況こそ、物事を簡単にさせるとホームズは考える。

「これまでに何度も言ってるじゃないか」
「ありえないことをぜんぶ排除してしまえば、あとに残ったものが、どんなにありそうもないことであっても、真実にほかならない、と」

ホームズの推理法の中で、最も有名な一つになる。今ならコナン君の言葉として有名?

「ああいう手合いと話をするときにはね、向こうの言うことがこっちにとって、わずかでも値打ちがある、とぜったいに相手にさとられないのがなにより肝心なのさ」
「それをさとらせてしまったが最後、向こうは牡蠣のように口をとざしちまう」

探偵という立場を明かさず、偶然を装って聞き込みを行ったホームズ。
自分にとって必要な情報を、単なる立ち話のように聞きだしている。

「いや、疲れていないんだ」
「どうもいささか妙な体質でね。仕事ちゅうは、疲れを感じた覚えがない」
「そのかわり、だらけてると、たちまち体調がおかしくなる」

仕事中は疲れを知らないホームズ。まさにワーカホリックですね。

「といっても、ぼくならそのへんをあまり詳しくしゃべったりはしないがね」
「女性というのは、いつの場合も、とことんまで信頼しきることはできないという通弊がある」
「どんなにすぐれた女性においてもだ」

女性に対して、少し偏見を持っているホームズ。これに対しては何も言えない。

「こういったごく簡単なことほど、じつはもっとも見のがされやすいのさ」

ホームズを悩ましていた問題は、分かってしまえば簡単なことだった。
それを指摘したワトスンに対して、ホームズが簡単ゆえの難しさを語っている。

「つけるかどうかじゃなく、つかなきゃいけないんだ、なんとしてでも!」

犯人を追跡する時、ホームズが叫んだこと。いつも冷静とは限らない。

「恋愛というのは情緒的なものであり、おしなべて情緒的なものというのは、ぼくがなにより重きを置く、純正かつ冷徹な理性とは相容れない」
「だからぼくは、自分の判断力を狂わせないためにも、生涯、結婚なんかしないつもりでいるのさ」

ホームズの恋愛及び結婚感になる。もっとも、突然くるのが恋愛なのだが。

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シャーロック・ホームズの冒険

ボヘミアの醜聞

「そりゃそうだろうさ。きみはたしかに見てはいる。だが観察はしない」
「見るのと観察するのとでは、大ちがいなんだ」

ワトソンに対して、自分との違いを話すホームズ。
例えば、すずめは誰でも知っているが、すずめの外見的特徴を話せる人は少ない。
これと同じこと。

「このときちらっと目にはいっただけだが、たしかにきれいな女だったよ」
「あれならば男が焦がれ死にしても無理はない、そんな美貌だった」

今回のターゲットとなる美女、アイリーン・アドラーを見たホームズの感想になる。
ホームズが外見を褒めるのは珍しい。

「いや、これよりもぼくにとって、もっと価値のあるものを陛下はお持ちです」
「この写真です」

捜査についてはアイリーン・アドラーに、してやられたホームズ。
くやしがるどころか、報酬としてアイリーンの写真を要求する。
そして以後アイリーンのみ、「あの女性」なる敬称をつけるのだった。

赤毛組合

「近ごろぼくは、なまじ説明なんかするのはまちがってるって、そうさとりだしたところなんだ。諺にも言うじゃないか──”なべて未知なるものこそ偉大なれ”って」
「なのにぼくはばか正直が過ぎて、おかげでせっかくのささやかな評判も、いずれうたかたの露と消えることになるだろう」

依頼人に対して外見的推理を披露したところ、依頼人は説明を求めてきた。
気軽に話したホームズだが、あまりにも簡単なことだったので相手は落胆してしまう。
それに対するホームズだったが、今後も同じことが繰り返されることになる。

「ここの建物の配置だが、これをよく覚えておこう」
「ロンドンという街について、正確な知識を持っておくというのが、ぼくの趣味のひとつなのさ」

探偵という仕事上、土地勘を大切に考えるホームズ。それは趣味、それとも仕事?

「まあ退屈しのぎにはなったがね。おやおや、その退屈が早くもぶりかえしてきたぞ!」
「思うにぼくの一生というものは、平々凡々たる生きかたからのがれようとする闘いの、そのはてしなき連続じゃないのかな」
「その闘いでぼくを助けてくれるのが、こうしたささやかな事件なのさ」

事件解決後、ワトスンに退屈が嫌いなことを話すホームズ。
被害者が聞けば怒りそうですね。

花婿の正体

「人生というのは、およそひとの心が思いつけるようなどんなものよりも、はるかに不思議なものだね」
「実際には日常のごくありふれた事柄でしかないものにも、われわれの想像ではとても追いつかない部分がある」

ふいにホームズがワトスンに語ったこと。
いろいろな事件に関わり、人より多くの不思議を体験しているホームズでも、知らないことの方が圧倒的に多い。

「いや、ご心配なく。物事を知るというのがぼくの仕事ですから」
「たぶん、ほかのだれもが見落とすようなことでも、仔細に見てとるという訓練ができているんでしょう」
「でなければ、あなただって、わざわざぼくの助言をもとめにいらしたりはしないはずです」

依頼人の女性に対して、得意の外見的推理を指摘するホームズ。いつもの「つかみ」ですね。

「見えなかったんじゃなくて、気づかなかったんだよ、ワトスン」
「どこを見るべきかを知らないから、大事なところをみんな見落としてしまう」

依頼人の観察に対して、ワトスンにホームズが語ったこと。
見えていても自分に興味が無ければ、見えていないと一緒。

「かりに話したところで信じないだろうね。ペルシアの古い諺にもあるとおりさ」
「”虎子を得んとするものに災いあり、女より幻想を奪わんとするものにも災いあり”って」
「ハーフィズの言葉には、ホラティウスのそれにも劣らぬ含蓄があるし、おまけにこの詩人は世間をよく知っているよ」

依頼人には結論を話さないと決めたホームズ。
話すことによる問題より、話さないことの問題の方が小さいと判断する。

ボスコム谷の惨劇

「ところが、その状況証拠なるものこそ曲者なのさ」
「それはひとつところをまっすぐ指し示しているかに見える」
「しかるに、視点をほんのすこしずらしてみると、そのおなじ証拠が、まったくおなじ揺るぎのなさで、それとは正反対のなにかを指し示しているとわかるんだ」

明らかな状況に納得するワトスンに対して、ホームズが反論したことになる。
小説の定番ですが、現実ではどうですかね?

「結構です。ですが、あなたを裁くのはぼくの役目ではありません」

犯人を特定し、相手から自白も受けたが、警察には連絡しなかったホームズ。
悪を憎むホームズだが、自分の正義と法律を天秤にかけた時、正義を優先することもある。

五つのオレンジの種

「ぼくの友達といえば、きみしかいないよ。べつに客を呼んだりすることもないしね」

雨の強い日に呼び鈴が鳴った時、ワトスンに対してホームズが話したこと。
事実かもしれないが、サラッといいますね。

「そこで、まず真っ先に考えるべきは、あなたの身にひしひしと迫っている危険を取り除くこと」
「謎を解いたり、悪人どもを懲らしめたりするのは、二の次、三の次です」

事件の解決より、依頼人の安全を第一に考えるホームズ。
ホームズにとって一番大切なのは、解決ではなく予防ということが分かる。

「今回の事件では、これまでの出来事の結果がどうなるか、それはまだつかめていない」
「それは推理によってのみ到達できるものだからね」
「五官に頼って解決をもとめる連中が、ことごとく行きづまったような難問でも、書斎にいるだけで解けることはあるんだ」

突然訪れた緊急で、また異常な事件に対して、方向性を見つけることが出来ないホームズ。
まず分かっている情報から、何かを導き出そうとしている。

「ぼくはプライドを傷つけられたよ、ワトスン」
「もちろん、けちな感情ではあるんだが、それでもプライドが傷ついたことはまちがいない」
「こうなれば、もはやぼく自身の問題だ。ほうっておくわけにはいかない」
「今後はこの命あるかぎり、いつかぜったいにこの悪党一味をこの手で捕えてみせる」

せっかく依頼を受けていたが、捜査を始める前に相手に先手を打たれたホームズ。
プライドが傷つき、そして報酬に関係なく、相手を捕まえることを宣言する。

「飢え死にしそうだよ。食べることなんか忘れてた。朝からなにも食べていない」

朝から捜査に没頭し、夜まで何も食べていないホームズ。
この集中力や行動力が、事件を解決に導いていく。

くちびるのねじれた男

「ねえ、ワトスン、きみは沈黙というすばらしい資質に恵まれているね」
「だからこそきみは、かけがえのない旅の道連れなんだ」
「実際、ぼくにとっては、話したいときに話し相手になってくれるだれかがいてくれる、これほどありがたいことはない」

急な依頼でも受けてくれるワトスンに対して、ホームズが語ったこと。
話したい時に話せるというのは、話したくない時に話さなくていいとのセットになる。

「じつはこの事件、うわべはばかばかしいほど単純に見えるが、そのくせ、どこから手をつけたらいいのか、さっぱりわからないときている」
「いってみれば、糸口は山ほどありそうなのに、どれもしっかりつかめない、といったところかな」

単純であり、また情報が多いために、返って混乱しているホームズ。
それをまとめるのにワトスンと話すのは、最良の手段となる。

「これでもぼくはいろんな経験をしてきましたから、女性の直観のほうが、分析的推理による結論よりも値打ちがある場合もある、それを知らないわけではありません」

まだ結論に達していないホームズに対して、依頼人の女性は自分の考えを話しだした。
それは論理的なものではなかったが、それゆえに真実をついている可能性も示唆していた。

青い柘榴(ざくろ)石

「シャーロック・ホームズというものだが、他人の知らないことを知るというのがぼくの商売なんでね」

ある人物に対してホームズが話したこと。少し冗談っぽい感じですね。

「いまはクリスマス──ひとを許す季節だ」
「ひょんなことから、すこぶる珍しくて風変わりな事件が、ぼくらの手にころがりこんできた」
「だから、その解決それ自体がひとつの報酬なのさ」

ある犯罪を解決したホームズだが、犯人を警察には突き出さなかった。
善意ばかりではないが、自身の正義と合えば、必ずしも法の番人ではないホームズだった。

まだらの紐

「はは、なかなか愉快なご仁だね」
「あともうすこしここで辛抱していてくれれば、ぼくも体の大きさでは及ばないまでも、腕力ではたいしてひけをとらないことを証明してやれたんだが」

ホームズを脅迫に来た人物は、暖炉の火かき棒を二つ折りに曲げてから帰っていった。
それに対してホームズは、曲がっている火かき棒を元に戻しながら話したのだった。

「隠微も隠微、忌まわしさもじゅうぶん、まさにお釣りがくるくらいさ」
「医者が悪の道に走ると、最悪の犯罪者になる傾向がある」
「なにしろ度胸もあり、知識にも事欠かないからね」

医者が犯人と考え、警戒しているホームズ。
確かにいつも生命と向き合っているため、良くも悪くもあっていますね。

「暴力を用いれば、畢竟(ひっきょう)、それがおのれにはねかえってくる」
「他人のために穴を掘るものは、自らその墓穴に落ちる。因果応報さ」

ある人物の状況に対してホームズが語ったこと。全てがそうあればいいのだけれど。

技師の親指

「経験を得たさ。間接的ながら、それがいずれ役に立ってくれるときがくる」
「今回の経験を言葉にして語るだけで、これから先一生、座談に長けたひととして評判を得られるだろうからね」

結果として依頼人はケガをした上に、何一つ得るものが無かった。
そんな依頼人に対してホームズが語ったことだが、ようは考え方次第ですね。

独身の貴族

「これはどうも、あまりありがたくない社交的なご招待と見たね」
「そういう場所に出ると、退屈させられるか、心にもない嘘を強いられるかするだけなんだ」

高級そうな手紙が来ていたのでイヤな予感がするホームズだったが、予想外の相手だったため、好奇心が上回る。
しかしホームズの性格がよく分かる言葉ですね。

「いやね、ワトスン、気どって言うわけじゃないが、依頼人の身分なんてのはこのぼくにとって、事件への興味ほど重みもないんだ」

依頼人の身分にはまったく興味を持たないホームズ。
実際、高貴な依頼人の案件も平気で断るし、また報酬が低くても興味があれば引き受ける。

「かたじけなくもあのお殿様、ぼくの頭をご自分の頭と同列に扱ってくれたよ」

ホームズの言い方が気に入らず、少し怒り気味で帰った依頼人。
しかし不満を持っているのは、ホームズも同じだった。

「たしかになにもないと見えるかもしれない。それでもやはり、きわめて重要なんだ」

レストレード警部が持ってきたメモを見た時、ホームズが話したこと。
ホームズがよく言っているように、見えていても観察できていない。

緑柱石の宝冠

「問題があなたや警察の当初考えたのよりも、はるかに底の深いものであると、まだお気づきにならないのはなぜでしょう」
「あなたには、事件は単純なものと見える。ぼくにはそれがきわめて複雑なものと見える」

依頼人が単純な考えに固執し、また冷静さを欠いていることに対して苛立ちを隠せない。
こういう場合、少し辛辣な表現を使うホームズだった。

「残念ながら、ありうるありえないの問題ではない。事実なのです」

ある事実を信じない依頼人に対して、ホームズが話したこと。
事実は残念ながら、残酷な要素も含んでいる。

橅(ぶな)の木屋敷の怪

「ぼくはいつだってそうなんだ──いつ見ても、なんだかぞっとさせられる」
「これは経験から言うんだけどね、ワトスン、こういう明るく美しい田園のほうが、ロンドンの最低、最悪の裏町なんかより、よほどおそるべき悪の巣窟だと言うべきなんだよ」

田園風景が広がる田舎の恐ろしさを語るホームズ。
日本の小説でも残忍は犯罪は、町より村で起こるイメージですからね。

「いいかいワトスン、きみも医学者として、両親を観察することで子供の性向を診断するということは、たぶん日常的にやっているはずだ」
「なら、逆もまた真なり、とは思わないか?」
「ぼくにはたびたびそういう覚えがある──子供を観察することで、両親の性格をはじめて正しく認識することができた、という覚えがね」

親子の性格の関連性を話すホームズ。
大人は性格を隠すこともあるので、子供から見るという考えもありますね。

 

回想のシャーロック・ホームズ

「シルヴァー・ブレーズ」号の失踪

「じつをいうとね、これは新たな証拠をつかむことよりも、むしろ、すでに知られている事実をいかに取捨し、選択していくか、その点にこそ推理という技術を生かすべきだという、そういう事件なんだ」

事件の内容についてワトスンに話すホームズ。
いろんな人がいろんな情報に振り回されている事件は、よくありますね。

「わかっただろう、想像力の値打ちってものが」
「気の毒だがグレゴリーのせんせいに欠けてるのは、その想像力なのさ」
「われわれはまずなにがあったかを想像し、その想定にもとづいて行動し、そしてそれが正しかったことを確認した」

ある証拠を見つけたホームズがワトスンに語ったこと。
何も分からずに調べるのと、目的を持って調べるのでは、全然違いますからね

マズグレーヴ家の儀式書

「きみがはじめてぼくと知りあって、『緋色の研究』として記録に残してくれたあの事件のころでさえ、たいして儲かるというわけじゃないにしても、いちおうの地歩は確立して、得意先もかなりついていたんだ」
「だから、それ以前にぼくがどれだけ苦労したか、たぶんきみには想像もつくまいし、ようやくこれが仕事として軌道に乗り、前を向いて進めるようになるまでに、どれだけ長い辛抱を強いられたかも、きみに察してもらうのはむずかしいだろう」

探偵を始めた当時の苦労を、ワトスンに話すホームズ。
ホームズシリーズの中でも苦労話は珍しい。

「すくなくともこれは、もうひとつの謎を提供してくれてるよ」
「しかもその謎は、はじめの謎よりもさらに興味ぶかい」
「いっぽうの謎が解ければ、それがそのままもういっぽうの謎の解答となる、そういうことも考えられるね」

ある文章を見せられた時、ホームズが話したこと。
不思議な文章の出現に喜んでいる。

「こういう場合にぼくがいつもとる方法、きみなら知ってるだろう、ワトスン」
「自分をブラントンの立場に置いてみるのだ」
「まず手はじめに、対象とする人間の知力の程度を見きわめる」
「そのうえで、自分がおなじ状況に置かれたら、どんなふうに問題に取り組むだろうかを想像してみる」

問題に行き詰まり、初心に戻って考え直すホームズ。
相手の立場とはよく言われるが、「相手の知力に合わせる」という発想は面白いですね。

ライゲートの大地主

「運命はきみに味方しないようだな、ワトスン」

ワトスンから事件に関わらないように言われるホームズ。
ホームズ自身も関わらないと言っていたが、警察から協力を依頼されてしまって。

「事件はますますおもしろくなってきたよ」
「ねえワトスン、きみのすすめてくれた田舎の旅は大成功だったね」
「じつに気持ちのいい朝を過ごさせてもらっている」

事件に関わることが出来て、生き生きしているホームズ。
ワトスンのすすめる静養は別のものだったが。

背の曲がった男

「正義が行われるようにするのは、万人の義務だからね」

ある人物に対して、「正義」という言葉を使うホームズ。
ただホームズにとっての正義は、世間の法律と同じとは限らない。

寄留患者

「そちらがぼくをごまかそうとなさっているかぎり、こちらもご相談に応じるわけにはいきまんね」
「アドバイスなら、こう言っておきましょう──真実をお話になることです、と」

相手の話しに納得出来ないため、相談に応じることを拒否するホームズ。
これは相手が誰であろうと変わらない、ホームズの一貫した姿勢となる。

ギリシャ語通訳

「なぜって、兄弟のマイクロフトが、ぼく以上によくその資質をそなえているからだよ」

自分の能力は遺伝によるものが大きいと、ワトスンに語るホームズ。
理由として兄の存在を挙げているが、ホームズに兄がいることを知らない人は多いのでは?

「ぼくはね、ワトスン。謙遜を美徳のひとつに数える一派に与しないんだ」
「厳密な論理家にとっては、あらゆる事象はすべてあるがままにとらえられるべきであって、自分を過小評価するというのは、自己の能力を誇大に評価するのとおなじく、真実から遠ざかるものにほかならない」

謙遜という行為を否定するホームズ。
これを読むと、イギリスにも謙遜を美徳とする一派がいるのですね。

「ぼくが言ったのは、彼が観察および推理にかけてはぼくよりすぐれている、ということさ」
「探偵術というものが、安楽椅子にかけたまま推理を働かすことで始まり、かつ終わるものであるのなら、それなら兄は古今に比類ない大探偵になっていただろう」

ホームズの兄に対する評価になる。見方を変えれば、自身の探偵術に対する自負とも感じる。

「まあね。すでにこれだけの事実が判明してるんだから、残りがつきとめられなければ、むしろ不思議なくらいさ」

依頼人から事情を聞き、捜査を始めるホームズ。
ワトスンに対して、いつものように自信を語っている。

海軍条約事件

「警察というところは、事実を集めるという点では、なかなか有能ですから」
「ただあいにく、集めたそれを有効に使いこなせるとは、必ずしも言いきれない」

ホームズによる警察評になる。相変わらず辛辣ですね。

「疑っていますよ、ぼく自身を」
「あまりにも早く結論に到達してしまったことについて、です」

依頼人から疑っている人を聞かれた時、ホームズが返したこと。
ホームズ本人は事実を話しているだけだが、言われている方はイラッとするかも?

「およそ犯罪のうちでももっとも追求の困難なのは、無目的な犯罪だ」
「だが、今度のこれは、けっして無目的じゃない」

無目的の犯罪の解決が難しいことを語るホームズ。
「なぜ?」が分からないと判断が難しい。

「ひとつの可能性というだけだよ」
「ただしその可能性をまったく排除してしまうわけにもいかない」

可能性は低いがゼロではない点をワトスンに語るホームズ。
事実ではなく感情で排除してしまうと論理的とは言えない。

「なに、ほんのかすり傷だ──しかもぼく自身のどじで、自業自得さ」

少しケガをした状態で帰ってきたホームズ。自分の失敗は意外と隠さない。

「こんなやりかたでいきなり持ちだすのは、ちょっと悪戯が過ぎましたか」
「しかし、このワトスンならよく知ってますが、ぼくはなにかにつけて、芝居がかったおまけをつけずにはいられない性分でね」

ある悪戯を実行したホームズ。相手が驚く姿が、何より好きなホームズだった。

「この事件でなによりむずかしかったのは、あまりにも証拠がありすぎるということでした」
「そのため、肝心な点が、がらくた同然の筋ちがいなものに埋もれ、隠されてしまっている」
「示された多くの事実のうちから、われわれはまず本質的と思えるものを抜き出し、しかるのちにそれをつなぎあわせて、ひとつながりの筋の通ったものに再構築する必要があった」
「そして再構築した結果がこの、じつに驚くべき出来事の連鎖だったわけです」

証拠が多すぎることによって、返って混乱していたことを話すホームズ。
「情報は多ければいい」と考えている人への、警鐘とも言えますね。

最期の事件

「いいかいワトスン、きみはぼくという人間をよく知ってるから、ぼくが神経質な男なんかじゃぜんぜんないことぐらい承知してるだろう」
「だが反面、危険が身に迫っているのに、それを顧みないというのは、勇気じゃなくて蛮勇、ただの愚か者にすぎない」

何かを恐れているように見えるため、ワトスンが聞いた時にホームズが返したこと。
何を達成しても、自分が害されたら意味ないですからね。

「その男はロンドンをわがもの顔に支配しているのに彼のことを聞いたことのあるものは、だれひとりいない」
「彼を犯罪界における最高峰たらしめているのは、まさにその点なのさ」
「ぼくはね、ワトスン、あの男を打ち負かし、社会から排除することができたら、そのときこそがわが職業生活の頂点となるだろうし、以後は安んじてもうすこし平穏な生活にひきこもれる、そう思ってもいるんだ」

宿命のライバルとも言える、モリアーティー教授のことを話すホームズ。
その存在を驚異と感じているのと同じぐらい、倒すべき敵として認めている。

「ねえワトスン、これまでの双方の沈黙の闘いをもし詳細に書き綴ることができたら、それこそ探偵術の歴史上最高の、丁々発止の名勝負物語になっていたはずだよ」

モリアーティー教授との闘いについて、ワトスンに語るホームズ。
自分自身にとっても、最高に楽しい時間なのかもしれない。

「あのねえワトスン、あの男はぼくと知的に同水準にある、そう言っただろう」
「その意味がまだよくわかっていないようだな」
「かりにぼくが追う側だったら、この程度の障害であきらめてしまうなんて、きみだってまさか思やしないだろう?」
「それじゃあんまりあいつを見くびりすぎてるというもんだ」

モリアーティー教授の追跡から、必死で逃れているホームズが語ったこと。
認めているがゆえに、それの驚異も理解していた。

バスカヴィル家の犬

「あいにくだけど、ワトスン、さっききみの出した結論、あれはほとんどまちがってる」
「いま、きみは僕を刺激してくれると言ったけど、あれはざっくばらんに言えば、きみの思いちがいに注目することで、ぼくが正しい結論に導かれることがままあると、そういう意味なのさ」

先程ワトスンの推理を褒めたホームズだが、実はこんな意味だった。
これにはさすがのワトスンも反発を示すが、最終的にはホームズの推理に納得する柔軟さがワトスンのいいところ。

「ほう、そりゃ聞き捨てならない!」
「ではそのトップという名誉はだれに冠せられるのか、参考までに聞かせてもらえますか?」
「では、そのベルティヨン氏に相談なさるのがいいのではありませんか?」

依頼人はホームズを「二番めに傑出した専門家」と言ったため不満を漏らしている。
これは自負なのか、それとも驕りなのか。

「まあぼくとしては、これまでは調査の範囲を現実世界に限定してきた」
「自分なりに悪と取り組んできたことは事実だが、それでも相手が<悪魔>そのものとなると、ちと荷が勝ちすぎる」
「それにしても、足跡が現実世界のものだってことは、きみも認めないわけにはいかないでしょう?」

まるで超常現象のように語る依頼人に対し、ホームズが呆れている。
そして自分に対する依頼内容が分からないため、少し苛立っている。

「世のなかってのはね、わかりきってることだらけなのさ」
「だれひとりそれについて、多少なりとまともに考えてみたことがないというだけのことでね」

またいつものように、分かってみれば簡単という感じで話すワトスン。
それに対して返すホームズも、いつものこととして諦めてる感じ。

「いや、さにあらず──それよりはむしろ、さまざまな可能性を比較検討して、そのうちからもっとも理にかなったものを選びだそうとする段階、そう言ってほしいですね」

依頼人から「当て推量」と言われた時、ホームズが返したこと。
ホームズのもっとも嫌う言葉の一つですからね。

「そのとおりです。うわべはいかにばかげた出来事に見えてもね」

関係がないと思いながら依頼人が話したことに対して、ホームズが答えたこと。
意味の有る無しは、受け手である自分が決めることと考えるホームズだった。

「あてにしていた糸筋のうち、これで二本が切れちまったよ、ワトスン」
「もっともぼくとしては、打つ手打つ手がすべて空振りに終わったとき、かえってやる気が出てくるんだけどね」

期待していた情報が外れてしまったホームズ。
しかし気持ちは更に上向きになっていた。

「ぼくとしてきみに望みたいのはね、ワトスン、たんに事実をできるだけ克明に記録して、ぼくに報告してくれること」
「それらを分析し、解釈を加えるほうは、ぼくにまかせてくれ」

ワトスンのみを依頼人の住む家に行かせるホームズ。
状況報告を依頼しているが、ワトスンの解釈は不要と念を押している。

「肝心なのは、なにがあったかを知ることじゃなく、それを証明することなんだ」

犯人の目星も、また犯行の内容も把握しているホームズ。
しかしそれだけでは相手を追い詰めることが出来ないのも理解していた。

「聖書をもじって言えば、”あすの悪はあす一日にて足れり”ということになるだろうが、できることなら、あすという一日が暮れないうちに、究極の勝利を手中におさめてしまいたいものだよ」

明日の決戦に向けて、改めて気持ちを確認するホームズ。
相変わらず、芝居っけのある表現をする。

「ほら、わかったろう?」
「ぼくの目は、描かれた顔だけを見て、ほかの飾りは見ないように訓練されているからね」
「変装を見破るのは、犯罪捜査にかかわるものの第一の資質なんだよ」

変装を見破るための方法を、ワトスンに語るホームズ。
何を見て話しているかは、ネタバレになるため省略する。

シャーロック・ホームズの復活

空屋の冒険

「仕事こそが悲しみへのまたとない解毒薬だよ、ワトスン」
「そしてその仕事が今夜、ぼくらふたりを待っている」
「首尾よく解決に導ければ、そのこと自体がこの地上に生きたひとりの男の人生に、生きたあかしを与えてくれるというほどの大仕事なんだ」

ワトスンと再会したホームズは、早速本来の仕事にかかっていた。
そして久しぶりのコンビ復活となる。

「シャーロック・ホームズ氏もいま一度、わがロンドンの複雑な暮らしが生みだすあまたの興味ぶかい小事件を前に、心おきなくそれらの探究にふけることができるというわけだよ」

ホームズを狙っていた大物を、捕まえることに成功したホームズ。
やっと暗殺からの危険を回避して、安心して昔のように事件に取り組めるのだった。

ノーウッドの建築業者

「しかしぼくから見ると、この事件にはまだはっきりしない点がないでもないんだ」
「それがね、レストレード君、ぼくに言わせれば、ちとはっきりしすぎてるのさ」

何がはっきりしていないのか、理解できないレストレード警部。
それに対してホームズは、はっきりしすぎている点をあげるのだった。

「言っとくけどね、レストレード君、ぼくのやることには何事によらず、必ずれっきとした理由があるのさ」

新たな証拠が見つかって得意になっているレストレード警部に対して、ホームズは逆の意見を持っていた。
そしてある仕掛けを実行するのだった。

踊る人形

「人間の考えだしたものなら、ほかの人間が仕組みを見破ることだってありうるさ」

暗号を作った犯人に対して、ホームズが語ったこと。
正確には、「人間の考えた仕組みなら、自分に分からないことはない」だろうか?

ひとりきりの自転車乗り

「きみはそれを愛と呼ぶか、このわたしに言わせれば、身勝手というものじゃないのかな?」

ある人物の行動を非難したホームズ。ホームズにとっての第一は、常に依頼人の安全になる。

プライアリー・スクール

「ありえないとは言い得て妙だね。たしかにありえないんだ、ぼくの話したとおりなら」
「したがって、この推論はどこかまちがっているに相違ない」

あり得ない推論を立てたホームズ。
ワトスンに指摘されるが、間違っているのを理解する大切さも知っていた。

「ぼくはかように考えます」
「ある犯罪に手を染めたものは、その犯罪から派生したべつの犯罪にたいしても、道義的責任を負うものである、と」

犯人に対して、事件とは関係あるが犯人自身は関係していない犯罪に対して、道義的責任を問いかけるホームズ。
違法ではなく、あくまえで道義的責任となる。

「これはぼくがこのたび北部地方でお目にかかった、二番めに興味ぶかいものです」
「ぼくは貧乏人でして」

ある製品を見た時、二番目に興味深いと話したホームズ。
一番目を効かれた時に答えたのは、手帳に挟まれている小切手だった。

ブラック・ピーター

「いいかいホプキンズ、ぼくはずいぶんたくさんの犯罪調査を手がけてきたが、それでも、宙を飛ぶ生き物がやったという犯罪には、ついぞお目にかかったことがないよ」
「犯人が二本脚で動く生き物であるかぎり、必ずやなんらかの痕跡を残しているはずなんだ」

犯人の痕跡がないという警部に対して、ホームズが冗談を含めて話したこと。
ホームズには分かることでも、警部には分からなかっただけとなる。

「いつの場合も、べつの可能性というものを考慮に入れて、それへの備えをしておく」
「これぞ犯罪捜査の常道であり、その第一歩でもあるんだがね」

ある一つの解釈に固執する警部に対して、ホームズが不満を話している。
確定していない段階で、決めつけてしまうと間違った方向に進む可能性がある。

金縁の鼻眼鏡

「なに、ぼくの推理なんて、いたって単純なものだよ」
「そもそも、眼鏡以上に推理の助けになってくれるものなんて、見つけるのがむずかしいくらいなんだが、この眼鏡なんか、その点ではとくにきわだっている」

眼鏡からいろいろな情報を引き出すホームズ。お得意のやつですね。

「こう見えてもぼくは、推理という連鎖の環をひとつひとつ入念に鋳造し、鍛えあげてきたつもりでして、その鎖の強度については自信があります」

相手に対して推理結果に自信があることを、鎖を例えに話すホームズ。
相手が「冗談」と言ったことで、少し強い口調にもなっている。

スリークォーターの失踪

「ひとりの人間が消息を絶ったなら、行方をつきとめるのがぼくの仕事ですが、いったんつきとめてしまったら、ぼくとしてはその件は終わりです」
「さらに、そこに犯罪がからんでいるのでないかぎり、それを表沙汰にするのもぼくは好みません」

失踪していた人物を見つけたホームズ。
しかしその後は、それぞれが望む解決を優先し、興味本位で表沙汰にすることはしなかった。

アビー荘園

「たんなる気まぐれとしか思えないものにきみを巻きこんで申し訳ないんだが、しかしねワトスン、ぼくはどうあってもこの事件を、ああやってかたづいた、そのままのかたちでほうっておくことができないんだ」

完璧な話でかたずいたように見えた事件だが、ホームズの本能が間違いに気づいていた。
そしてそれを、そのままにはしておけないホームズだった。

「まさしく、ぼくの考えていたとおりだ」
「いまの話が一言一句、真実に相違ないことはわかっている」
「なぜなら、きみの口からはぼくの知らないことはほとんど出なかったからね」

ある人物に対して事実のみを話すように要請し、内容に納得したホームズだった。

第二の血痕

「当方にもまた当方なりの外交上の秘密というものがありまして」

国家レベルの紛争の火種になる書簡を取り戻し、奇抜な方法で丸く収めたホームズ。
不思議がる相手に対して、ホームズは軽く返すのだった。

恐怖の谷

「それがなにより貴重だったのは、その情報が犯罪への報復のためというよりは、むしろ犯罪を予知し、それを予防するためにこそ役だったという点なんだ」

ある人物からの情報の価値を話すホームズ。
ホームズは犯罪を解決するよりも、犯罪を起こさせないことに価値を置いている。

「実体はなにもない。すべては心のやましさのなせるわざ」
「自分の行為を裏切りだと自覚しているから、相手の目のなかに、非難の色を読みとってしまうというわけだ」

ホームズに情報を送っていた人物が、情報の提供を途中で止めてしまった。
相手がどう思っているかより、自分がどう感じたかの方が大きいのだろう。

「だったら、いくらかその範囲をせばめられないだろうか」
「じっとこの一点に精神力を集中してゆくと、これがあながち絶対不可侵の壁というわけでもないのがわかってくる」

暗号文を手に入れたが、鍵を入手することが出来なかったホームズ。
漠然とした状態から範囲を少しでも狭めることで、答えに導ける可能性を示唆している。

「ぼくはいつの場合も信義を重んじる男だからね」
「はじめに先方から連絡してきたとき、今後ともきみの身元をつきとめようとすることはしない、そう約束したんだ」

情報を提供してくれている人物の詮索をしないホームズ。
事件に伴いマクドナルド警部が来た時に、その理由を説明している。

「探偵にとっては、およそどんな知識でも、有用でないということはないんだ」

ささいな知識や情報の有用性を語るホームズ。
それにしては、一般常識が無いことが知れているホームズだが?

「ぼくが事件にかかわる目的はたったひとつ、正義を成し遂げ、警察の仕事を助けること、それに尽きる」

ホームズが事件に関わる基本的なスタンスになる。
ただ正義を優先して、警察の仕事を手伝わない時はあるけれど。

「あらためて言うが、これがたんなる想像にすぎないことは認める」
「とはいえ、想像から真実が導きだされることだって、これまでにもたびたびあったことなんだ」

事件について想像から来る推理を話すホームズ。
いつもは事実より真実を導き出すホームズだが、今回は別の方法でアプローチしている。

「われわれの職業ってのはね、マック君、いたって単調で、ぱっとしないものだ」
「ときには派手な演出をして、手柄を誇示することでもしないかぎり、やっていられたものじゃないよ」

事件の大詰めを感じているホームズ。
単純に犯人を指摘するだけではなく、ドラマティックな演出を考えている。

シャーロック・ホームズ最後の挨拶

ウィステリア荘

「法律が手を出せないのであれば、こっちが体を張って、思いきった手に出るしかないのさ」

事件について法律では手を出すのが難しくなってきた。
その状態を見越して、ホームズは超法規的な方法を考えるのだった。

ボール箱

「漠然としてるどころか、ぼくから見れば、これほど歴然とした事件はないよ」

ホームズと話しているワトスンは、事件が漠然としてると話してきた。
それに対してホームズは、歴然な事件だと返していく。

「きみも医学者として先刻ご承知のことだろうが、ねえワトスン、じつは人体のうちで耳以上に種々さまざまな形を持つ部分はない」
「耳には原則としてひとりひとり特徴があり、それぞれに他人の耳とははっきり異なっている」

耳には人ぞれぞれに特徴があることを、ワトスンに話すホームズだった。

「人間の理性はいつの場合も、それへの真の解答からひどく遠いところにしかないのさ」

事件が解決した後、ホームズがワトスンに話したことになる。
事件の意味について、そして悲嘆と暴力と恐怖との連鎖などを考えたことになる。

赤い輪

「なんの得があるか──まあそうだね。いってみれば、芸術のための芸術ってとこかな」

不思議な状況に対して、報酬もないのに深入りするホームズ。
それについてワトスンが聞いた時、犯罪に対する芸術性を語っていく。

「そうさ、勉強に終わりはないんだ」
「学習することの連続で、しかも、最後の最後に学ぶものこそ、いちばん大事なことだと相場が決まっている」
「その意味でも、今回のこれ、学ぶことの多い事件だよ」
「金も、名誉もかかっちゃいないけど、それでも解決してみたくなるなにかがある」

今回の事件を勉強であり、学習であると語るホームズ。
そして今回の事件には、それだけの価値があると判斷していた。

ブルース=パーティントン設計書

「思うに、このぼくが犯罪者でないのは、この社会にとってはさいわいだったんじゃないのか?」

近頃の犯罪者を退屈な連中と語るホームズ。
「そして自分が犯罪者なら?」という想像を、ワトスンに問いかけるのだった。

「ぼくはね、ゲームそのものを楽しむためにゲームをするだけさ」

犯罪捜査をゲームに例えて話すホームズ。それ自体に楽しさを見つけている。

レイディー・フランシス・カーファクスの失踪

「それにしても、珍しく徹底した調査をやってくれたものだよ、ワトスン」
「なにしろ、きみのやらなかったへまを見つけだすほうがむずかしいくらいだからね」

ワトスンに調査依頼をしたホームズ。
しかし結果に対して、これ以上無いぐらいの批判をしていく。

「ぼくの行動に”たぶん”はない。実際に、もっとましな結果を得てるんだ」

ワトスンの調査を批判したホームズ。そして自分の調査を示すのだった。

悪魔の足

「それがぼくの流儀だからだよ、ワトスン」
「警察当局の捜査を邪魔することはけっしてしないんだ」

自分で見つけた証拠についても、全て警察と共有しているホームズ。
ホームズが自己顕示用だけの人物でないことがよく分かる。

「ぼくはねえ、ワトスン、あいにく女性を愛したことはない」
「しかし、もしも愛した経験があり、その女性がああいった最期を遂げたとしたら、やっぱりあの法の埒外に立つ『人物』とおなじ挙に出ていたかもしれない」
「出なかった、なんてだれが言えるもんか」

ホームズが犯人と話した後、感想をワトスンに話している。
ここではネタバレのため、個人名を「人物」に置き換えました。

シャーロック・ホームズ最後の挨拶

「引かれ者の小唄だな、もう聞き飽きた。かっての日々、いったい何度、聞かされたことか」

捕まえた人物に「このお返しはいずれきっとするかなら!」と言われたホームズ。
その言葉を聞き、引退していたホームズは昔を懐かしむように話すのだった。

シャーロック・ホームズの事件簿

高名の依頼人

「お言葉ですが、ぼくのおひきうけする事件では、謎は一方の側にだけあればじゅうぶんです」
「それが両方の側にあっては、事は混乱をきたすだけ。というわけですから、せっかくですがサー・ジェームズ、この件はお断りするしかありませんね」

本当の依頼人が高名のため、仲介で来た人物は話そうとしなかった。
それを聞いたホームズは、依頼人側が謎の事件は受けれないと断るのだった。

「わかるもんか。女性の感情、女性の心、そいつはつねに男にとっては解きがたい謎さ」
「殺人でさえも大目に見、犯人の釈明を聞き入れることがあるかと思えば、もっとちっぽけな、けちな犯罪に腹をたてるってこともありうる」

女性の感情の動きは、理屈通りではいかないことを語るホームズ。
このために女性嫌いになっていた。

「忠実な友人にして、侠気ある紳士さ。それでいいじゃないか、さしあたっては」
「いや、ぼくらにとっては、永久にそれでじゅうぶんだよ」

依頼人が誰か分かったので、喜んでホームズに話そうとしたワトスン。
しかしホームズはそれを知る必要はないと諭すのだった。

マザリンの宝石

「ぼくは頭脳人間だからね、ワトスン。ほかはただのつけたしだよ」

食べ物を余り食べないようにしているホームズ。
頭脳を使っている時は、消化に使うエネルギーも無駄と考えていた。

三破風館

「ごろつきを雇ってぼくを脅かせば、怖れて手をひくと思っておいでのところが、ですよ」
「危険を恐れてひきさがっていては、ぼくのような商売は成りたちません」

相手の知性が曇っていると語るホームズ。
ごろつきに脅かされたぐらいで手を引くと思われたことに、少し怒っている?

サセックスの吸血鬼

「世のなかは広いんだ。幽霊まで相手にしちゃいられないよ」

事件が吸血鬼とか幽霊とか、そちら方面に進みそうになっていた。
そんな時、ホームズが冗談っぽく言ったことになる。

「何事も単刀直入がいちばんです」

依頼人はホームズが気付いていることを知り、嘘をついていたことを自白した。
それに対してホームズは、ズバリと言い切る。

「はじめに頭のなかで組みたてたその推論が、それぞれ独立した一連の出来事によってひとつひとつ裏づけられてゆくと、それまで主観的な推論でしかなかったものが、やがて客観的な事実へと変容する、そこでようやく自信を得て、ゴールに到達したと言いきれるわけです」

ホームズの推理論の一つになる。それぞれで意味を汲み取ってください。

ソア橋の怪事件

「ぼくの調査料は、一定の基準にもとづいています。それを変えることはありません」
「ただし、場合によっては、まったく申し受けないこともありますがね」

依頼人は金に糸目をつけないと話してきた。
それを聞いたホームズは、特別料金はもらわないと話しながら、場合による点も匂わせる。
ホームズはたまに金持ちに、法外な報酬をふっかける。

「せっかくですが、ギブスンさん、べつに人気をあおってもらおうとも思いませんので」
「意外に思われるかもしれませんが、むしろぼくは、名前が出ないほうが動きやすい」
「それに、ぼくが興味をそそられるのは、あくまでも事件そのものでしてね」

名声について語る依頼人。それに対してホームズは、さも興味なさげに返すのだった。

「ぼくにそういう捨て台詞を吐いていったひとだって、これまでに何人もいましたがね」
「見てのとおり、まだぴんぴんしています」

ホームズによくある捨て台詞を吐いた依頼人。
それに対してホームズは、冷静に事実をもって返していく。

「無縁か、そうでないか、それを決めるのはぼくの役目です。そうでしょう?」
「真実ですよ」

事件に関係が無いとして、なかなか話そうとしない依頼人。
それに対してホームズは、全ての真実を話すようにうながしていく。

「こういう捜査では、あらゆる事実に一貫性があるかどうかを見なきゃいけない」
「首尾一貫しないところがあれば、そこに欺瞞があると疑ってかかる必要があるんだ」

事件全体を考えた時、少し引っかかりを感じているホームズ。
そしてその点をワトスンに語っていく。

這う男

「きみはあいかわらずだね、ワトスン!」
「もっともちっぽけに見える事柄こそが、なにより重要な問題を左右するってこと、これがきみにはいまもわかっていない」

些細な出来事を軽視するワトスン。ホームズはそれこそが大切と指摘する。

「ひとは<自然>を征服しようとして、かえってしっぺがえしを食らうものなんですね」

ある状況を見て、ホームズが語ったことになる。多少ネタバレになるので意味は省略します。

覆面の下宿人

「人間はひとりで生きているのではありませんよ」
「自分の命だからといって、それをもてあそぶことは許されません」

自分の命を軽視する人物に対して、ホームズは優しさと厳しさを持って語っていく。

隠退した絵の具屋

「ワトスン、きみはこれをわれわれの事件簿に入れておきたまえ」
「いつの日か、真実を語るときもあるだろう」

事件を解決したホームズだが、全ての成果を警察に譲り渡した。
ただしワトスンの小説により、真実が語られる日がくるのだった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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緋色の研究
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シャーロック・ホームズの冒険
回想のシャーロック・ホームズ
バスカヴィル家の犬
シャーロック・ホームズの復活
恐怖の谷
シャーロック・ホームズ最後の挨拶
シャーロック・ホームズの事件簿

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