かがみの孤城(辻村深月)

学校でのいじめにより、登校拒否になった中学1年生の安西こころ。
そんなある日、鏡が突然輝き、中に吸い込まれてしまう。
その先は城のような建物であり、他にも同じような中学生が6人そろっていた。
待っていたのは少女の身体で狼の顔を持つ「オオカミさま」
1年後の3月30日までに、願いが叶う鍵を見つけるテーマを与えられるのだが。
登校拒否と童話的なテーマをミックスした意欲作。

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奇跡

そんな奇跡が起きたらいいと、ずっと、願っている。
そんな奇跡が起きないことは、知っている。

こころが教室で考えている心の声。イメージとしては王子様願望。
それは夢の様なこと。そして残念ながら、夢のほとんどは叶わない。

冒険

冒険が始まるかも、と期待しないのか。

かがみの城に入った時、こころがオオカミさまから言われたこと。
不思議な世界に入り、楽しいことや危険なことがおこる冒険はハラハラドキドキするもの。
物語としては面白いし、未来に期待したくなる。しかし現実に起これば、不安しか残らない。

確認

自分が聞かなくても、誰かが何か聞いてくれるんじゃないかって期待するのはよくないぞ。
何か言いたいことがあったら直接言え。

みんなをかがみの城に迎え入れ、状況を説明するオオカミさま。
しかし戸惑っているメンバー達は、質問すら出来ない状態。
そんな時、オオカミさまが語ったこと。
確かに、理解したような顔をして話を聞き、後で誰かに確認することがある。
理解できないのではなく、ただ面倒くさいから理解しないだけのことが多い。
もちろん後で、それにより失敗することも多い。
出来れば、自分が納得できるまで確認したいものである。

都合のいい世界

あの子たちの世界は、どこまでも自分たちに都合よくしか、回っていなかった。

いじめをしていた「あの子」たちの行動により、追い詰められるこころ。
誰から見てもいじめている側が加害者のイメージ。
しかしいじめている側は、まるで自分たちが被害者のように振る舞っている。
それは演技ではなく、自分たちにとって本心の世界。
よくあることだが、やりきれない。

嬉しいけど...

構わないでもらえることが、一番楽で、嬉しい。
だけど、この先もずっとこうなのかを考えると、体がものすごく重たくなる。

登校拒否を続けているこころ。そういう時、ほっといてもらうことが一番助かる。
誰が何を言ってきても、面倒くさいとしか感じない。
しかし完全に無視されるのも、自分だけが取り残されているようで不安になる。
周りから見れば、ワガママにしか見えない。
しかしこの感覚は、同じ状態になったことがある人しか理解できない。

勉強

勉強できそうって思われるような外見してることは、自分でもわかる。
だけど、成績、私、悪いんだ。勉強、わかんないとこもたくさんある。
どこからやったらいいか、もうわかんないよ。

かがみの城にいる女の子のフウカが話したこと。
地味でおかっぱ頭、そしてメガネを掛けていると、確かに勉強できそうに見える。
もちろんそれは勝手な思い込み。地味で無口と勉強に何の関連性もない。
これは不幸なことなのだろか?

断言

こころちゃんが学校に行けないのは、絶対にこころちゃんのせいじゃないです。

登校拒否の児童を専門的に受け入れるスクールに働いている喜多嶋先生がこころの母親に語ったこと。
単に勉強が嫌いで、学校に行かない人もいる。
しかしその多くは、何らかの外的問題が発生している。
明らかなイジメもある。イジメでは無くても、仲間外れにされるはツライこと。
その問題を解決すること無く、学校に行かせようとするのは先生や親の身勝手と言える。
子供の世界も大人の世界同様、けっして単純ではない。
自分たちに都合のいい結論を、押し付けるのは問題がある。

サイン

これは、質問じゃなくて、本当に聞きたいわけではなくて、私の願望だ。
気づいてほしい、という願望だ。

こころが喜多嶋先生に質問したことの本心になる。
たとえイジメに合っていても、「イジメに合っていた」とはなかなか言えないもの。
ここに、「なぜ?」という言葉は存在しない。出来ないものは出来ないのである。
しかし知られたくない訳ではない。「気づいてほしい」のである。
そのため、ヒントやサインは意外と発信する。
しかしそれは些細なことが多く、周りの人が気づくのは困難なレベル。
それでも本人にとっては明確なサイン。
それに気づいてもらえないことで、更に心は落ちていく。
どちらが悪いわけでもない。ただ、残念なことではある。

闘い

だって、こころちゃんは毎日、闘っているでしょう?

こころに向かって喜多嶋先生が話したこと。
学校に行かずに家にいると、周りはサボっていると見る。そして楽をしていると考える。
しかし本人にとっても、それがいいことで無いことは分かっている。
まして学校に行けない理由と、毎日闘っている。
それは朝から夜まで、途切れること無く続いていく。
けっして楽な訳ではない。

言葉

言葉が通じない───と絶望的に思い知る。

こころが学校の担任の行動に対して感じたこと。
いじめをする側は、言葉も上手く要領もいいことが多い。
いじめられる側は、言葉足らずで要領も悪いことが多い。
そのため、いじめられている側の言葉は大人に通じないことが多い。
悪ければ、言い訳やワガママに聞こえてしまう。
それは事実を知っている、いじめられている側としては無力を感じる。
そして状況は悪くなっていくことが多い。

闘わない

こころちゃんが頑張ってるの、お母さんも、私も、わかってる。
闘わないで、自分がしたいことだけ考えてみて。もう闘わなくてもいいよ。

喜多嶋先生がこころに語ったこと。
いじめられている側が現状を打開することは、かなり困難が伴う。
しかしもう一つ選択肢がある。 それは、闘わないこと。簡単に言えば、「逃げること」
いじめは基本的に強者が弱者に対して行う。 弱者が強者に勝てることは少ない。
それなら闘いを避けて、逃げることは普通のこと。
その普通のことを、社会や大人は理解しない、もしくは出来ない。
子供には常に、逃げ道があることを伝えたい。

学校

学校は、絶対に戻らなきゃいけないところってわけじゃない。たかが学校のことなのにね。

中学校までは義務教育である。しかしこの義務教育を勘違いしている人が多い。
この義務とは、子供が学校に行かなければならない義務ではない。
学校に行きたい子供を、親は行かせないといけない義務である。
そのため子供が学校に行くのは、権利である。
登校拒否とは、その権利を放棄するだけのこと。
また学歴を重視するのは大企業への就職と、結婚の時に気にする人だけである。
自分で起業するなら学歴など関係ない。学校は全てではない。

ローリスク

勉強は一番ローリスクなことかもしれない。

先程の学校について書いたことの、対になる言葉である。
学校や学歴は必ずしも必要なことではない。
しかし勉強して、いい学校を出るのは、ある意味保険にはなる。
実力が無くても、学校名である程度優遇される。
そして勉強は役に立たなくても、無駄になることはない。
確かに、一番ローリスクな作業になる。

感想

非常に面白く、引き込まれるストーリーでした。
しかしイジメと登校拒否を扱った話にしては、少し軽い感じだった。
少しは大人と子供がイジメに立ち向かうシーンはある。
しかし少ない上に、内容も物足りない。
特に前半は、同じような境遇の中学生が特別な世界に集まって、傷を舐め合うようにして、ただ日常を過ごしているだけ。
この内容で500ページを超えるのは長すぎる。
400ページ以内でコンパクトにしていれば、少しイメージが変わったように感じる。
また最大の謎も、驚きよりも「やっぱり」という感じで謎になっていなかった。
ただ登場人物が気づかないことに、「もやもや」を感じながらストーリは続いていく。
正直、年齢層高めのしっかりしたストーリが好きな人には、おすすめ出来ません。
しかし世間的には、非常に評価の高い作品。
ライトノベルやマンガなど、軽い感じの不思議なストーリを好んでいるなら、おすすめできる作品です。

かがみの孤城

かがみの孤城

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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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