「きみと暮らせば(八木沢里志)」相田ユカリ(あいだゆかり)の名言・台詞をまとめていきます。
きみと暮らせば
その一
自分でできることは自分でやりたかった。
ルールというのは、言い換えるなら生活の基盤だ。
ラジオは顔の見えないところで、一方的に語りかけてくれるのがいい。
この子(猫)はきっと、私たちに小さな幸せを運ぶ使者なんだ。
だから、うちの庭に現れたんだ。ふと、そう思った。
ハチワレが不揃いで間抜けなのも、相田家にふさわしい気がする。
私たち、二人と一匹で、きっと肩寄せあってうまくやっていける。
「あの子には温かいご飯と、守ってくれる人が必要なんだよ」
その二
彼女(クラスメート)が大口開けて笑ってくれると、
他人からしたら自分たちの諍(いさか)いがいかに些細なことか実感できる気がする。
そしてそれが、どれほど恵まれた日々なのかということも。
長谷川さんと話していて改めて気づかされた。
誰かに話を聞いてもらうというのは大事だ。
こんな風に、自分でもよくわかっていなかった気持ちをはっきり理解するきっかけになる。
その三
「怒ってないわよ」
「こんなことくらいで怒ってたら、兄さんと暮らしていけないもん」
「傘はどうしたって、傘でしかないもん」
「いま、一番あの傘を必要としてたのは、あの子だもんね」
なにもかもが灰色の世界の中で、二人の頭の上にだけ、(傘の)青空が広がっている。
なんて美しい世界だろう。
その四
自分のことを好きだなんて言う男の子が、この世界にいるなんて、
そんなこと想像すらしたことがなかった。
自分が全然知らないところで、
男の子に恋愛対象として見られていたことが信じられなかった。
好きになってくれて、ありがとう。
その五
ここで焦ってはいけない。
長谷川さんのお姉さんのときの、あの惨劇を繰り返してはいけない。
「私、自分のこと不憫とかかわいそうとか、そんなこと思ったこと一度もないよ」
「兄さんがいて、種田さんがいて、それでこうして穏やかに暮らせるいまの生活が好きだよ」
「ほかの誰がなんと言おうと、それが私の本心」
その六
ただいま、と言えて、おかえりと返してくれる人がいることの幸せ。
いままでの十五年の人生で、こんな気持ちははじめて味わった。
どれだけ叫んでも、すべてがもう手遅れで、無駄だという思い。
むなしいって、こんな気持ちのときに使う言葉なんだ。
自分はなにがしたかったのだろう。
母に会って、それでどうしたかったのだろう。
結局、ほとんどなにも話さないで帰ってきてしまった。
ただただ、むなしい気持ちばかりが、胸に広がっていき、止めようがない。
気がつくと世の中は、クリスマスムード一色だった。
それに対して、冬の寒さは日ごとに厳しくなっていく。
人々は、心まで寒くなってしまわないよう、
こんな風にクリスマスを祝いたがるのかもしれない、とふと思った。
「いるよ、兄さんといる」
「一緒にいたい」
幸せな瞬間は、いつもこの家にちゃんとあった。
この日々こそが、幸せそのものなのだ。
いつかすべての記憶が曖昧になってしまったとしても、
幸せだと感じたこの気持ちだけは忘れないでいたい。
最後まで読んで頂きありがとうございました。