「今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ)」神谷透(かみやとおる)の名言・台詞まとめ

「今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ)」神谷透(かみやとおる)の名言・台詞をまとめていきます。

 

今夜、世界からこの恋が消えても

当時の僕には、いくつも分からないことがあった。

 

身近なところでは正しい嘘の告白の仕方だったり、哲学的なところであれば死であったり、
詩的なところでは恋であったりした。

 

そしてまた一つ、分からないことが増える。
自分自身のことだ。

 

知らない彼の、知らない彼女

五月病。なんとも雅だ。

 

現実というのはアクションを起こさないと、なんらかのリアクションは返してくれない。

 

下川くんは少しだけ肥満体でからかわれたりもするが、心根の美しい人間だ。
しかし心というのは目に見えない。

 

教室から人がいなくなるにつれ、吹奏楽部が楽器を鳴らす音や、
運動系の部活動が準備運動をする声が遠くから聞こえ始めてくる。

 

その孤独と連帯の合いの子のような空気感は、嫌いじゃなかった。
四角く切り取られた青い空は、寂寥じみた音楽に似たものを無人の教室へと運んでくる。

 

「(私と付き合うのは嫌?) 嫌……じゃない、かもな」

 

「清潔感は装えるけど、衛生感は装うことが出来ないものだと思ってる」

 

 

「転校先では、女の子とたくさん仲良くなったらいいよ」
「新しい環境は、自分を新しくするチャンスでもあるからさ」

 

そのまだ見慣れない顔に、少し救われている自分がいた。
自分に会いにきてくれる女の子がいるというのは、なんだか不思議な気持ちだ。

 

人の心は見えない、覗けない。
日野は屈託なく、楽しそうに笑っていた。

 

形が事実を作るのか、あるいはそんな事実など存在しないのか。
徐々に日野との付き合いによって組み替えられていく自分のことに、困惑していた。

 

お金には力が宿っている。
それは、人を幸せにする力だ。

 

眩しい光に当てられると、その分だけくっきりと影が浮かび、
その影に囚われてしまうことが人間にはある。

 

世界のあらゆる悲劇の何割かは、所詮は自分の内のことなのかもしれない。

 

「日野のことを、好きになってもいいかな」

 

歩き始めた二人のこと

「今日のことも手帳や日記に書かなければ、明日の日野には伝わらないんだよね」

 

「じゃあ、記憶障害について僕に話したことは、書かないでおいてくれ」
「それとあわせて、僕が君を好きになってることも」

 

僕はまた、自分を驚かせることが出来た。
君といるから。君と、いたいから。

 

笑う顔が、下らないことを言うところが、
自分らしく振舞いながらも人を気遣っているところが、好きだった。

 

好きの理由は言い足りない。
初恋に戸惑ってすらいる。

 

この選択は、いつか僕と彼女を苦しめるだろうか。だけどと願う。
どうか叶いますように。届きますように。

 

 

好きとはいったい、どんな意味を持つ気持ちなんだろう。
人はどうして、人を好きになるのだろう。

 

時に人を好きになることは辛く、悲しいことかもしれないのに。

 

彼女を好きでい続ける。傍にあり続ける。
だけどその想いは、彼女に告げることはしない。

 

日々を積み重ねていくことが出来ない。
それはいったい、どれだけの絶望だろう。どれだけの苦しみだろう。

 

自分だけが時間に取り残され、そればかりでなく未来を奪われている。

 

なら僕は、明日の日野が少しでも日常を楽しいものだと感じてくれるように、
彼女が綴る日記を楽しい思い出で一杯にしよう。

 

それを読んで、明日の日野たちが少しでも勇気が出るように。

 

思えば僕はこれまでの人生で、無駄に冷めていて馬鹿なことをしたことがなかった。
つまりは地味に生きてきた。

 

だけどそんな生き方では、日野の日記を楽しくは出来ない。
だからこれからは彼女が望むことならなんでもしようと、無茶でもしようと思えた。

 

「姉さんは、僕が悪いことをした時は叱ってくれた。だから僕も叱る」
「そんな簡単に諦めちゃだめだ。お願いだから。夢だったんでしょ? 小説家になるの」

 

「この家にだって、い続ける必要はないんだ」
「父さんの面倒なら、僕がみるから」

 

「犠牲だなんて、思ってない。姉さんはずっとやりたいことが出来なかったんだ」
「それが今ようやく出来て、僕は嬉しいよ。本当におめでとう、姉さん」

 

 

「大切にするだけじゃない」
「そういう生き方が出来るように、努力していく」

 

一刻も早く、会いたい人がいる。
笑って話したい人がいる。
一歩一歩が、その人に繋がっている。

 

結局人は、自分の中にあるものが一番強い。

 

放課後は毎日のように彼女と過ごしているけど、決定的に違う。
僕と日野は、出会えていないんだ。

 

この夏はいつも一度

「(私のこと好きだったりする?) 大丈夫だよ」
「僕は、日野のことを本当に好きになったりしないから」

 

彼女を好きになったことに後悔はない。
この想いは実らなくても……いいんだ。

 

世界の裏には残酷さが潜んでいる。唐突にそう思った。
人が知らないだけのことで、そこかしこで残酷さは息を潜めている。

 

今日一度きりの日野と、昨日から連続している僕が別れる。

 

「逃げていったわけじゃないよ」
「姉さんは、向かっていったんだ」

 

「(父さんは)自分自身にも酔ってるよ」
「妻に先立たれた自分に」

 

「それでも小説にしがみついてる自分に」
「小説家になれるかもしれないっていう、妄想にも」

 

人は前に進もうとするなら、ちゃんと傷付かなければならない。そこから逃げてはいけない。
自分に酔って、傷付くことを誤魔化してはいけない。

 

誰だって、きっとそうだ。良い人間になりたくない人間なんて、一人もいない。
父さんと僕は逃げ続けていたけど、悪い人間になったわけじゃないんだ。

 

「忘れないよ、僕はこの日のことを」

 

「忘れるのは、人の常だよ。でも大丈夫。どんな記憶も、完全に消えるわけじゃないから」
「僕はそう、信じてるから」

 

「大丈夫だよ。僕はずっと、日野のすぐ傍にいるから」

 

空白の白

「本当に無理なことは、しないし出来ないよ」

 

「でも、少しの無理をしてでも出来ることがあるなら」
「少しの無理をしてでもしたいことがあるなら、それは幸せなことだと思ってる」

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 
 
 
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