「羊をめぐる冒険(村上春樹)」より名言・台詞をまとめていきます。
羊をめぐる冒険(上)
第一章
世界中が動きつづけ、僕だけが同じ場所に留まっているような気がした。
「ねえ、十年って永遠みたいだと思わない?」
「二十五まで生きるの」「そして死ぬの」
第二章
豆を挽き終ってから本当はアイスティーが飲みたかったことに気づいた。僕はいつもあとになってからいろんなことを思い出す。
「説明してるんじゃないよ。しゃべってるだけさ」
「あなたには何か、そういったところがあるのよ。砂時計と同じね。砂がなくなってしまうと必ず誰かがやってきてひっくり返していくの」
「知らない人はみんなそう思うのよ。でも本当に簡単なの。終わってしまえばね」
「あなたのことは今でも好きよ。でも、きっとそういう問題でもないのね。それは自分でもよくわかっているのよ」
何かが変わったとはまるで思えなかったし、実際のところ、何ひとつ変ってはいなかったのだ。
「でも、あなたと一緒にいてももうどこにも行けないのよ」
第三章
「ずっと退屈な人生だったし、これからだって同じさ。でもそれが気に入らないというわけでもない。要するに仕方のないことなんだよ」
「つまり、あなたの人生が退屈なんじゃなくて、退屈な人生を求めているのがあなたなんじゃないかってね」
「そして冒険が始まるの」
第四章
一人の人間が習慣的に大量の酒を飲むようになるには様々な理由がある。理由は様々だが、結果は大抵同じだ。
「搾取なんて存在しない。そんなものはお伽話さ。君だって救世軍のラッパが本当に世界を救えると思ってるわけじゃないだろう?」
たとえ何が起こるにせよ、まだ何も起こってないんだ。そして何かが起こったとすれば、それはもう起こってしまったことなのだ。
第五章
でもこれは当然と言えば当然の話で、自分にもうまく説明できないことを、他人に向って説明することなんてできるわけはないんだ。
ひきのばされた袋小路──たぶん彼女の言うとおりなのだろう。
荷物を持たずに長距離列車に乗るのは素敵な気分だった。まるでぼんやり散歩しているうちに時空の歪みにまきこまれてしまった雷撃機みたいな気分だ。そこにはまるで何もない。
「時代が変ったんだよ。時代が変れば、いろんなことも変る。でも結局はそれでいいんだよ。みんな入れ替わっていくんだ。文句は言えない」
「歌は終った。しかしメロディーはまだ鳴り響いている」
「本当は何も変ってないとしても、そういう風には思えないのよ。思いたくないのね」
「そう思っちゃうと、もうどこにも行けないのよ。だから自分ではすっかり変っちゃったんだと思うようにしてるの」
性格は少し変るが凡庸さというものは永遠に変りはない。
「でも非現実的なものって、そんなに長くはつづかない」
第六章
「逆だよ。認識こそ幻想なんだ」
「凡庸さというのはいろんな形をとって現われる、ということです」
「弱音を吐いてなんていられないだろう。君が駄目だと思ったら、それでもうみんなおしまいなんだぜ」
羊をめぐる冒険(下)
第七章
「はじめての街というのはそういうものなんだよ。まだうまく体がなじめないんだ」
彼女は人生におけるリアリティーというものを実に正確に把握していた。
つまり一度閉じたドアは二度と開くことはできないし、かといって何もかも開けっ放しにしておくことはできないという原則だ。
「やれやれ」と僕は言った。やれやれという言葉はだんだん僕のくちぐせになりつつある。
「そうです。何かを求めるというのは面白い作業です」
「時間を切り離した結論だけを効率よく盗みとろうとする。全てがそうだ。つまり地面に足がついていないんだ」
第八章
「なんだかこうしてみると、日本人って戦争のあいまに生きてきたみたいね」
「せっかく苦労して土地を開拓して畑を作ったのに、とうとう借金からは逃げ切れなかったのね」
「でもいざ町を出ようと思うと駄目なんです。わかりますか? 町というのが本当に死んでしまうものなら、その死ぬところをこの目で見ておきたいという気持の方が強いんですね」
「あんたは自分の人生は退屈だと思うかい?」
「羊だってそれと似たようなもんだよ。そんなこと考えもしないし、考えてもわかりっこない」
僕は一人ぼっちで、生まれてこのかたこれほど一人ぼっちになったことはなかったような気がした。
「でも暇つぶしの友だちが本当の友だちだって誰かが言ってたな」
「もうもしはないんだよ。君にもそれはわかっているはずだ」
「一般論をいくら並べても人はどこにも行けない。俺は今とても個人的な話をしてるんだ」
「もちろん人間はみんな弱さを持っている。しかし本当の弱さというものは本当の強さと同じくらい稀なものなんだ」
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。