いなくなれ、群青(河野裕)より言葉と名言の紹介

いなくなれ、群青(河野裕)

 架空の島「階段島」で繰り広げられる、不思議な物語。

 

 僕は出会いたくない場所で彼女と出会った。

 

 誰よりも真っ直ぐな心を持つ少女、真辺由宇。

 

 階段島に住む住人は過去の記憶を持たない人ばかり。

 

 島に来た理由も分からず、そしていつ出ていくかも分からない。

 

 僕の高校生活にも事件と、そして残酷な現実が待ち受けている...

 

 少し不思議な感覚のファンタジー系青春物語。

登場人物

 

七草(ななくさ、名前は不明)
 物語の主人公。高校一年生。真辺由宇とは元クラスメイト。
 真辺由宇のことを階段島でもっとも会いたくなかった人物と考えている。

 

真辺 由宇(まなべ ゆう)
 七草の元クラスメイト。高校一年生。
 表情が表に出ないタイプであり、不思議系の真直ぐな少女。
 階段島の秘密を解こうとしている。

 

言葉や会話の紹介

 

七草の性格

 

 でも彼の前世が何であれ、彼の人生が何度目であれ、僕には関係の無いことだ。
彼は100万回生きた猫だと名乗った、ならそれでいいのだと僕は思う。

  七草が階段島で出会った少年に対して、考えた言葉になります。

 

  多くの人はそのように名乗られたら本当の名前を聞いてくるか、
 もしくは馬鹿にされたと考えて怒りだす。

 

  しかし七草にとって、名前をどのように名乗っても問題にはならない。

 

  またそんな少年と一緒にいることが、普通に出来るタイプ。

 

  個人的に七草のように踏み込んで来ないタイプは、親友としてはともかく、
 知り合いとしては好ましい。

 

猫に対して

 

 素直な人間は好きだよ。
 とはいえ飼い猫に素直にならない人間なんて、どこにもいないけどね。

  猫好きに限らず、動物好きの人にとっては共通かな。

 

  自分と猫だけの時の行動は、おそらく人に見られたくないでしょうから...

 

七草が思っていること

 

 どうして彼女は、そんなにもこの世界の正しさを信じていられるのだろう?

  七草が昔から真辺由宇に対して思っていたこと。

 

  大人になれば、正しいことが認められる訳ではないことを知る。

 

  これが良いことかは分からない。

 

  しかし多くの場合、本当に正しいかの判断は難しい。

 

  なぜなら「人によって正しさは異なる」から。

 

  そのため、「正しさは多数決によって決まる」

 

  一例として、一人の人間を殺害したら犯罪者だが、百万人の敵を戦争で
 倒せば英雄となる。

 

  本当に正しさというのは面倒くさい...

 

階段島というごみ箱

 

 ここはごみ箱なのだ。
 ごみ箱に捨てられるのは、どこか壊れたり、欠けたりしている物ばかりだ。

  階段島は別名「捨てられた人々の島」と呼ばれている。

 

  そんな所に送り込まれている人々は何かしらの欠点を持っている。

 

  その時に七草が考えたこと。

 

  なぜ送り込まれたのか? なぜ記憶が無いのか? どうすれば帰れるのか?
 魔女とは何か? などこの時点では不明なことばかり。

 

  ただ物ならともかく、人に対して「ごみ箱」という言葉を使うことには抵抗がある。

 

理想主義者

 

(七草)「彼女はとてもまっすぐなんだよ」
(百猫)「まっすぐ?」
(七草)「純粋で直線みたいにね。ひとつの方向に、まっすぐ伸びていく」
(百猫)「よくわからないな」
(七草)「言いかえれば、夢想家で理想主義者なんだよ」
(百猫)「ああ、なるほど。そりゃすぐに捨てられそうだ」

  猫の少年と七草による真辺由宇についての会話。

 

  理想を正しいと考える人は間違ってはいない。

 

  だが着いていけないもの事実。

 

  本書内でも、「純粋で理想主義者というものは嫌われるものだ」と書かれている。

 

  自分の正しさを信じている人は考え方を変えない。

 

  そして正しいから許されると考えている。

 

  ただ正しさ故に、多くの人から見ると「大悪」を行ってしまうことがある。

 

  困ったものです...

 

悪意について

 

 真辺に悪意がないことを僕は知っている。
 攻撃的な意思もない。
 ただ思ったことを素直に口に出しただけだ。
 でもストレートな言葉は多くの場合、攻撃的に聞こえる。

  真辺由宇が語った言葉に対して、七草が考えたこと。

 

  「思ったことを素直に口に出す」とは本心を語ること。

 

  そして、この本心というのが本当に厄介。

 

  例えば、テストの点数が悪い友人に対して、「バカ」という本心を言えば、
 相手は怒るだろう。

 

  多くの場合、本人が気付かないうちに同じようなことを話している...

 

諦めること

 

 でも僕は経験で知っている。
 諦めてしまえば、なにも期待しなければ、どんなことだって我慢できる。

  いかなる人に対しても、楽しいだけではない瞬間がある。

 

  その中で楽しいと我慢を比較して、どちらの比重が高いかが、その後の
 付き合い方を決定する。

 

  嫌な事はカウントしない。

 

  そして楽しいことだけカウントする。

 

  その我慢による付き合いに意味はあるのかな?

 

問題を解決するには

 

 まずはルールの方を変えないと、どうしようもない。
 困っている人を順番に助けて回っても、根本的な問題は解決しない。

  階段島で起こるいろいろな問題に対して、真辺由宇が語った言葉になります。

 

  確かに問題が多数起こる状況に対して、根本的な原因を考えて
 解決しなければいけない。

 

  しかし解決する途中で、今よりも多数の問題が発生することがある。

 

  なぜなら多くの人は問題は分かっていても、今の状況が変わることを
 本質的に恐れているから。

 

  このように正しい考えの人が、時に暴走して混乱を招く。

 

  そして中途半端に終わることが、よくある現実。

 

  世の中の矛盾と言えるのかもしれない...

 

七草の苦労

 

 嫌な予感がする。
 彼女に新しいアイデアが生まれるたびに、僕の苦労が増えるのだ。

  言葉の通りです。

 

  同感する人も多いのでは?

 

真辺由宇の考え方

 

 感情的な問題を、冷静に解決しても仕方ないじゃない。

  小学生時代の真辺由宇が、ある問題に対して語った言葉になります。

 

  らしいといえばらしいですね。

 

  考え方が合っているのか間違っているのか、私には分かりません...

 

アドバイス

 

 いつか、ふと気が向いた時でいい。
 君が怖がっているものについて、僕に教えてほしい。
 上手なアドバイスはできないだろうけれど、少し気を紛れさせることくらいなら
できるかもしれない。

  何かに恐れている子どもに対して、七草が語った言葉になります。

 

  優しい言葉です。

 

  多くの人にとって、相手に対するアドバイスは役に立たない。

 

  分かっていても、それが出来ないから困っている場合がほとんどだから。

 

  しかし聞くだけなら誰にでも出来る。

 

  アドバイスなどは本来不要なもの。

 

  それは相手が考えて、答えを見つけるものだから。

 

不思議系女子

 

 嫌だよ。
 不思議系女子が現れたら、とりあえず振り回されとくのが常識だろ。

  真辺由宇を面白がっている、クラスメイトの言葉になります。

 

  何が常識なんですかね?

 

  楽しいことや新しいことに対して仲間に入っていくという感覚を、
 私は持ち合わせていないので、少しうらやましい...

 

別れが訪れた時

 

 きみと別れるのが悲しいわけじゃない。
 それはもちろん悲しいことだけど、そういうんじゃない。
 たぶん私は、思っていたよりもずっと、きみのことを理解して
いなかったんだと思う。

  真辺由宇が中学生時代に引っ越しのため、七草と別れる時に語った
 言葉になります。

 

  何か分かるような分からないような表現ですね。

 

  ただ自分自身でも、よく分かっていないということは素直に感じることができる。

 

約束の意味

 

(七草)「約束はできない」
(真辺)「だめ。約束するの。私は約束だと思ってる」
(七草)「一方的な約束は約束じゃない」
(真辺)「それでもだよ。私の方は約束だと思ってる。いつか君の気が変わったら、
   いつでも本当の約束になるでしょ?」

  先程と同じ、中学時代に別れる時の会話になります。

 

  ややこしい言い回しですが、言ってることは分かる。

 

  そして二人の性格が、間逆だということが面白い。

 

  性格は違うが、長く一緒にいることが多いのは不思議ですね。

 

真辺由宇の行動理論

 

 手を握っていればいいなら、私はそうするよ。
 ケーキを買ってくればいいなら、私はそうする。
 でも悲しいと泣くのは当たり前なんだから、無理やりに涙を止めても意味がないよ。
 目的がすり替わっている。
 一番根っこをどうにかしないと。

  真辺由宇が泣いている子どもを置いて立ち去ったことを七草にが咎められた時、
 語った言葉になります。

 

  普通なら泣いている子どもを慰めてから次の行動に移る。

 

  しかし真辺由宇にとっては、泣いていること自体は問題ではなく、子どもを
 泣かしている原因を一刻でも早く解決することが、慰めるよりも優先されること。

 

  本来慰める行動とは、本心から慰めたいと思った時に行うこと。

 

  「普通の人なら慰めるから自分も慰める」という行動はおかしい。

 

  しかしほとんどの人は、そのおかしなことを正しい行動と考える。

 

  そして、それを行わない人を非難する。

 

  人の世には自由が無い...

 

七草の正しさ

 

 でも君はちょっと極端なんだ。正しいことの正しさを信じ過ぎている。
 他の人はもっと、正しいことがそれほど正しくないんじゃないかと疑っている。

  少し言い回しは難しいが、個人的には納得できる。

 

  正しさを信じることはいいのだが、正しさを信じ過ぎると何をしても
 許されるような感じになり、歴史上で多数の悲劇を生んでいる。

 

  典型的な例を上げれば、宗教上の争い。

 

  本来善良な信仰者であっても、異教徒に対して残酷になれる。

 

  相手がこちらの正しさを信じないことにより、絶対悪と捉えることが可能だから。

 

  柔軟に生きるためには、正しさを信じすぎることは危険です。

 

  正しさは適度に信じるようにしたいものです...

 

不幸の権利

 

 ねぇ、真辺。
 人は幸せを求める権利を持っているのと同じように、不幸を受け入れる
権利だって持っているんだよ。

  七草が真辺由宇に語った言葉になります。

 

  不幸なんて誰もが受け入れたくないものです。

 

  しかし、実際は多くの人が不幸を受け入れている。

 

  親子関係がその典型的です。

 

  金持ちの家に生まれたかったとしても、貧乏な家に生まれることはある。

 

  そのときに、貧乏な親の元では不幸だから「別の家の子になる」とはならず、
 この状態を受け入れて、どうすれば幸せになれるかを考える。

 

  まず不幸を受け入れる、または認めることが本当の第一歩なのかもしれない。

 

真辺由宇の七草評

 

(真辺)「七草のことは、結構知ってるよ。秘密主義だし、平気で嘘をついて誤魔化すし、
   たまに意地悪だし、無駄に好き嫌いとか隠そうとするし、全体的に素直じゃない」
(七草)「わざわざ僕にけんかを売りにきたの?」
(真辺)「それに、とっても優しい」

  彼女にしては言葉自体も優しい感じです。

 

  ただ七草曰く「奇妙に力強く、攻撃的で、尖っていた」とあるから、
 言葉自体から受けている印象とは異なるのかもしれない。

 

真辺由宇の思い

 

 普通にものが見えて、普通に耳が聞こえていたら、
きみに感謝していないわけないじゃない。

 まっくらやみの中にいるような気分になることがある。
 豆電球がひとつあれば救われるのに、私はそれを持っていないの。
 二年間、何度もそんな気がした。
 そのたびにきみのことを思い出した。

  感情や言葉で表現しない彼女が、ずっと思っていた七草に対する思いを
 二つ続けてピックアップしました。

 

  好き嫌いというより「大切な人」という感じですね。

 

  感情が無いのではなく、出すのが苦手というのが本当なのかもしれない。

 

  感情や思いを簡単に出せる人にとっては、理解が難しいかもしれない。

 

  しかし出来ない人が存在することも、理解してもらえれば助かる。

 

食い違い

 

(七草)「彼の事情を、知ってるの?」
(真辺)「知らないよ。まったく」
(七草)「なら、可能かどうかもわからない」
(真辺)「不可能なわけがないよ」

  七草と真辺由宇の関係が分かる会話だったため、ピックアップしてみました。

 

  まったく噛み合わないことの、典型のような気がします。

 

  だからこそ一緒に行動しているのかもしれませんね。

 

成長について

 

 なにかを捨てて進むのが成長だとは、認めたくない。

  前に進むことに対して、真辺由宇のが語った言葉になります。

 

  これだけを聞けば子どもの理想です。

 

  現実的ではありません。

 

  ただ、こうありたいと望む気持ちは持っていたい。

 

約束

 

 約束しよう、七草。私たちは必ず、また出会うんだよ。

  二人に分かれが近づいた時に真辺由宇が語った言葉になります。

 

  七草には「決まったことをただ告げるような口ぶり」に聞こえている。

 

  約束の言葉にも感傷が乗らない感じは、最後まで真辺由宇らしく
 個人的には好意が持てます。

 

感想

 

  少し理屈っぽい感じはありますが、面白い内容でした。

 

  本作はライトノベル的な雰囲気の作品であり、表紙の絵柄からも若者向けの
 イメージですが、年を重ねていても共感出来る面白さがあります。

 

  悲観的な主人公と、相手を意識しないヒロインの関係はいい感じ。

 

  若い人には間違いなくおすすめであり、少し上の人でもいつもと違う感覚の
 小説を読みたいならおすすめ出来る作品です。

 

 

 

 

→「その白さえ嘘だとしても」へ

 

 

 

 

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