探偵・金田一耕助(横溝正史作品)の名言・台詞をまとめていきます。
獄門島
第一章
「なに、ぼ、ぼくはどうせ遊んでいるんですから」
第二章
「和尚さん、ごらんなさい」
「この吸い殻はひどく暗示的ですよ」
あれは犯人の単なるこけおどしであったのだろうか。
そうは思わぬ。
あそこにああして逆さまに、○○の体をつるしていったということに、
なにかしら、深い意味があるのではあるまいか。
気ちがいである。
まったく気ちがいの沙汰である。
しかしこの獄門島全体が、どこか狂ったところがあるのだから、
ああいう常軌を逸したやりくちにも、犯人にとっては、
それは相当の深い理由とたくらみがあるのではなかろうか。
第三章
ポクポクと眠りを誘うような木魚の音が、だらけたいまの気持ちにとって、
まことに快いのである。
それはまるで、怠けろ、怠けろと、だらけた心を、いっそう誘惑するようであった。
「いや、逃げるのはよしましょう」
「逃げたところで、テンモーカイカイですからな」
第四章
「もし犯人が気ちがいでないならば、そして、これらのこけおどしに」
「なにか深い意味があるならば、その意味が解けるときこそ、事件のなぞが解けるときです」
「清水さん、ぼくの眼を見てください。それから、あの吊り鐘を見てください」
「あの吊り鐘にちかっていいます」
「ぼくの眼を見てください」
「うそをいってるように見えますか」
「いや、ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」
「おふたりとも、しばらく黙っていてください」
「ぼ、ぼくはたいへんな思いちがいをしていた」
「もし、そうだとすると…ちょ、ちょ、ちょっと、ぼくに考えさせてください…」
「まあ、自業自得というところでしょう」
「もっとも、我が輩はメイ探偵であるなんて名乗りは、ちとあげにくいですからな」
「いやいや、そういうわけではありません」
「ぼくはただ、あらゆる可能性を考えているんです」
「そして気ちがいといえども、われわれの関心から、除外したくないのです」
「そこになにか、意味があるのかないのか…ぼくはそのことを考えているんです」
「警部さん、犯人がそいつかもしれぬという説にはぼくも同意します」
「しかし、殺人の動機については、とてもそんな単純なものとは考えられない」
「犯人がその男にしろ、その男でないにしろ」
「そこにはもっとすさまじい、奥底のふかい動機があるにちがいないんです」
第六章
「そう、恐ろしいやつです」
「一晩に一人ずつ三晩つづけて…確実に、冷血に…」
「一分の狂いもなく計画を遂行していったのです」
おお、なんということだ。なんという恐ろしい。
気ちがいじみたこの道化。
…おお、大地がゆれる。
海がもえる。空がきらめく。
「気が…気が…気がちがっている!」
「気が…キが…そうだ、たしかにちがっている」
「ああ、おれはなんというバカだったろう」
第七章
「いまにわかります」
「手品の種明かしをしてお眼にかけようというのですよ」
「ぼくはバカだったのです」
「この島へついたときから、いやこの島へつくまえから」
「そのことに気がついていなければならなかったのです」
「それは恐ろしいことでした。気の狂いそうな発見でした」
「あまり気ちがいじみて、自分でもそれを信じるのが怖かったくらいです」
「しかしいかにぼくの感傷がそれを拒否しようとしても」
「厳然たる事実は動かすことはできません」
エピローグ
そうだ、それでいいのだ。
ここは他国もののながく住むべきところではない。
八つ墓村
第一章
「あなたのような恐ろしい立場におかれた人も珍しい」
「私があなただったら、生涯の記念として、この三か月の経験を書きとめておきますね」
第二章
「むろん、迷信ですよ。しかし迷信だからいっそう怖い」
「理屈では説き伏せられない頑冥さですからね」
第三章
「まあまあ、警部さん、この事件はね、だれが犯人であるにしろ」
「一朝一夕には解決しませんよ」
「なぜといって動機が皆目わかっていない」
「犯人はいったい何をたくらんでいるのか」
「…それが判明するまでは、そうむやみに、短兵急に責めてもだめですよ」
第四章
「そう、警部さん、あなたのおっしゃるとおりかもしれません」
「しかし…ひょっとすると、そうでないかもしれないのです」
「犯人がわざと落としていったのか、それとも余人が」
「なにかためにするところがあっておいていったのか」
「いずれにしても犯人の意図、あるいは意図らしくみせかけようとするところのものが」
「これでいくらかハッキリしたわけですね」
「犯人ははじめてヘマをやらかしたんです」
「辰弥さん、あなたにはそれがわかりませんか」
「わかりそうなもんですがねえ」
「いえ、ひょっとすると、あなたにはわからないのがあたりまえかもしれない」
第六章
「だから危険を冒すには冒すだけの、効果を期待しているはずなのだが」
「それがなんだかわからない…」
「相好がくずれているのでハッキリ識別することはできません」
「しかし、これが◯◯◯◯でなかったら、私は首をあげてもいい」
第8章
「こんどのこの事件ほど、手こずったことはありません」
「謙遜ではなく、私はあえて告白しますが」
「こんどのこの事件では、ぼくにいいところは少しもなかった」
「私という人間がいなくても、この事件はしぜんと終息し」
「犯人もしぜんと刑罰をうけていたにちがいないのです」
「殺人事件で動機がうまく隠せたら、犯人の計画は半ば以上成功です」
「われわれ凡愚の人間は、精神的には終始、人殺しをしているようなものなんです」
犬神家の一族
第一章
美人もここまでくるとかえって恐ろしい。
戦慄的である。
私立探偵と依頼人との関係は、懺悔僧と懺悔人との関係も同じことである。
ところがどうだろう。
こんどの事件の場合は、依頼人は自分の面前へ現われるやいなや殺されてしまったのだ。
しかも、自分の部屋で…。
これほど大きな屈辱があるだろうか。
「いやはや、ど、ど、どうもどうも」
「…名探偵、逆に探偵されるというわけですな」
「いや、ぼくにとっちゃ実にいい教訓になりましたよ」
「実はね、これで相当うぬぼれがあって、金田一耕助といやあ、名声天下にかくれなし…」
「てえくらいの自信はもっていたんですからね」
第二章
「いいや、ぼくは疑っているのじゃないのです」
「ただ、可能性を追求しているんです」
「こ、こ、これは実に興味のある事件ですな」
「犯人がだれにしろ、そいつはけっして自分だけが」
「焦点のなかにうきあがってくるようなヘマはやらないのですね」
第四章
「そこまではぼくにもわかりませんよ」
「しかし、かばわれているのがだれにしろ」
「この家に住んでる人物にちがいないことだけはたしかでしょうね」
「なぜといって、疑問のXの行動は」
「すべて注意を、外に向けようとするところにあるんですからね」
第五章
「それは私にもわからない」
「それがわかれば、あるいはこの事件はかたがつくのじゃないでしょうか」
「いずれにしてもその男は、犬神家のなにかふかい縁故のある人物にちがいありませんよ」
第六章
そうだ。
この連続殺人は、なにかしら犬神家の嘉言、あるいは家宝に深い関係があるにちがいない。
そして犯人は故意に、そのことを誇示しようとしているのだ。
「どういう意味か」
「…それをぼくも考えているんです」
「そ、それですよ、け、刑事さん、ぼくが非常に興味をおぼえているのは」
「…ひょっとすると刑事さんたちのやることは」
「万事そいつに筒抜けになっているのかもしれませんよ」
第七章
「いやあ、どうもせんのです。それだけの話ですがね」
「しかし、ぼくにはどうも変に思われてしかたがないのです」
「署長さん、そうですよ、子どもだましの判じ物なんですよ」
「しかし、犯人は、被害者の肉体をもって、斧を暗示しようとしたのです」
第八章
三十年という歳月は、ひとさまざまの運命の筬を織るのである。
「ド、ド、どういう意味も、コ、コ、こういう意味もありませんよ」
「コ、コ、このひとは犯人じゃないのですね」
「タ、タ、たぶんこのひとは、あくまで自分が犯人だといいはるでしょうけどね」
「わかりました。ぼくもだいたいそうじゃないかと思ったんですが」
「それにはあまりにも多くの偶然を、計算に入れなければならないものですから…」
最後まで読んで頂きありがとうございました。