「山椒魚(井伏鱒二)」の名言・台詞をまとめていきます。
山椒魚
山椒魚は悲しんだ。
彼は棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。(冒頭の書き出し)
「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」
しかし彼に何一つとしてうまい考えがある道理はなかったのである。
ほの暗い場所から明るい場所をのぞき見することは、これは興味深いことではないか。そして小さは窓からのぞき見するときほど、常に多くの物を見ることはできないのである。
「くったくしたり物思いに耽ったりするやつは、莫迦だよ」
彼はどうしても岩屋の外に出なくてはならないと決心した。いつまでも考え込んでいるほど愚かなことはないではないか。今は冗談ごとの場合ではないのである。
山椒魚は再びこころみた。それは再び徒労に終った。
いかなる○○病者も、自分の幽閉されている部屋から解放してもらいたいと絶えず願っているではないか。最も人間嫌いな囚人でさえも、これと同じことを欲しているではないか。
誰しも自分自身をあまり愚かな言葉で譬えてみることは好まないであろう。ただ不幸にその心をかきむしられる者のみが、自分自身はブリキの切屑だなどと考えてみる。
「ああ寒いほど独りぼっちだ!」
悲嘆にくれているものを、いつまでもその状態に置いとくのは、よしわるしである。山椒魚はよくない性質を帯びて来たらしかった。
山椒魚は相手の動物を、自分と同じ状態に置くことのできるのが痛快であったのだ。
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