「檸檬(梶井基次郎)」の名言・台詞まとめました

「檸檬(梶井基次郎)」の名言・台詞をまとめていきます。

 

檸檬

檸檬

えたいの知れない不吉な塊が私の心を終始圧えつけていた。焦燥と云おうか、嫌悪と云おうか。

 

察しはつくだろうが私にはまるで金がなかった。
とは云えそんなものを見て少しでも心の動きかけた時の私自身を慰める為には贅沢ということが必要であった。

 

それにしても心という奴は何という不可思議な奴だろう。

 

泥濘

こんなことにかかりあっていてはよくないなと、薄うす自分は思いはじめた。
然し自分は執念深くやめなかった。また止まらなかった。

 

妄想は自分を弱くみじめにした。愚にもつかないことで本当に弱くみじめになってゆく。

 

承認してしまえばなにもかもおしまいだ。そんな怖ろしさがあったのだった。

 

模倣というものはおかしいものである。友人の模倣をこんどは自分が模倣した。
自分に最も近い人の口調は却って他所から教えられた。

 

自分はしみじみした自分に帰っていた。

 

路上

自分はきっと滑って転ぶにちがいないと思った。──途端自分は足を滑らした。
自分は高みの舞台で一人滑稽な芸当を一生懸命やっているように見えるにちがいなかった。──誰も見ていなかった。変な気持であった。

 

どうして引返そうとはしなかったのか。魅せられたように滑って来た自分が恐ろしかった。
──破滅というものの一つの姿を見たような気がした。成る程こんなにして滑って来るのだと思った。

 

橡の花

何気ない目附きをしようなど思うのが抑々の苦しむもとです。

 

私の心はなんだかぴりりとしました。
知るということと行うということとに何ら距りをつけないと云った生活態度の強さが私を圧迫したのです。

 

妄想で自らを卑屈にすることなく、戦うべき相手とこそ戦いたい、そしてその後の調和にこそ安んじたいと願う私の気持をお伝えしたくこの筆をとりました。

 

過古

彼は往来に立ち竦んだ。十三年前の自分が往来を走っている! ──その子供は何も知らないで、町角を曲って見えなくなってしまった。
彼は泪ぐんだ。何という旅情だ! それはもう嗚咽に近かった。

 

雪後

「僕はこの頃今時分になると情けなくなるんだ。空が綺麗だろう。それにこっちの気持が弾まないと来ている」

 

ある心の風景

「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分或いは全部がそれに乗り移ることなのだ」

 

冬の日

「痴呆のような幸福だ」と彼は思った。そしてうつらうつら日溜りに屈まっていた。

 

「冷静というものは無感動じゃなくて、俺にとっては感動だ。苦痛だ。しかし俺の生きる道は、その冷静で自分の肉体や自分の生活が滅びてゆくのを見ていることだ」

「自分の生活が壊れてしまえば本当の冷静は来ると思う。水底の岩に落つく木の葉かな……」

 

「あの空を満してゆく影は地球のどの辺の影になるかしら。あすこの雲へゆかないかぎり今日ももう日は見れない」

 

蒼穹

濃い藍色に煙りあがったこの季節の空は、そのとき、見れば見るほどただ闇としか私には感覚出来なかったのである。

 

筧の話

「課せられているのは永遠の退屈だ。生の幻影は絶望と重なっている」

 

冬の蠅

何時まで経っても私の「疲労」は私を解放しなかった。私が都会を想い浮かべるごとに私の「疲労」は絶望に満ちた街々を描き出す。
それは何時になっても変改されない。

 

「定罰のような闇、膚を劈く酷寒」
「そのなかでこそ私の疲労は快く緊張し新しい戦慄を感じることが出来る」

 

ある崖上の感情

「俺の欲望はとうとう俺から分離した。あとはこの部屋に戦慄と恍惚があるばかりだ」

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 
 
 
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