「ツバキ文具店(小川糸)」より名言・台詞をまとめていきます。
ツバキ文具店
夏
文字のひとつひとつに背景があり、成り立ちがある。(雨宮鳩子、以降無記入)
いくら能筆だからってさ、誰も読めないような字を書いたんじゃ、粋を通り越して、野暮ってもんだよ。(先代)
どんなに美しい字を書いても、それが相手に伝わらなくては意味がない。
代書を頼みに来たお客の顔はじろじろ見ないようにと、いつだったか先代に教えられたのだ。
きっと、それぞれ事情を抱えている。
弔事の言葉は、ふだんよりもずっと薄い色の墨でしたためた。
墨の色を薄くするのは、悲しみのあまり硯に涙が落ちて薄まったため、という意味合いである。
「インチキと思うなら、インチキで結構だよ。だけどね、手紙を書きたくても書けない人がいるんだよ。代書屋っていうのは、昔から影武者みたいなもので、決して陽の目は見ない」
「だけど、誰かの幸せの役に立つ、感謝される商売なんだ」(先代)
秋
秋は、誰かに手紙を出したくなる季節なのかもしれない。
同じ文章を綴るのでも、ボールペンと万年筆と筆ペンと毛筆では、印象が全く変わる。
字はその人そのものなのだ。
字を見れば、相手がどういう人かわかる。(先代)
字には、それを書く人の人柄がそのまま出ると思い込んでいた。けれど、それは間違いだった。
字が汚いから心も穢れていると考えるのは、あまりに暴力的すぎる。
文字は体で書くんだよ。(先代)
確かに私は、頭だけで書こうとしていたのかもしれない。
冬
美しく書くだけが代書屋のするべき仕事ではない。
書き文字は、その人と共に年を重ね、老いていく。
文字も、年齢と共に変化する。
叶うなら、私も愛する人からもらった手紙に埋もれるようにして天国へと旅立ちたい。
春
だって、言葉は残るのだ。相手がその手紙を読んでしまったら、もう後戻りはできなくなる。
やっぱり難しくて書けませんでした、なんてプロとして失格である。
一度仕事を引き受けた以上、這いずり回ってでも、逆立ちしてでも、血を吐いてでも、きちんと形にしなくてはならない。
いつだって、自分よりも周りの人の方がたくさん私を見ている。だから、自分はこうだと思っていても、もしかしたら他人は、もっと別の私を見出しているのかもしれない。
悲しい手紙は悲しみの涙で、喜びの手紙はうれし涙で、それぞれ切手を濡らして貼りつける。(先代)
「失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだって」(モリカゲ)
「ありがとうございます。私、もうこの記憶だけで、一生、生きていけるかもしれません」
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。