「そして、バトンは渡された(瀬尾まいこ)」の名言・台詞をまとめていきます。
そして、バトンは渡された
第1章
優子はありきたりで平凡な名前でありながら、いい名前であるのは事実だ。
「優子」の最大の長所は、どんな苗字ともしっくりくるところだ。(森宮優子)
「森宮さん、次に結婚するとしたら、意地悪な人としてくれないかな」(優子)
「いつもいい人に囲まれてるっていうのも、たいへんなんだよね」
「次の母親はちょっとぐらい悪い人のほうが何かと便利かなって」(優子)
私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。
これだけ状況が変化していれば、しんどい思いをしたこともある。(優子)
けれど、どれも耐えられる範囲のもので、
周りが期待するような悲しみや苦しみとはどこか違う気がする。(優子)
「本物の不幸は目も当てられないし、不幸な自分に酔ってなんかいられないよ」
「ただつらくて苦しい時間が続くだけだ」(森宮壮介)
買っておいたプリンを二つとも食べられてしまうなんて、
不幸は身近な日常にこそ潜んでいるのだ。(優子)
アパートに一軒家にマンション。朝ごはんと同じように、
いろんなタイプの家を味わってきたけど、「住めば都」という諺どおりだ。(優子)
どんな住まいにもいいところも悪いところもあって、でも、住んでいるうちしっくりきて、
家なんてどこでもいいと思えてしまえる。(優子)
他人だからよけいに、みんないい親であろうと一生懸命私と接してくれた。
実の家族にはないきれいな距離感がいつも私のそばにある。(優子)
一人になりたいという気持ちを抱いたことがないのは、
幸せなことなのだろうか、それとも不幸なことなのだろうか。(優子)
「本当の親じゃない」という言葉が、相手にどれだけダメージを与えるものかは、
幼いころからわかっていた。(優子)
物心付くまでにいなくなってしまうと、
どんなに重要な人物でも忘れ去られてしまうのだろうか。(優子)
でも、鮮明に母のことを覚えていたとしたら、
どこかにずっと寂しさを抱えていなくてはいけなかった気もする。(優子)
早く、大きく賢くなりたかった。
だけど、小さいままでいるほうがいいこともあるのかもしれない。(優子)
「自分以外の誰かの分を用意する時、家族ができたんだと実感するよな」(森宮)
「女の子なんだから、好かれなくちゃだめだよ」
「お年寄りだろうと子どもだろうと、女だろうと男だろうと」(梨花)
「人に好かれるかどうかで女は幸せになれるかどうかが決まる」(梨花)
「(梨花さん? お母さん?) 呼び方なんてどっちでもいいよ」
「優子ちゃんの好きなように呼んで」(梨花)
「(お母さん?) うん、楽しい。優子ちゃんと一緒にいると」
「とっくの昔に過ぎ去ったはずの、八歳の生活をもう一回体験できるんだもん」(梨花)
「女の子は笑ってれば三割増しにかわいく見えるし」
「どんな相手にでも微笑んでいれば好かれる」(梨花)
「人に好かれるのは大事なことだよ」
「楽しいときは思いっきり、しんどいときもそれなりに笑っておかなきゃ」(梨花)
友達ってそんなに大事なのだろうか。
友達の言うことはなんとしても聞かなくてはいけないのだろうか。(優子)
そんなわけはない。
優先すべきもの、それが何かはわからない。
ただ、友達ではないのは確かだ。(優子)
「(お父さんと梨花さん) そんなの、選べるわけない」(優子)
もしも、優先順位をつけなければいけないのなら、正しい順に並べるべきだ。(優子)
それなら、たとえ自分の選択に悲しくなることがあったとしても、
間違いだったと後悔することはない。(優子)
「たいした話じゃないんだよ」
「親が替わっただけで、私は何も困ってないし」(優子)
私は不幸ではない。梨花さんとの生活だって楽しい。
けれど、どうしたって寂しいし、お父さんが恋しい。(優子)
「しかたないよ」
「娘のためなら自分の好感度なんてどうだっていいんだ」(森宮)
きっと、餃子を食べなくたって、こうやって解決していた。
だいたいのことは、どう動こうと関係なく、ただぼんやりと収束していくのだ。(優子)
塞いでいるときも元気なときも、ごはんを作ってくれる人がいる。
それは、どんな献立よりも力を与えてくれることかもしれない。(優子)
「結婚ぐらいたいしたことじゃないよ」
「洋服買っても鞄買ってもちっとも喜ばない優子ちゃんが、ピアノは自分から欲しいって言うんだもん」(梨花)
「どうしたってかなえなきゃって思うじゃない」(梨花)
私はまだ子どもなのだ。
お父さんと日本で暮らすことがかなわなかったように、ただ受け入れるしかない。(優子)
親が決めたことに従うしかない。
子どもというのはそういうものなのだ。(優子)
「いや、忘れることはないかな。身近な人の死より悲しいものはないからね」
「けれど、時が経てば、こうして新しい生活がやってきてくれる」(泉ヶ原茂雄)
「当然だろ? 子どもが苦労せず暮らせるようにするのって親の義務じゃん」
「そういうこと言われるなんて不本意だけど」(森宮)
決定的な亀裂ではない、小さなほころびが広げた重苦しさ。
それはいつどんな形で消えていくのだろうか。(優子)
それとも、実の親子でない私たちは、
どこかでこの重みを抱えたまま生活していかなくてはいけないのだろうか。(優子)
「親子って、だいたいどこでもけんかしつつも基本は仲がいいものかと思ってた」(優子)
「森宮さんって、すごく大事に育てられてるんだね。そんなことを信じられるなんて」(早瀬賢人)
父親と認める認めないは別にして、
「お父さん」とたやすく呼べるのは幼い時間を一緒に過ごした人だけの気がする。(優子)
「何かを真剣に考えたり、誰かと真剣に付き合ったりしたら、ごたごたするのはつきものよ」
「いつでもなんでも平気だなんて、つまらないでしょう」(向井先生)
「親なんてそれぞれだから比べようないよ」
「愛情の示し方や種類ってみんな違うから」(優子)
「なんていうか、父親なら娘が合唱祭で歌う曲くらい歌えて当然だろう?」(森宮)
大人はいつも子どもの知らないところで、動いている。(優子)
誰が親だといいのか。そんなのわかるわけがない。
ただ、私を受け入れてくれた人と、共に暮らした人と離れたくない。(優子)
同じ経験を何度したって、別れを耐えられるようにはならない。(優子)
どこで暮らそうが誰と暮らそうが一緒だ。
そう投げやりにならないと、生きていけない。(優子)
「受験勉強に終わりなんかないんだよ」
「どんなに容易に入学できる大学だって、最後まで気合入れて勉強しまくらないと」(森宮)
「胃もお腹も尋常じゃなく痛かったんだって」
「ストレスは万病のもとって本当だな」(森宮)
「(緊張?) 当たり前だよ。入試の朝なんだから」
「真剣に勉強したんだから、緊張ぐらいしないとな」(森宮)
自分で使えるお金を自分で稼いで、帰る時間を気にせずどこでも行ける。
社会が厳しいのはわかってはいても、そういう暮らしには憧れる。(優子)
「明日からみんなを待っているのは今までの引き続きにある場所ではなく」
「それぞれの新しい場所です」(向井先生)
「そう思うと、胸を張らずにはいられないでしょう」
「高校最後の最高の舞台が始まります」(向井先生)
「梨花のことは好きだけど、大事なのは優子ちゃんだ」
「俺、人である前に、男である前に、父親だからね」(森宮)
「この離婚届出したら、結婚相手の子どもじゃなく」
「正真正銘の優子ちゃんの父親になれるってことだよな。なんか得した気分」(森宮)
「優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんと二つになったよ」
「自分のと、自分のよりずっと大事な明日が、毎日やってくる」(森宮)
第2章
「大学って恐ろしいよね」
「突然愉快な世界が広がっちゃうんだもん」(史奈)
脇田君にふられても、バイト先の彼氏と別れても寂しくなかったのは、
どこか違っていたからだ。(優子)
本当に好きな人は、こんなにも簡単にはっきりとわかるのだ。(優子)
「美しい音楽かおいしいごはんか」
「迷うとこだけど、どちらが人を幸せにできるかと言ったら、後者になるんじゃないかな」(早瀬)
私だって早瀬君が好きだし、気持ちが変わらない自信はある。
だけど、好きというだけで、結婚していいのだろうか。(優子)
恋人ではなく家族になるのには、それだけではだめな気がする。(優子)
「もしかして嫌なことやつらいことが出てきたら、その時、考えて修正すればいいじゃん」
「俺が音大をやめたみたいに、いつだって変更はきくんだし」(早瀬)
「俺たちは大人なんだから、自分たちで楽しいと思えるように進めばいいだろう」(早瀬)
去ったものに手を伸ばしてもしかたがない。
今より大事にすべき過去など一つもないのだから。(優子)
「恋愛より大事なものはけっこうあるし」
「何か一つ手にしていればむなしさなんて襲ってこない」(森宮)
泣き叫びたくなるような現実が、音に融かされ柔らかくなっていく。
音楽は、ちゃんと力がある。普段は気づかないけど、今はそれがよくわかる。(優子)
「搭乗券買って、スーツケースを預けた後でも」
「行き先が違うと気づいたら、その飛行機には乗らないでしょう」
「早瀬君、今ならまだ降りられるよ」(優子)
離れたって、自分に新しい家族ができたって、子どもに対する思いは少しも薄められない。(梨花)
「俺のやりたいことは音楽とは違うと思い込んでいたけど」
「あと一歩踏みこんでピアノだけの世界に入ってしまうのが怖かっただけなのかもしれない」(早瀬)
「どれだけピザを作ってもハンバーグをこねても、楽にはならなかった」
「結局、俺はピアノから離れられないみたい」(早瀬)
「(結婚式に夢がない?) 誰かに祝福してもらえる場があって」
「新しい暮らしが始まればそれで十分だよ」(優子)
「僕は自分の父のことは親父と呼んでいます」
「だから僕が、お父さんと呼ぶのは、その筋合いがあるのは、お父さんだけです」(早瀬)
「優子ちゃんが来てわかったよ。自分より大事なものがあるのは幸せだし」
「自分のためにはできないことも子どものためならできる」(森宮)
「俺、頭はいいから路頭には迷わないけど、でも、人生はきっともっとつまらなかった」
「よかった。優子ちゃんがやってきてくれて」(森宮)
「マンションだし、半端に都会だし、たった八年しか暮らしていないけど」
「たぶん、優子ちゃんの故郷はここだよ」(森宮)
「いつでも帰っておいで。俺、引っ越さないし、死なないし」
「意地悪な継母とも結婚しないから」(森宮)
本当の親には、躊躇なく「お父さん」と呼べるのだ。
語らなくても理解しあえるものが、共に生きなくても通じ合えるものが、二人にはある。(森宮)
「まさか。最後だからじゃないよ」
「森宮さんだけでしょ。ずっと変わらず父親でいてくれたのは」(優子)
「私が旅立つ場所も、この先戻れる場所も森宮さんのところしかないよ」(優子)
「お父さんやお母さんにパパやママ、どんな呼び名も森宮さんを越えられないよ」(優子)
本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。
自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。(森宮)
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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