「今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ、一条岬)」の名言・台詞まとめ

「今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ、一条岬)」の名言・台詞をまとめていきます。

 

今夜、世界からこの恋が消えても

「貴方とお付き合いしてもいいけど、条件が三つあります」(日野真織)

 

「一つ目、放課後になるまではお互い話しかけないこと」
「二つ目、連絡のやり取りは出来るだけ簡潔にすること」(真織)

 

「最後に三つ目、私のことを本気で好きにならないこと」
「これが守れますか?」(真織)

 

当時の僕には、いくつも分からないことがあった。(神谷透)

 

身近なところでは正しい嘘の告白の仕方だったり、哲学的なところであれば死であったり、
詩的なところでは恋であったりした。(透)

 

そしてまた一つ、分からないことが増える。
自分自身のことだ。(透)

 

知らない彼の、知らない彼女

「じゃあ、明日から恋人同士ってことにしよう」
「よろしくね」(真織)

 

表面的な清潔感よりも、生活に根ざした衛生感に気を配らなければならない。(神谷早苗)

 

(五月病とは)桜も散り、四月の忙(せわ)しない時期を過ぎると人が落ち着ける季節になる。
若葉を眺めたりして時間を過ごせるようになり、少しばかり皆がのんびり屋さんになる。(早苗)

 

五月病。なんとも雅だ。(透)

 

現実というのはアクションを起こさないと、なんらかのリアクションは返してくれない。(透)

 

 

下川くんは少しだけ肥満体でからかわれたりもするが、心根の美しい人間だ。
しかし心というのは目に見えない。(透)

 

教室から人がいなくなるにつれ、吹奏楽部が楽器を鳴らす音や、
運動系の部活動が準備運動をする声が遠くから聞こえ始めてくる。(透)

 

その孤独と連帯の合いの子のような空気感は、嫌いじゃなかった。
四角く切り取られた青い空は、寂寥じみた音楽に似たものを無人の教室へと運んでくる。(透)

 

「透くんは、私と付き合うのは嫌?」(真織)
「嫌……じゃない、かもな」(透)

 

「清潔感は装えるけど、衛生感は装うことが出来ないものだと思ってる」(透)

 

「神谷くん、君から学ぶことは多いけど、結局人は行動しなくちゃだめってことだね」(下川)

 

「転校先では、女の子とたくさん仲良くなったらいいよ」
「新しい環境は、自分を新しくするチャンスでもあるからさ」(透)

 

そのまだ見慣れない顔に、少し救われている自分がいた。
自分に会いにきてくれる女の子がいるというのは、なんだか不思議な気持ちだ。(透)

 

「神谷、無粋なこと言わないの」
「恋人の写真を撮ることに意味なんてないでしょ」(綿矢泉)

 

「今になるまで気付かなかったけど、なんか、神谷って没落した貴族みたいだね」
「妙に上品なところとか特に」(泉)

 

「なんだかお前、勝手に大きくなっちゃったな」(透の父)

 

「本当はいつもじゃないんだけどさ。笑える時にはしっかり笑っておこうと思って」
「人間って笑えない時には、本当どうやっても笑えないから……って」(真織)

 

 

人の心は見えない、覗けない。
日野は屈託なく、楽しそうに笑っていた。(透)

 

「歩くことは誰でも出来るが、一歩を踏み出し続けることには困難が伴う」(下川)

 

形が事実を作るのか、あるいはそんな事実など存在しないのか。
徐々に日野との付き合いによって組み替えられていく自分のことに、困惑していた。(透)

 

お金には力が宿っている。
それは、人を幸せにする力だ。(透)

 

眩しい光に当てられると、その分だけくっきりと影が浮かび、
その影に囚われてしまうことが人間にはある。(透)

 

世界のあらゆる悲劇の何割かは、所詮は自分の内のことなのかもしれない。(透)

 

「不思議だなぁ」
「なんだか、本当に不思議」(真織)

 

「心が急かないっていうか、苦しくない」
「無言でも、ぜんぜん退屈でも窮屈でもない」(真織)

 

「こうやって二人で、静かに時間を積み重ねてきた気すらするよ」(真織)

 

「日野のことを、好きになってもいいかな」(透)
「だめだよ」(真織)

 

「私ね……」
「病気、なんだ。前向性健忘っていってね。夜眠ると忘れちゃうの」
「一日にあったこと、全部」(真織)

 

歩き始めた二人のこと

言われて思い出す。事故、確かにそれはあったことだ。
間違いない昨日のことだ。(真織)

 

世間ではそれはしかし、昨日じゃない。
もう何十日も前のことになっている。(真織)

 

私は本当に、記憶障害になっているということなのか。
正直、ちょっと笑えない。笑いたいけど、笑えない。(真織)

 

 

思いもしなかったが、記憶障害の噂が広まることは危険なことでもあった。
どんなことがあっても、私はそれを覚えていることが出来ない。忘れてしまう。(真織)

 

誰に、どんなことをされても、一日が過ぎれば……。(真織)

 

重要と書かれたそのページを一通り確認していると、息が詰まりそうになった。
開いていた未来が急に閉ざされ、暗闇の中に置き去りにされた気分だ。(真織)

 

途中で読むのを放棄したくなる。
事実の重みに……打ちひしがれそうになる。(真織)

 

普段なら断るだろう。でもその時の私は閃いて、告白に便乗してみようと考えたみたいだ。
こんな状態でも何か新しいことが出来ないか頑張ってみようと。(真織)

 

私はそれまでの一日で、何も積み重ねることが出来ない自分に愕然としていたようだった。
一日が何も出来ずにただ流れていく。そこで思い切って飛び込んだらしい。(真織)

 

どうでもいいことがどうでもいいだけに、そういったことを感じられる余裕が昨日の私たちにもあったのだと知り、今の普通じゃない私を勇気付けてくれる。(真織)

 

「面倒なこと? あぁ、記憶のことだったら気にしないで」
「やれることしか私はやってないし、やりたいことしかやらないから」(泉)

 

私はこうやって、日々を案外普通に過ごせるのかもしれない。
今日のこともまた、手帳や日記に残さなければ……消えてしまうのだろうけど。(真織)

 

記憶が一日しかもたなくても、情報でしか目の前の人のことを知らなくても。(真織)

 

その人が自分を知っていてくれて、その人の中に私とともに過ごした記憶があれば、
こうやって柔らかい眼差しで自分を見てくれる。(真織)

 

 

不思議と、安心してしまう。
無言になっても嫌じゃない。(真織)

 

穏やかな日差しを視界に感じながら、私たちは時間という本を読む。(真織)

 

その中で私は、こんな自分を作った神様について考えた。
神様はきっと私たち人間に無関心だ。(真織)

 

人間の尺度を越えたところにいる神様は、善でも悪でもないだろう。
けれど、優しいのではないかと。ひょっとしたら、神様は……。(真織)

 

ううん、やっぱり……。
神様は意地悪で、残酷だ。(真織)

 

「今日のことも手帳や日記に書かなければ、明日の日野には伝わらないんだよね」(透)

 

「じゃあ、記憶障害について僕に話したことは、書かないでおいてくれ」
「それとあわせて、僕が君を好きになってることも」(透)

 

僕はまた、自分を驚かせることが出来た。
君といるから。君と、いたいから。(透)

 

笑う顔が、下らないことを言うところが、
自分らしく振舞いながらも人を気遣っているところが、好きだった。(透)

 

好きの理由は言い足りない。
初恋に戸惑ってすらいる。(透)

 

この選択は、いつか僕と彼女を苦しめるだろうか。だけどと願う。
どうか叶いますように。届きますように。(透)

 

「うん……分かった。じゃあ、今日のことは書かない」
「忘れるよ」(真織)

 

「その……透くん、今日はありがとう」
「やっぱり君は、すごく優しい人なんだね」(真織)

 

好きとはいったい、どんな意味を持つ気持ちなんだろう。
人はどうして、人を好きになるのだろう。(透)

 

 

時に人を好きになることは辛く、悲しいことかもしれないのに。(透)

 

「君は何も持ってないフリをするけど、大切なものをちゃんと持ってる」
「それは例えば優しさだ」(下川)

 

「あの娘は辛いこととか悲しいことがあると、口数が増えるの」
「そういうの昔から分かるし、たぶん外してない」(泉)

 

彼女を好きでい続ける。傍にあり続ける。
だけどその想いは、彼女に告げることはしない。(透)

 

日々を積み重ねていくことが出来ない。
それはいったい、どれだけの絶望だろう。どれだけの苦しみだろう。(透)

 

自分だけが時間に取り残され、そればかりでなく未来を奪われている。(透)

 

なら僕は、明日の日野が少しでも日常を楽しいものだと感じてくれるように、
彼女が綴る日記を楽しい思い出で一杯にしよう。(透)

 

それを読んで、明日の日野たちが少しでも勇気が出るように。(透)

 

思えば僕はこれまでの人生で、無駄に冷めていて馬鹿なことをしたことがなかった。
つまりは地味に生きてきた。(透)

 

だけどそんな生き方では、日野の日記を楽しくは出来ない。
だからこれからは彼女が望むことならなんでもしようと、無茶でもしようと思えた。(透)

 

今の私の唯一、いいところ。
新しいことはいつも新しい。(真織の日記)

 

”今日の私”は、その動画の当事者ではない。
そこにわずかな寂しさがあり、楽しそうにしている”昨日の私”への、
憧れに似たものがあった。(真織)

 

 

でも、だけど……昨日に負けない喜びや楽しさが、今日も保証されているのかもしれない。
神谷透くんという、見慣れない名前の男の子によって。(真織)

 

忘れていく記憶。
蓄積されない記憶に意味はあるのだろうか。(真織)

 

「今から十年後か、二十年後ってことはないと思うけど、皆が結婚したとするじゃない?」
「私も……家族がちゃんと持てるのかな」(真織)

 

「そっか。まぁでも、私は多分結婚しないというか、出来ないと思うし」
「その時はその時で、楽しくやろうよ」(泉)

 

「まだ受賞するかどうか分からないから、気が早い」
「それに結局は、書き続けることの方が大切よ」(早苗)

 

「芥河賞に選ばれても、その先を追えない人がほとんど」
「私は小説家として生きていこうと決めたから、賞よりも書き続けることの方が大事」(早苗)

 

「私にとって本は、読むものというより、訪れる場所なの」(早苗)

 

「姉さんは、僕が悪いことをした時は叱ってくれた。だから僕も叱る」
「そんな簡単に諦めちゃだめだ。お願いだから。夢だったんでしょ? 小説家になるの」(透)

 

「この家にだって、い続ける必要はないんだ」
「父さんの面倒なら、僕がみるから」(透)

 

「犠牲だなんて、思ってない。姉さんはずっとやりたいことが出来なかったんだ」
「それが今ようやく出来て、僕は嬉しいよ。本当におめでとう、姉さん」(透)

 

「大切にするだけじゃない」
「そういう生き方が出来るように、努力していく」(透)

 

一刻も早く、会いたい人がいる。
笑って話したい人がいる。
一歩一歩が、その人に繋がっている。(透)

 

結局人は、自分の中にあるものが一番強い。(透)

 

放課後は毎日のように彼女と過ごしているけど、決定的に違う。
僕と日野は、出会えていないんだ。(透)

 

この夏はいつも一度

私はもう努力できない。正確に言えば、努力しても学力は上がらない。
ちょっとだけ、泣きたくなってしまう。(真織)

 

手馴れてきた線画の軌跡に、昨日の私たちがいる。(真織)

 

それはこんな状態の私でも何かを続けることが出来る、成し遂げることが出来る、
成長することが出来る──そんな証拠のようで、嬉しくなる。(真織)

 

変な言い方だけど、今朝の私は昨日の私たちに嫉妬していた。(真織)

 

朝、こんなに私が絶望しているのに、
過去の私たちが日記では楽しそうにしていてズルいと感じてしまった。(真織)

 

蓄積されていかない情報と、残って行くかもしれない何か。情緒や想い。
私はひょっとして、彼のことが好きになりかけているんだろうか。(真織)

 

「透くんって、私のこと好きだったりする?」(真織)
「大丈夫だよ。僕は、日野のことを本当に好きになったりしないから」(透)

 

彼女を好きになったことに後悔はない。
この想いは実らなくても……いいんだ。(透)

 

世界の裏には残酷さが潜んでいる。唐突にそう思った。
人が知らないだけのことで、そこかしこで残酷さは息を潜めている。(透)

 

今日一度きりの日野と、昨日から連続している僕が別れる。(透)

 

「逃げていったわけじゃないよ」
「姉さんは、向かっていったんだ」(透)

 

「(父さんは)自分自身にも酔ってるよ」
「妻に先立たれた自分に」(透)

 

「それでも小説にしがみついてる自分に」
「小説家になれるかもしれないっていう、妄想にも」(透)

 

人は前に進もうとするなら、ちゃんと傷付かなければならない。そこから逃げてはいけない。
自分に酔って、傷付くことを誤魔化してはいけない。(透)

 

 

誰だって、きっとそうだ。良い人間になりたくない人間なんて、一人もいない。
父さんと僕は逃げ続けていたけど、悪い人間になったわけじゃないんだ。(透)

 

「(小説は)今の自分から逃げたくて書いていた」
「でもある時からそうじゃなくなった」(早苗)

 

「自分を拡張していくためのものかもしれないって、自分自身の新しい言葉」
「自分自身の新しい考えと出会える場所かもしれないって、そう思うようになったの」(早苗)

 

今日の私は今日限りの私だ。
今日という一日に、悔いは残したくない。(真織)

 

「びっくりだな、本当にこんなことしてるんだ」
「恋人と、夏の花火大会に来てるんだ」(真織)

 

「いや、地に足の着かない心地で実感がなかったんだけど……」
「それを急に自覚して楽しくなってきたというか、なんというか」(真織)

 

たくさん笑った。
ひと夏の想い出を、一日に込めた。(真織)

 

記憶と同じように、今のこの感情も消え去ってしまうんだろうか。
根付くことはないんだろうか。(真織)

 

あくまでそれは情報として頭では処理され、情緒の動きが蓄積されることはないんだろうか。
願わくば、残り続けるものがありますように。(真織)

 

「忘れたく……ないよ」(真織)
「忘れないよ、僕はこの日のことを」(透)

 

「わ、私だって。忘れない。忘れるはずないのに……変だな、楽し過ぎちゃったのかな」
「涙が、とまらないや」(真織)

 

「忘れるのは、人の常だよ。でも大丈夫。どんな記憶も、完全に消えるわけじゃないから」
「僕はそう、信じてるから」(透)

 

ひょっとして彼は、私の記憶障害のことを知っているんじゃないのか。
知っていて、気付いていて、あえて気付かないフリをしているんじゃないか。(真織)

 

もし……仮にそうだとしたら、私はもう、何も恐れることはないのかもしれない。(真織)

 

「どこにも行かないでね、透くん」(真織)
「大丈夫だよ。僕はずっと、日野のすぐ傍にいるから」(透)

 

空白の白

(落ち込む真織に)私が出来るのはトボけることと、元気出しなよと微笑むこと。
そして放課後に、甘いものを二人で沢山食べることくらいだった。(泉)

 

一時期私は人間不信に陥った。でもそれを誰にも話せない。相談できない。
自分の傷は自分で癒やすしかない。私は孤独な動物だった。(泉)

 

好きは、感覚に根ざした言葉だ。
意志で支えたり理論付けたりするものじゃない。(泉)

 

誰かを好きになった時、後からその理由をなんとか言葉にすることは出来ても、
それは好きという直感性からは遠く隔たっている。(泉)

 

◯◯だから好き、というようには、人間はならないのだ。
裏付けのない、本当の意味で感覚に根ざした感情だ。(泉)

 

「本当に無理なことは、しないし出来ないよ」(透)

 

「でも、少しの無理をしてでも出来ることがあるなら」
「少しの無理をしてでもしたいことがあるなら、それは幸せなことだと思ってる」(透)

 

「良いか悪いかを問うものじゃないと、私は思うの」(早苗)

 

「世界は言葉で出来ている」
「そして人は言葉に縋ろうとする」(早苗)

 

「良いと思えば、どんなことでも良いことになる」
「悪いと思えば、どんなことでも悪いことになる」(早苗)

 

いや、やめよう。そうやって自分の行動の正当性を、真織の状態に押し付けるのはよそう。
結局はお姉さんが言ったように、自分がしたいか、したくないか、それだけだ。(泉)

 

《障害が治っても、神谷透くんのことを覚えていてね》
《大切なものは、大切な場所にちゃんとあるから》(真織の張り紙の裏)

 

「なんだろう……何か、とっても大切なことを忘れている気がするんだけどさ」
「思い出せないや。ま、当たり前か。毎日、その日の記憶がなくなっちゃうんだもんね」(真織)

 

知らない彼女の、知らない彼

ただ、そうやって全てを忘れてしまっていた自分に、愕然とした。
大切だった人のことを簡単に忘れてしまっている自分に、声を失った。(真織)

 

でも……ひょっとしたら体は、心は覚えていたのかもしれない。
心臓の鼓動が私に、必死に呼びかけていたのかもしれない。(真織)

 

「いいのよ。忘れたままで」
「そうやって人は、生きていくの」(早苗)

 

「どんな傷も、一度付いたからには完全に消えることはない。傷とは、記憶でもあるから」
「でも、痛みは続くわけじゃない。そうやって、生きていくんだと思う」(早苗)

 

囚われたままでは、歩けない。
だけど私はいつか、悲しくなくなることが、悲しかった。(真織)

 

「自分のためにも思い出したいんです」
「大切なものは全部、自分の中にあるはずだから」(真織)

 

私の今は、彼に作られた未来によって出来ている。(真織)

 

「私は、何も覚えてない。でもね、生きるよ」
「それでいつか、全部、思い出してみせる」(真織)

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 
 
 
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