「金閣寺(三島由紀夫)」の名言まとめました

「金閣寺(三島由紀夫)」の名言をまとめていきます。

金閣寺

本作においては言葉のみをピックアップし、説明や解釈は書かない方針とします。
何か無意味というか、蛇足に感じましたので。

第一章

この世のどこかに、まだ私自身の知らない使命が私を待っているような気がしていた。

暴君や大芸術家たらんとする夢は夢のままで、
実際に着手し、何かをやり遂げようという気持がまるでなかった。

孤独はどんどん肥った、まるで豚のように。

裏切ることによって、とうとう彼女は、俺をも受け容れたんだ。
彼女は今こそ俺のものなんだ。

私にはすべてが遠い事件だとしか思えなかった。
鈍感な人たちは、血が流れなければ狼狽しない。
が、血の流れたときは、悲劇は終ってしまったあとなのである。

どうあっても金閣は美しくなければならなかった。
そこですべては、金閣そのものの美しさよりも、
金閣の美を想像しうる私の心の能力に賭けられた。

人がこの建築にどんな言葉で語りかけても、
美しい金閣は、無言で繊細な構造をあらわにして、周囲の闇に耐えていなければならぬ。

私が人生で最初にぶつかった難問は、美ということだったと言っても過言ではない。

第二章

たえず私の顔の半面にそそぎかけるあの厳しい外光。輝かしいあの侮蔑。

あなたが地上で比べるものがないほど美しいなら、
何故それほど美しいのか、何故美しくあらねばならないのかを語ってくれ。

言ってから、私は人に疑問を起こさせるのがどうして好きなのかと反省した。
私自身にとってはそれは疑問でも何でもない。自明の事柄である。

私はこういう顔にぶつかる。大切な秘密の告白の場合も、美の上ずった感動を訴える場合も、
自分の内臓をとりだしてみせるような場合も、私のぶつかるのはこういう顔だ。

波紋は水面の藻を押してひろがり、忽ちにして、美しい精緻な建築は崩れ去った。

美ということだけを思いつめると、
人間はこの世で最も暗黒な思想にしらずしらずぶつかるのである。

第三章

……そうだ。まわりの山々の蝉の声にも、終戦の日に、私はこの呪詛のような永遠を聴いた。
それが私を金いろの壁土に塗りこめてしまっていた。

私にとって、敗戦が何であったかを言っておかなくてはならない。
それは解放ではなかった。断じて解放ではなかった。

世間の人たちが、生活と行動で悪を味わうなら、
私は内界の悪に、できるだけ深く沈んでやろう。

どうぞわが心の邪悪が、繁殖し、無数に殖え、きらめきを放って、
この目の前のおびただしい灯と、ひとつひとつ照応を保ちますように!
それを包む私の心の暗黒が、この無数の灯を包む夜の暗黒と等しくなりますように!

第四章

言ううちに私の胸には喜びが兆し、喜びは次第に鞏固な根を張った。
「目撃者はないのだ。証人はないのだ」という喜び……。

たとえ些細な悪にもせよ、悪を犯したという明瞭な意識は、いつのまにか私に備わった。
勲章のように、それは私の胸の内側にかかっていた。

そうだ。俺は自分の存在の条件について恥じていた。
その条件と和解して、仲良く暮すことは敗北だと思った。

俺は絶対に女から愛されないことを信じていた。

自分をみじめに見せないことは、何より他人の魂のために重要だ。
だから俺はさらりと言ってのけた、「愛していない」と。

鏡を借りなければ自分が見えないと人は思うだろうが、
不具というものは、いつも鼻先につきつけられている鏡なのだ。

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第五章

私はむしろ目の前の娘から、欲望の対象と考えることから遁れようとしていた。
これを人生と考えるべきなのだ。前進し獲得するための一つの関門と考えるべきなのだ。

ふしぎなことだ。私は虚無とさえ、連帯感を持っていなかった。

第六章

孤独がはじまると、それに私はたやすく馴れ、誰ともほとんど口をきかぬ生活は、
私にとってもっとも努力の要らぬものだということが、改めてわかった。
生への焦燥も私から去った。死んだ毎日は快かった。

かくて余人は知らず私にとっては、明晰さこそ私の自己なのであり、
その逆、つまり私が明晰な自己の持ち主だというのではなかった。

私には美は遅く来る。
人よりも遅く、人が美と官能とを同時に見出すところよりも、はるかに後から来る。

又もや私は人生から隔てられた!

いつかきっとお前を支配してやる。
二度と私の邪魔をしに来ないように、いつかは必ずお前をわがものにしてやるぞ。

第七章

女と私との間、人生と私との間に金閣が立ちあらわれる。
すると私の摑もうとして手をふれるものは忽ち灰になり、
展望は砂漠と化してしまうのであった。

それにしても、悪は可能であろうか?

金閣は無力じゃない。決して無力じゃない。しかし凡ての無力の根源なんだ。

私は凡庸さというものが年齢を重ねても、少しも衰えぬのに改めて感心した。

由良に何があるのか?
どんな明証にぶつかるために、私はこうしてせっせと歩いているのか?
あそこには裏日本の海と、人のいない浜とがあるだけではないか。

それは正しく裏日本の海だった!
私のあらゆる不幸と暗い思想の源泉、私のあらゆる醜さと力との源泉だった。

第八章

私の行為はかくて付喪神のわざわいに人々の目をひらき、
このわざわいから彼らを救うことになろう。
私はこの行為によって、金閣の存在する世界を、
金閣の存在しない世界へ押しめぐらすことになろう。
世界の意味は確実に変わるだろう。

金閣が焼けたら……、金閣が焼けたら、こいつらの世界は変貌し、
生活の金科玉条はくつがえされ、列車時刻表は混乱し、こいつらの法律は無効になるだろう。

母を醜くしているのは、……それは希望だった。

世界を変貌させるのは決して認識なんかじゃない。
世界を変貌させるのは行為なんだ。それだけしかない。

美は……美的なものはもう僕にとっては怨敵なんだ。

第十章

死の空は明るくて、生の空と同じように思われた。そして私は暗い考えを忘れた。
この世には苦痛は存在しないのだ。

私はこの二つのあいだに、私の生涯を呑み込むに足る広い淵が口をあけていようとは、
夢想もしていなかった。

そうした予兆は、虚無の兆だったのである。
虚無がこの美の構造だったのだ。

徒爾であるから、私はやるべきであった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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