「六韜」の名言まとめ

「六韜(守屋 洋、守屋 淳)」より名言をまとめていきます。

中国・武経七書の一つ「六韜」
周の文王・武王と軍師の太公望・呂尚の対話を中心としてまとめられている。
実際には長文のため管理人にて部分抜粋、難しい漢字も部分的にカナに変えています。

 

文韜の巻

文師篇

天下は一人の天下に非ず、天下の天下なり。
天下の利を同じくする者は、則ち天下を得、天下の利を、ほしいままにする者は、則ち天下を失う。

天下は君主のものではなく、君主を含む万民のものと定義している。
そのため利益を共有すれば天下を取り、独占すれば天下を失ってしまう。
企業で考えれば社員と共有するのはもちろん、お客への還元(セールでは無い)も含まれる。
これが出来ている企業は、どれほどあるだろうか?

 

盈虚篇

天下の鰥寡孤独を存養し、禍亡の家を賑贍す。
その自ら奉ずるや甚だ薄く、その賦役や甚だ寡し。

家族を失った者や不幸があった家に救いの手を差し伸べる。
自らは質素倹約に務め、税金や賦役をなるべく少なくする。
他にもいろいろあるが、賢君の姿勢を示している。
やはりここで注目するのは、本人が質素倹約に務める姿勢だろう。
必要以上に取っている人の意見は、例え正しくても反発したくなる。
これは政治家だけに限らず、メディアに出ている人も同様に感じる。

 

国務篇

賞罰は身に加うるが如く、賦斂は己より取るが如し。
これ民を愛するの道なり。

賞罰も税金も、自分を相手にするようにしないといけない。
しかし現実はどうだろうか?
自分に甘く、他人に厳しく。
税金は自分は払わないようにし、取れる所からは取ろうとする。
改めて書いてみると、よく暴動が起きないものだ。
みんなそれなりに利益を享受しているのか?

 

大礼篇

妄りに許すなかれ、逆えて拒ぐなかれ。
これを許さば則ち守りを失い、これを拒がば則ち閉塞す。

進言の全てを聞いていては、自分を見失ってしまう。
しかし全てを拒否してしまうと、自分を諌める言葉を閉ざしてしまう。
バランスが大切なのだが、どうしても耳障りのよいことを聞きたくなるもの。
そして立場が上になると、そのような方向性も強くなる。
自分にとって大切なことは何なのかを考えたい。

 

名伝篇

善を見て怠り、時至りて疑い、非を知りて処る。
この三者は、道の止まる所なり。

良いと思っても行わず、好機が来ても決断できず、悪いと思っても改めない。
このようなことでは、道が廃れると話している。
個人レベルでも同じこと。
した方がいいのを知ってても、してる人は稀である。
チャンスと思っても、動ける人は稀である。
ダメなのを知ってても、止めれる人は稀である。
本当に人はどうしようも無いが、だからこそ人らしい?

 

守土篇

人君は必ず事に富に従う。
富まざれば以って仁を為すなし。

ここでは君主は富まないといけないと話しているが、以前に質素倹約も話している。
しかしこれは矛盾しない。
利益を上げるのも、お金を貯めるのも間違っていない。
大切なのは使い方であり、お金が無ければ助けることも出来ない。
お金があるからといって散財してる人の結末は、似ている気がするのは自分だけ?

 

守国篇

故に天下治まれば、仁聖蔵れ、天下乱るれば、仁聖昌なり。

君主は平和であれば隠れており、乱れてくれば姿を現し救済に当たる。
順調に行っている時は、むやみに口を出さない方がいい。
しかし不調になっていれば、手を差し伸べないといけない。
ただ必要なのは手を差し伸べることであり、口だけ出すことでは無い点は注意が必要。

 

挙賢篇

君、世俗の誉むる所の者を以って賢となし、世俗の毀る所の者を以って不肖となせば、則ち党多き者は進み、党少き者は退く。

周りの多数決を採用すれば、多数の勢力ばかりになることを諌めている。
これはある意味、非常に危険な思想である。
簡単に言えば、民主主義を否定する発言にもなるからだ。
しかし残念ながら事実でもある。
国レベルではともかく、企業レベルで考えると分かりやすい。
優秀なワンマン社長は、多くの意見を押しのけて自分の考えを通すことが出来る。
もちろん、その結果がどうなるかは誰にも分からない。

 

賞罰篇

およそ賞を用うるには信を貴び、罰を用うるには必を貴ぶ。
賞信罰必、耳目の聞見する所に於いてすれば、則ち聞見せざる所の者も、陰に化せざるはなし。

賞は約束どおりに、罰は法に合わせて行うこと。
そうすれば遠くにいる者にも影響を与える。
信賞必罰は口で言うのは簡単だが、これこそが一番難しい。
褒めればいいものではないし、怒ってばかりではどうしようもない。
しかしこれが出来なければ、何もなしえないだろう。
またここでは「賞信罰必」や「聞見」など、通常の日本語とは反対で表現している。
正しいのかもしれないが、非常にややこしい。

 

武韜の巻

三疑篇

これに因り謀を慎み財を用う。
それ強を攻むるには、必ずこれを養いて強からしめ、これを益して張らしむ。
太だ強ければ必ず折れ、太だ張れば必ず欠く。
強を攻むるには強を以ってし、親を離すには親を以ってし、衆を散ずるには衆を以ってす。
およそ謀の道は、周密を宝となす。

謀をする時には慎重に秘密裏に行う必要があり、また多額のお金を使うこと。
また強い敵を弱くするには、まず強くすることを訴えている。
この考え方は秀逸である。
もちろん強くすると言っても見かけだけの話であり、奢らせるのが目的になる。
親しくなりすぎれば少しのことが気になるし、多ければ制御が困難になる。
するのはいいが、こんなことされたらたまらない。

 

竜韜の巻

立将篇

軍中の事は君命を聞かず、皆将より出づ。

出陣してしまえば主君の命令より、将軍の命令が上になるべきことを示唆している。
遠方の机上から命令をされていては、勝てるものも勝てなくなる。
もしそれが必要なら、そもそも将軍の人選が間違えている。
それほど責任者は慎重に決めねばならず、また決めたら信じないといけない。

 

励軍篇

将、士卒と寒暑、労苦、饑飽を共にす。
故に三軍の衆、鼓声を聞けば則ち喜び、金声を聞けば則ち怒り、高城深池、矢石繁く下るも、士先を争いて登り、白刃始めて合うも、士先を争いて赴く。

将軍は兵と同じような暑さ寒さ、苦労、食事などを共にする必要がある。
そうして始めて兵は将軍と一緒に戦ってくれる。
いつの時代も最後は人間性になる。
しかし最近はこれを否定する傾向を感じている。
個人主義もいいが、日本人に合っているかは判断が難しい。

 

軍勢篇

故に善く戦う者は、軍を張るを待たず。
善く患を除く者は、いまだ生ぜざるに理む。
善く敵に勝つ者は、形なきに勝つ。
上戦は与に戦うなし。

優秀な者は事前に有利にし、問題が起こる前に解決し、戦う前には勝利条件を整える。
そこまでして戦わずに勝利するのが理想となる。
逆に言えば、戦うまでは何も準備をしないし、問題は起こってから対処する。
戦いは始まってから考えるのは下策となる。
多くの人は結局、後者を選んでいる。

 

兵徴篇

勝負の徴は、精神先ず見わる。明将はこれを察す。
その効、人に在り。

敵軍の状態を知る方法として、人を見ることを重視している。
その精神状態によって、相手の強弱を判断できると考えている。
伸びている所は活気があるし、停滞している所はどんよりとしている。
しかし騒がしいだけだとすれば、単に統率が取れていないだけになる。
その判断こそが責任者の資質となる。

 

虎韜の巻

必出篇

勇闘すれば則ち生き、勇ならざれば則ち死せん。

絶体絶命の時は、全力で戦い抜く以外に生き抜くことが出来ない。
もちろんこれは最悪の場合であり、こうならない努力こそが大切である。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

アマゾンリンク
全訳「武経七書」3六韜・三略

 

→戦略・兵法書のインデックス

[mobile-only] [/mobile-only]