「黒蜥蜴(江戸川乱歩)」の名言・台詞をまとめていきます。
黒蜥蜴
暗黒街の女王
美しい女の左の腕に、一匹の真黒に見える蜥蜴が這っていた。
真に迫った一匹の蜥蜴の入れ墨であった。
「あんた、逃げおおせると思っているの。駄目よ。横浜か神戸の波止場でマゴマゴしているうちに、捕まってしまうのが落ちだわ」
「こんな場合に、あわを食って逃げ出すなんて愚の骨頂よ」(黒蜥蜴)
「あんた全く安全になれる方法があるわ」
「あんたが死んでしまうのよ。雨宮潤一という人間を殺してしまうのよ」(黒蜥蜴)
地獄風景
「ね、分かったでしょう。どう? あたしの智恵は。魔法使でしょう」
「だって、人間一人この世から抹殺してしまおうというんだもの、思い切った魔法でも使わなきゃ、出来っこないわ」(黒蜥蜴)
ホテルの客
「あんたは死んでしまったのよ。それがどういう事だか分る? つまり、今ここにいるあんたという新しい人間は、あたしが産んであげたも同じことよ」
「だから、あんたは、あたしのどんな命令にだってそむくこと出来ないのよ」(黒蜥蜴)
「(もしそむいたら)殺してしまうまでよ。あんた、あたしが恐ろしい魔法使ってこと、知り過ぎる程知ってるわね」(黒蜥蜴)
「あたしの目的はお金ではないの。この世の美しいものという美しいものを、すっかり集めてて見たいのがあたしの念願なのよ」(黒蜥蜴)
「あたしはね、潤ちゃん、不意打ちなんて卑怯な真似はしたくないのよ。だから、いつだって、予告なしに泥棒したことはないわ」
「ちゃんと予告をして、先方に十分警戒させて置いて、対等に戦うのでなくっちゃ、面白くない。物をとるという事よりも、その戦いに値打ちがあるんだもの」(黒蜥蜴)
女魔術師
「大丈夫よ。悪事というのはね、コソコソしないで、思い切って大っぴらにやッつけるのが、一番安全なんだわ」(黒蜥蜴)
「そこから先は、秘中の秘よ。子分はそんなこと聞くもんじゃなくってよ。ただお頭の命令に、黙って従ってればいいのよ」(黒蜥蜴)
女賊と名探偵
「この世の現実は、そんなに小説的なものじゃありませんよ」(明智小五郎)
「御安心下さい。僕がついているからには、お嬢さんは安全です。どんな兇賊でも、僕の目をかすめることは、全く不可能です」(明智)
「探偵という職業をお賭けになりませんこと? そうすれば、わたくし、持っている限りの宝石類を、全部賭けてもいいと思いますわ」(黒蜥蜴)
「面白いですね。つまり、僕が負けたら廃業してしまえとおっしゃるのでしょう」
「女のあなたが、命から二番目の宝石をすっかり投げ出していらっしゃるのに、男の僕たるもの、職業ぐらいは何でもない事ですね」(明智)
暗闇の騎士
「僕は楽しいのですよ。探偵稼業でもしていなければ、こういう劇的な瞬間が、人生に幾度味えるでしょう」(明智)
「あたしだって、あなた以上に楽しうございますのよ。女は賭けには目のないものですわ」(黒蜥蜴)
名探偵の哄笑
何と云うズバ抜けた欺瞞だろう。余りにも人を喰った子供だましのトリックではないか。だが、子供だましのトリックであったからこそ、大人達がまんまと一杯喰わされたのだ。
「警察に報告するのは、そんなに急ぐことはありません。それよりも、少し僕に考えさせて下さい。僕は大変な思い違いをしていたのです」(明智)
「そうではないのです。僕がうなだれていたのは、あなたをお気の毒に思ったからです」
「それはね、……賭けに負けたのは、僕ではなく、奥さん、あなただからです」(明智)
「これが今晩のお芝居の大詰って訳かい。マア、名探偵って云われるだけのことはあったあね。今度はどうやらボクの負けだね。負けということにして置こうよ」(黒蜥蜴)
「明智さん、スリの手口も御研究にならなくっちゃ駄目だわ。あなたの大切なもの、ここにあるのよ」(黒蜥蜴)
怪老人
「僕は負けました。あれ程の奴が僕のブラック・リストに載っていなかったのは不思議です。多寡を括っていたのがいけなかったのです。併しもうこの失敗は繰返しません」(明智)
「今僕は僕の名にかけて誓います。仮令あいつが再びお嬢さんを狙う様なことがあっても、今度こそは決して負けません。僕が生きている間は、お嬢さんは安全です。これだけを、ハッキリ申上げて置きます」(明智)
魔術師の怪技
「実に失策でした。僕は又しても油断しすぎた様です」(明智)
「人間椅子。……あんな小説の空想が、果して実行出来るのだろうか」(明智)
「あいつの恐ろしさは、こういうズバ抜けた、考え方によっては馬鹿馬鹿しいトリックを、平然と実行する肝っ玉にあるのです。今度の着想などは、全くお伽噺ですよ」(明智)
「僕はいつかKホテルでお約束したことを忘れはしません。御安心下さい。生命にかけても、お嬢さんを守ります。決して取返しのつかぬ様なことはしない積りです」
「どうか僕を信じて下さい。……僕の顔色を見て下さい。蒼ざめてますか。心配らしい影でも見えますか。そうではないでしょう。僕は平気なのです。この通り平気なのです」(明智)
エジプトの星
「決して御心配なさることはありません。僕はハッキリお約束して置きます」
「お嬢さんもその宝石も、必ず僕の手で取戻してお目にかけますよ。ただちょっとの間、あいつに糠喜びをさせてやるだけです」(明智)
水葬礼
「化かすつもりで化かされていた君の様子は、少しばかり愉快でないこともなかったね」(明智)
恐怖美術館
「これあたしの美術館なのよ。イイエ、美術館のホンの入口なのよ」
「十何年の間、命をかけて、智慧という智慧を絞り、危険という危険を冒して、蒐集したんだもの、世界中の、どんな高貴のお方の宝石蔵にだって、これ程の数は集まっていないと思うわ」(黒蜥蜴)
人形異変
「いいのよ。あたしの気紛れは今に始まったことじゃない」(黒蜥蜴)
再び人形異変
「髭なんかとらなくっても、君はもうちゃんと知っているのでしょう。知っているけれど、僕の名を云い当てるのが怖いのでしょう」
「それの証拠に、君の顔色はまるで幽霊みたいに蒼ざめているじゃありませんか」(明智)
「そうです。君はそれを、ずっと前から気づいていたではありませんか。気づきながら、君の臆病がその考えを無理に押えつけていたのです」(明智)
蠢く黒蜥蜴
「今さら何を云っても仕方がない。安らかに眠り給え。君の為には、僕は命がけの目にもあわされた。併し、僕の職業にとっては、それが貴重な体験にもなったのだよ」
「もう君を憎んでやしない。可哀相にさえ思っている」(明智)
「あたし、あなたに負けましたわ。なにもかも」
「あたし、あなたの腕に抱かれていますのね。……嬉しいわ。……あたし、こんな仕合せな死に方が出来ようとは、想像もしていませんでしたわ」(黒蜥蜴)
最後まで読んで頂きありがとうございました。