「日本沈没(小松左京)」の名言・台詞をまとめていきます。
日本沈没 上巻
第一章 日本海溝
「大したことはないがね。──おれにいわせれば君──どうも、最近の日本は、身ぶるいしてるみたいだぜ」(郷六郎)
まったく、自然というやつはなんて奇妙なんだろう? 人間なんて、ほとんど、何も実質的に、わかっちゃいないんだ。(小野寺俊夫)
「もっとも一千年後に、人類がいればの話だがね」(田所雄介、博士)
「君はどう思うか知らんが──地震が起こった原因さえ、ほんとうのところ、まだわかっていないんだ」(幸長信彦、学者)
「想像するのはロマンチックだが、学者は証明できないことを、想像で語っちゃいけないんだ」(幸長)
「どこかでバランスをとってるんだろうが、皆目見当がつかん。──何もわからん!」(田所)
日本海溝!
あの光と風にみちた、洋々として平坦な太平洋の底七千メートルの深さに長々と横たわる、世界最大の海溝。
第二章 東京
一つ一つを見れば、これも大したことはないのだった。
台風国であり、地震国であり、大雨も降れば大雪も降るという、この小さな、ごたごたした国では、自然災害との闘いは、伝統的に政治の重要な部分に組みこまれていた。
「世間がさわぐぐらい、どうってことはないさ。おさまれば、またすぐ忘れる」(田所)
「何が起こるか、だと? わからん。皆目わからん。だからこそ調べるんだ」(田所)
「(田所博士は)天才的猪突猛進型だ。──だから、国内の学界では、とても受けいれられず、海外でのほうが、高く評価されている」(幸長)
「彼は”自然”を知っとる。海を知っとるし、彼の心は、大いなる”自然”にむかっている」
「そういう男は、秘密だの陰謀だの出世だのごますりだの、そういった人間界のごたごたは、わかっていても、興味を持たんものだ」(田所)
「それが役人だ! 絶対に人間を信用せん」
「つねに危険を避けることしか考えていないから、一回も危険に賭ける冒険をやったことがないから、本当の将来というものが見えてこない」(田所)
「役所的発想は、つねに選択において冒険を絶対に避け、選択のバランスをとり、現在のバランス・シートをゼロにしながら発展してゆく」
「彼らはつまり、組織に最も適応した人種ですよ」(幸長)
「日本など──こんな国なんか、わしはどうでもいいんだ」
「わしには地球がある」(田所)
「むずかしい問題ですな。──ないとはいえません。しかし、あるとも確信できません」(山城教授)
「今まで、過去の観測例の中に、一つも見られなかった、まったくわれわれの知らなかったような現象が、未来に起こらないとは、いえませんぞ」(田所)
「だが、日本が壊滅する場合も想定しておいたほうが、いいかもしれん。──場合によっては、日本がなくなってしまうことも……」(田所)
「おかしいとお思いになるかもしれませんが、科学者──とくに自然科学者にとって、最も大切なものは、鋭く、大きなカンなのです」
第三章 政府
日本にとって、重大な意味をもつものであったら──最悪の事態を予想して、そこからすべてを出発させなくてはならない!
今、たのしんでおくんだ。──明日は、……ないかもしれない。(小野寺)
「現世人類が生まれてからまだ数万年しかたっておらん。過去何千年から何億年の間に、どんな突拍子もないことが起こったか──経験的には誰も知らんのだ」(田所)
第四章 日本列島
地震──それは、突然大地の底からおそいかかり、一挙に下のほうから心臓をつかむ冷たい恐怖であり、一瞬にして人々の理性も思考力も麻痺させてしまう。
「また、二、三年もすれば復活するんじゃないかな。……人間というのはしぶといもんだよ」(警官)
「今はまだ虚脱状態だからな。──でも、それを脱すると……もうそろそろ、いろんな社会不安が発生するころだ」
「おれの想像では、最悪の場合大部分死ぬな。なぜなら──ほとんどの人間が、そんなこと信じられないだろうからだ」(中田一成、学者)
「予想が当たれば──地獄だぜ。地獄で予言的中をいばったって、何の意味がある」(中田)
下巻
第五章 沈み行く国
あらゆる「決断」をいっさいゆだねられるコンピューターが出現したら、どんなに楽だろう。(首相)
自分は少しも「英雄」ではない。……「英雄」なぞにはなりたくもない。ただ、このさい適当な人物が見つからないから、その「役割」をひきうけざるを得ないのにすぎない。(首相)
「私は──いや、日本は、今、あなたに向かって、あなたのお国に向かって、世界に向かって、ひざまずき、助けてほしい、と懇願しているのです」(野崎八郎太)
「半分以上……助からんかもしれませんね。むごい決意をしなきゃならんでしょう」(高官)
「一つは──日本民族の一部が、どこかに新しい国をつくる場合のために、もう一つは、各地に分散し、どこかの国に帰化してしまう場合のために、もう一つは……世界のどこにも容れられない人々のために……」(福原教授)
「つまり──何もせんほうがいい、という考え方です。このまま……何の手も打たないほうが……」(福原)
春はもうじきくるだろう。だが、この夏はわからない。秋はさらに不確実であり、来年というものは、もう君たちの踏みしめている大地の上には存在しないかもしれないのだ。(小野寺)
「順序だの、モデルの検討などいっておられん。──このさい、最悪のケースを考える以外にない」(中田)
「そのご質問はないでしょう。私たちの立場として、それは不可能だ、とは答えられますまい」(首相)
「日本沈没によって他国に大きな被害をできるだけあたえないように頑張るべきです。──そのことは、たとえ一時辛くても、遠からぬ将来、何倍にもなってかえってくる」(日銀総裁)
とりあえず、家族は一つにかたまらなければならない。どうすればいいか考えるのは、それからだ。
人々は、まだ日本という国の社会と政府を信じていた。いや信じようとつとめ、信じたいとねがっていた。
「いずれにしても、今は、日本を恐れている時ではない。日本を救わねばならない時です」(ンバヨ委員長)
第六章 日本沈没
「ある地点の変動についての百パーセント正確な予報なんかできませんよ。──金輪際できません。そんなものを求めるのは、こういう現象についての根本的な理解を欠くからです」(中田)
「そういう時代さ……。おれたちだって──昔、日本が泰平の時は、そうだったんだ。高みの見物ってやつでな」(中田)
エピローグ 竜の死
それは全世界の「人類」にとって、残酷でいたましいが、しかし興奮をさそう大スペクタクルだった。
正確な意味で、真にこの問題に必死にとりくんでいるのは、悲劇の当事者たちだけだった。
「ただ、生きるということは、これで辛いことだぞ……」(渡老人)
「日本人は……若い国民じゃな……。あんたは自分が子供っぽいといったが……日本人全体がな……これまで、幸せな幼児だったのじゃな」(渡)
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