「斜陽(太宰治)」の名言・台詞をまとめていきます。
斜陽
一
「爵位があるから、貴族だというわけにはいかないんだぜ」(直治)
「おむすびが、どうしておいしいのだか、知っていますか」
「あれはね、人間の指で握りしめて作るからですよ」(母)
悪漢は長生きする。
綺麗なひとは早く死ぬ。(かず子)
ああ、お金が無くなるという事は、
なんというおそろしい、みじめな、救いの無い地獄だろう。(かず子)
もう私たちは、何も要らない。
私たちの人生は、西片町のお家を出た時に、もう終ったのだと思った。(かず子)
「普通の病気じゃないんです」(母)
「神さまが私をいちどお殺しになって、それから昨日までの私と違う私にして」
「よみがえらせて下さったのだわ」(母)
ああ、何も一つも包みかくさず、はっきり書きたい。(かず子)
この山荘の安穏は、全部いつわりの見せかけに過ぎないと、
私はひそかに思う時さえあるのだ。(かず子)
二
いまはもう、宮様も華族もあったものではないけれども、
しかし、どうせほろびるものなら、思い切って華麗にほろびたい。(かず子)
「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら」(母)
「他の生き物には絶対に無くて、人間にだけあるもの」
「それはね、ひめごと、というものよ」(かず子)
三
どうしても、もう、とても、生きておられないような心細さ。
これが、あの、不安、とかいう感情なのであろうか。(かず子)
不良でない人間があるだろうか。(直治)
人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。
この頃の、指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ!(直治)
人から尊敬されようと思わぬ人たちと遊びたい。
けれども、そんないい人たちは、僕と遊んでくれやしない。(直治)
いま思うと、私も夫も、若かったのだ。(かず子)
私は、恋も知らなかった。
愛、さえ、わからなかった。(かず子)
四
私に、リアリズムは、ありません。
こんな具合いで、生きて行けるのかしら、と思ったら、全身に寒気を感じました。(かず子)
私には、常識という事が、わからないんです。(かず子)
待つ。ああ、人間の生活には、喜んだり怒ったり悲しんだり憎んだり、
いろいろの感情があるけれども、(かず子)
けれどもそれは人間の生活のほんの1パーセントを占めているだけの感情で、
あとの99パーセントは、ただ待って暮らしているのではないでしょうか。(かず子)
五
私は自分の嘘を信じようと思った。
命取りなどというおそろしい言葉は、忘れようと思った。(かず子)
私は確信したい。
人間は恋と革命のために生れて来たのだ。(かず子)
死んで行くひとは美しい。
生きるという事。
生き残るという事。(かず子)
それは、たいへん醜くて、血の匂いのする、きたならしい事のような気もする。(かず子)
六
私には、是非とも、戦いとらなければならぬものがあった。
新しい論理。(かず子)
いいえ、そう言っても偽善めく。
恋。それだけだ。(かず子)
敵。私はそう思わないけれども、しかし、この奥さまとお子さんは、
いつかは私を敵と思って憎む事があるに違いないのだ。(かず子)
ああ、何かこの人たちは、間違っている。(かず子)
しかし、この人たちも、私の恋の場合と同じ様に、
こうでもしなければ、生きて行かれないのかも知れない。(かず子)
七
僕は、僕という草は、この世の空気と陽の中に、生きにくいんです。
生きて行くのに、どこか一つ欠けているんです。(直治)
足りないんです。
いままで、生きて来たのも、これでも、精一ぱいだったのです。(直治)
僕は下品になりました。
下品な言葉づかいをするようになりました。(直治)
けれども、それは半分は、いや、60パーセントは、哀れな附け焼刃でした。
へたな小細工でした。(直治)
人間は、みな、同じものだ。
これは、いったい、思想でしょうか。(直治)
人間は、みな、同じものだ。
なんという卑屈な言葉であろう。(直治)
姉さん。僕には、希望の地盤が無いんです。
さようなら。(直治)
八
いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。(かず子)
最後まで読んで頂きありがとうございました。