「織田信長(山岡荘八)」より、織田信長の名言・台詞をまとめていきます。
1巻 無門三略の巻
「織田家の安危はな、おれの人物ひとつにかかっているのだ。マムシの娘との縁談などにかかっていて堪るものか」
(斎藤道三の娘との縁談について)
「竹千代。よいか、おぬしは、この信長の弟ぞ。二人で力を合わせて、日本中を斬りしたがえてやるのだ」
(竹千代とは後の徳川家康)
「ほかの者で事足りることを何でこの信長が、わざわざ、つべこべやるものか。おれは猿真似は大嫌いじゃ」
「わかるものか。分かったら裏をかかれる。それゆえ、わざわざわからぬように動いているのが信長の身上だ」
「知れたこと、尾張の大うつけで終わるか、それとも天下を掌握するか、二つに一つじゃ、おれの仕事は」
「嘘ではない。おれが見た女の中では、阿濃がいちばん美しい。これは外の形だけではない。阿濃は生きているからじゃ」
「もう武器はな、三間の槍の時代ではなくなるぞ。この鉄砲をどしどしふやして、一人ずつよく狙い、必ず命中するように足軽どもを訓練していったら、これに越した武器はないぞ」
「いいや、事の末々まで、あのように法で決められては、人間息がつまってしまう。日本一とは云いがたいが、まず、この信長の先手の大将ぐらいはつとまる男であろうと」
(武田信玄が作った「定書」を見て)
「されば、上総介信長は、一匹の蝮に勝てたとて、わざわざ起き出して衣服を改めたのではない。これは待ちに待った起つべき時のとうらいを、直感したゆえ起きたのだ」
「五十年の定命を生きとおさせよとは願わぬゆえ、この戦国にただ一筋、乱世の治まる道をつけさせ給えと心願した」
「たいていの戦は足軽でよい。鉄砲足軽が百発百中の弾丸で相手を混乱させてから、はじめて騎馬隊はかかればよいのだ。騎馬隊がまっ先になって戦うような戦をしてはならぬ」
「大うつけには大うつけの仁義があるわい。必ずまいると伝えておけ」
2巻 桶狭間の巻
「すぐには出ぬが、出た時には勝っている。それゆえ、おれが行くまで、どのようなことがあってもこの砦を死守するのだ」
「うぬ一人の罪じゃこれは。それゆえ、うぬが切腹したら、それでみんなは許してやる」
(反乱の首謀者である弟・信行に対して)
「斬ろうと企てれば斬らねばならぬ。斬られるか斬られぬかは信行が心しだい」
「この世をよい世に作り代えてやるのが、いちばん大きな親のまことじゃ」
「昔から城をたのんで戦って勝ったためしがあると思うか。籠城は必ず、志を変えて敵に通ずる者を出してゆく」
「お濃、猿! 勝ったぞ」
「死にに行く身に意見は無用だ。者ども、続けッ」
「義元の本陣へ斬り込むまでは声を立てるな。義元以外の首は討たず、あとは馬蹄でふみにじれッ」
「改めて沙汰するが、今日の功名第一はその方じゃ。よくぞ田楽狭間に義元の輿を停めたを知らせて来た」
「みな、わが功名だけを志して、全軍の勝利を考えない戦ぶりは過去のものと思うがよいぞ」
「大丈夫などと云うことが人間の一生にあるものか」
「この信長は義輝が家臣ではないッ。参候するのではなくて、どのような人物か試しにまいるのだ」
3巻 侵略怒濤の巻
「そのくらいのことができずに、一国欲しいなどと吐かすと許さぬ。それでは信長が天下取りの足手まといになりこそすれ役に立たぬわ」
「分る! よく分るぞ。おぬしたちにとっては大切な主君じゃ元康どのは。よいよい、おれが許す! 刀を持ったままでついて来い」
(松平元康(後の徳川家康)を清州城に呼んだ時)
「尾張の兄と、三河の弟で、東海、近畿は固めようぞ」
「たわけめ、云いわけせぬのが武将などと思うな。勝って目的を果たすのが武将のつとめじゃ」
「人間はな、いちど意表をつかれると、次々に戸惑うものだ。問題はどうして最初に戸惑わせるかにある」
「道のない世に道をつけようと云うのじゃぞ。信長の歩き方はなみではない。打つべきときに打つべき石を打てぬような者に、なんで天下がうかがえよう」
「織田の一族は、新しい世を築くための犠牲になればそれでよいのじゃ」
「もはや美濃はおれのもの、今度は戦ではない、城の移転なのだ」
「名前の文字などどう改めてみても、人間がたわけではなかなかもって日は召されぬぞ」
「戦とは、このように苦しいもの。このようにむごいものゆえ、もう金輪際してはならぬと、骨に刻ませてやるというのじゃ」
「信長はな、他人にもきびしいが己れにもきびしい。理を超えたところに理を求めて、この世を作り直すのがわが願いじゃ」
「我慾のつよい者ほど自分に都合のよい計算をするのは知れてあるわ。彼らは自分に利のない都合の悪いことは考えたことがないからの。ここに大きな人間の隙がある」
「順など追わずともよい。結論じゃ」
「金は岐阜に腐るほどあると云うなよ。ここで集めてやるのが政治というものじゃ」
「内乱に飽き、貧しさに飽いた者は信長の命に従うべしと申してやれ」
「平和! これが信長の目的のすべてじゃ」
「商人と申すはな、いちど金を取られると、必ずそれを活かそうとして、取られた人の味方になるものじゃ」
4巻 天下布武の巻
「これだけの同勢では、何を考えても、どうにもならぬ。それゆえ、どうにもならぬ人生があると分かった。案外楽しいものではないか」
「何の、織田・徳川の連合軍で戦うと、これほど強いぞと天下に誇示しておきたいのじゃ。これはお許の将来のためにもよい事じゃぞ」
「公方は陰謀を写す鏡……と思えばよいのじゃ」
「勝算などあるものか。戦というのはな、勝たねば負ける。負けねば勝つ……たったそれだけのものじゃと思え」
「そんな聖地があるゆえ、そこへもぐり込もうと企む卑怯者も出て来るのだ。こんなバカな話があると思うか、乱世の平和の障碍になるのが聖地、それでは理屈が合うまいが」
(聖地・叡山を攻撃するに際して)
「叡山を滅ぼすものは叡山なり!」
「わしはな、天下のことを睨んでいるのだ。あとの動きを見るがよい」
「抜け駆けや先陣争いの時代は過ぎたぞ。信長が厄年に運命賭けて試みる新兵法じゃ。つねに全隊の勝機を狙って動くこと、さながら五体の手足のごとくでなければならぬ」
5巻 本能寺の巻
「謙信が出て来ると西から毛利も東上する。岐阜にいたのでは間に合うまいが」
「毘沙門天の戦は、それぞれの局面で勝利を得て、それで快をむさぼるのだが、この信長は日本中で勝たねばならぬ」
「そうであろう。これはな、支離滅裂という陣備えじゃ」
「そちは、この信長が織田の上総であった頃と、右府になってからの戦略が同じであってよいと思うか」
「人間、知恵があって先が見えると、つい向う見ずがやれなくなる。やれなくなればそれだけ弱い」
「ハゲか。ハゲではどうにもならぬわ。ハゲの謀反では考え落ちはあるまいということじゃ。おかしなことよ。たわけめが」
(本能寺で明智光秀の謀反を知った時)
「たわけめ、天下はうぬらにコソコソと盗めるようなものではないわ」
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。