「人間の大地(サン=テグジュペリ)」の名言まとめ

「人間の大地(サン=テグジュペリ)」の名言をまとめていきます。

 

人間の大地

大地は僕ら自身について万巻の書よりも多くを教えてくれる。なぜなら大地は僕らに抗うからだ。人間は障害に挑むときにこそ自分自身を発見するものなのだ。

 

アルゼンチンでの最初の夜間飛行中に見た光景が、今でも僕の目に浮かぶ。暗い夜の中に、平原に散らばる数少ない灯火の光だけが星のように煌めいていた。

闇の大海原に瞬く光の一つ一つが、今、そこに人間の意識という名の奇跡が存在していることを教えていた。

 

絆を取り戻そうとしなければならない。平原のそこここに燃える灯のいくつかと、心を通わせようとしなければならない。

 

Ⅰ 定期路線

今にして思えば、パイロットたちは僕らに畏敬の念を抱かせるのに長けていた、ということかもしれない。

ただ、ときには彼らのうちの誰かが飛行中に連絡を絶って、永遠に変わらない尊敬の対象になることもあった。

 

今とちがって、この頃のエンジンはとうてい信頼の置ける代物ではなかった。
何の前触れもなく、いきなり食器が割れるようなけたたましい騒音を立てはじめてパイロットを途方に暮れさせるのだ。

 

「スペインの雲海の上で、コンパス頼りに飛行機の操縦を楽しむのはいいものだ。じつに気の利いた楽しみだ。だが……」

「……だが、覚えておきたまえ。雲海の下にあるのは……あの世だ」

 

もう僕は激しく吹きつける風雨を嘆くまい。パイロットという職業が魔法の力を使って、僕を未知の世界へと導いてくれるのだから。

僕はその未知の世界で、今から二時間以内に黒いドラゴンと対決し、無数の青白い稲妻を髪のようになびかせる山頂に戦いを挑むだろう。

そして夜が来て、戦いから解放されれば、星々を解読しながら進むべき道を探るだろう。

 

地球が果たすべき唯一の義務、それは星空をさまよいながら、なんとか現在地を割り出そうとしている僕らに、正確な数字を提供することだった。

ところが、送られてくるのはでたらめな数字ばかりときている。それなら、せめて当分のあいだ黙っていてほしかった。

 

パイロットは農夫に似ている。農夫は自分の耕地の見回りをするとき、そこに散らばっている無数のサインを感受して、春の歩み、霜害の危険、雨の訪れを察知する。

それと同じように、プロのパイロットは吹雪のサイン、濃霧のサイン、幸福な夜のサインを解読しつづける。

 

パイロットは一人きりで暴風雨の空という巨大な法廷の真ん中に立ち、託された郵便物を守るために自然界の三柱の神、すなわち山、海、嵐と争うのだ。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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