「銀河英雄伝説9巻(田中芳樹)」の名言・台詞をまとめていきます。
9巻 回天篇
第一章 辺境にて
「じつをいうとね、ヤン提督が生きてらしたころは、それほど偉大な人だとも思ってなかったのよ。でも、亡くなってから、すこしだけわかったような気がする」
「提督の息吹を、わたしたちは直接、感じているけど、その息吹はきっと時がたつほど大きくなって、歴史を吹きぬけていくんでしょうね……」(カーテローゼ・フォン・クロイツェル、通称:カリン)
「歴史とは、人類全体が共有する記憶のことだ、と思うんだよ、ユリアン。思いだすのもいやなことがあるだろうけど、無視したり忘れたりしてはいけないのじゃないかな」(ヤン・ウェンリー)
「よく60万人以上も残ったものさ。物ずきの種はつきないものだ」(ダスティ・アッテンボロー)
「失われた生命は、けっして帰ってこない世界、それだけに、生命というものがかけがえのない存在である世界に、おれたちは生きているんだからな」(アッテンボロー)
「生きかえっていらっしゃい。自然の法則に反したって、一度だけなら、赦してあげる。そうなったら、今度は、わたしが死ぬまでは死なせてあげないから」(フレデリカ・グリーンヒル)
「自分がこれまで死なせてきた人間の数を考えると、ほんとうに怖いよ。一回死んだぐらいでは、償えないだろうね。世のなかって、けっこう不均衡にできているんだとう思う」(ヤン)
「わたしは、たしかにあなたを失いました。でも、最初からあなたがいなかったことに比べたら、わたしはずっと幸福です」
「あなたは何百万人もの人を殺したかもしれないけど、すくなくともわたしだけは幸福にしてくださったのよ」(フレデリカ)
「もう一度言ってみろ。暗殺された人間は、戦死した人間より格が下だとでもいうのか」(ユリアン・ミンツ)
「さて、この際、あんたのほうはわずかな想像力をはたらかせればいいのさ」
「あんたより年齢がずっと若くて、ずっと重い責任を負わされた相手を、口ぎたなくののしるような人間が、周囲の目に美しく見えるかどうか」(オリビエ・ポプラン)
「ヤン・ウェンリーの語調を借りれば、こういうことになるかな。歴史はどう語るか」
「ユリアン・ミンツはヤン・ウェンリーの弟子だった。ヤン・ウェンリーはユリアン・ミンツの師だった。さて、どちらになるものやら」(ワルター・フォン・シェーンコップ)
「はっきりわかっているのは、これだけだ。おれたちは、全員そろって、あきらめが悪い人間だということさ」(アレックス・キャゼルヌ)
「ヤン提督の生前はお祭りの準備にいそがしかった。死後は、残っていた宿題をかたづけるのに骨をおった」(アッテンボロー)
第二章 夏の終わりのバラ
「皇帝をお怨みするにはあたらぬ。ヴェスターラントに対する熱核攻撃を黙認するよう、皇帝に進言したのは私だ。卿は皇帝ではなく、私をねらうべきであったな」
「妨害する者もすくなく、ことは成就したであろうに」(パウル・フォン・オーベルシュタイン)
「陛下は、罪を犯されたとしても、その報いをすでに受けておいでだ、と、わたしは思います。そして、それを基調に、政治と社会を大きく改革なさいました」
「罪があり報いがあって、最後に成果が残ったのだ、と思います。どうかご自分を卑下なさいませんよう。改革によって救われた民衆はたしかに存在するのですから」(ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ、通称:ヒルダ)
「異常な才能というものは、一方で、どこかそれに応じた欠落を要求するものらしい。ラインハルト陛下を見ていると、そう思う」
「まあ君主としては、逆の方向へ異常でないだけよいのだがね」(フランツ・フォン・マリーンドルフ)
人間は、自分より欲望の強い人間を理解することはできても、自分より欲望の弱い人間を理解することは至難であるから。
「偉人だの英雄だのの伝記を、子供たちに教えるなんて、愚劣なことだ。善良な人間に、異常者をみならえというも同じだからね」(ヤン)
第三章 鳴動
熱狂する群衆のなかで理性を堅持しえる者は、絶対的少数派である。
「侵略者の善政など、しょせん偽善にすぎぬ、か。そのとおりだな」(オスカー・フォン・ロイエンタール)
「偉大な敵将と戦うのは武人の栄誉だが、民衆を弾圧するのは犬の仕事にすぎぬ」(ロイエンタール)
「ヤン・ウェンリー元帥、卿は中道に倒れて、あるいは幸福だったのではないか」
「平和な世の武人など、鎖につながれた番犬にすぎぬ。怠惰と無為のなかで、ゆっくりと腐敗していくだけではないか」(ロイエンタール)
「平和の無為に耐えうる者だけが、最終的な勝者たりうる」(ヤン)
「陰気で消極的なビッテンフェルト、女気なしのロイエンタール、饒舌なアイゼナッハ、浮気者のミッターマイヤー、無教養で粗野なメックリンガー、いたけだかなミュラー、皆、彼ららしくない」
「人それぞれ個性というものがある。ロイエンタールが法を犯したとか、相手をだましたとかいうならともかく、色恋ざたで一方だけを被告席に着かせるわけにもいくまい」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
「100の興味が集まれば、事実のひとつぐらいにはなるだろうな。とくに、力のある者がそれを望めば、証拠など必要ない。卿らの憎む、いや、憎んだ専制政治では、とくにな」(ロイエンタール)
「ことばで伝わらないものが、たしかにある。だけど、それはことばを使いつくした人だけが言えることだ」(ヤン)
「正しい判断は、正しい情報と正しい分析の上に、はじめて成立する」(ヤン)
「何かを憎悪することのできない人間に、何かを愛することができるはずがない」(ヤン)
「クロイツェル伍長がおれのことをどう思うか、それは彼女の問題であって、おれの問題ではないね。おれが彼女をどう思っているか、ということなら、それこそおれの問題だがね」(シェーンコップ)
「美人をきらったことは、おれは一度もないよ。まして、生気のいい美人をね」(シェーンコップ)
「シェーンコップ中将は、卑怯の二文字とは縁がない人よ、と、そう言っただけよ。事実ですものね」(フレデリカ)
「(彼女たちは)よくもまあ、あんなしょうもないゲームに熱中できるもんだ」
「……しかし、まあ、笑声のほうが、泣声よりずっとましではあるがね」(キャゼルヌ)
第五章 ウルヴァシー事件
「指導者に対する悪口を、公然と言えないような社会は開かれた社会とは言えない」(ユリアン)
「ユリアン・ミンツは作曲家ではなく演奏家だった。作家ではなく翻訳家だった。彼はそうありたいと望んで、もっとも優秀な演奏家に、また翻訳家になったのである」
「彼は出典を隠したことは一度もなかった。剽窃よばわりされる筋合はまったくない。演奏されずに人々を感動させる名曲などというものはないのだ」(アッテンボロー)
「無用の心配をするな、エミール、予はいますこし見栄えのする場所で死ぬように決めている。皇帝の墓所はウルヴァシーなどというのは、ひびきがよくない」(ラインハルト)
「撃つがいい。ラインハルト・フォン・ローエングラムはただひとりで、それを殺す者もひとりしか歴史には残らないのだからな。そのひとりに誰がなる?」(ラインハルト)
「もとより、小官は生きて元帥杖を手にするつもりでございます。おそれながら、陛下とは建国の労苦をともにさせていただきました」
「ぜひ今後の安楽と栄華をも、わかちあたえていただきたいと存じますので」(コルネリアス・ルッツ)
「反逆者になるのは、いっこうにかまわん。だが、反逆者にしたてあげられるのは、ごめんこうむりたいものだな」(ロイエンタール)
「少年時代が幸福に思えるとしたら、それは、自分自身の正体を知らずにいることができるからだ」(ロイエンタール)
戦うからには、おれは全知全能をつくす。勝利をえるために、最大限に努力する。そうでなくては、皇帝に対して礼を失することになろう……。(ロイエンタール)
「民主共和政治とやらの迂遠さは、しばしば民衆をいらだたせる。迅速さという一点で、やつらを満足させれば、民主共和制とやらにこだわることもあるまい……」(ロイエンタール)
第六章 叛逆は英雄の特権
「卿を残した理由は、諒解していよう。ロイエンタールは当代の名将だ。彼に勝利しうる者は、帝国全軍にただ二名、予と卿しかおらぬ」
「ゆえに、卿を残した。意味はわかろう?」(ラインハルト)
「皇帝の御手を汚してはならんのだ」(ウォルフガング・ミッターマイヤー)
「ロイエンタールとおれと、双方が斃れても、銀河帝国は存続しうる。だが皇帝に万一のことがあれば、せっかく招来した統一と平和は、一朝にして潰えるだろう」
「勝てぬとしても、負けるわけにはいかんのだ」(ミッターマイヤー)
「ラングの非道をただすには、法をもってする。でなければ、ローエングラム王朝の、よって立つ礎が崩れますぞ」
「重臣中の重臣、宿将中の宿将であるあなたに、そのことがおわかりにならぬはずはありますまい」(ウルリッヒ・ケスラー)
「わが皇帝に敗れるにせよ、滅びるにせよ、せめて全力をつくして後のことでありたいものだ」
「戦うからには勝利を望むべきだ。最初から負けることを考えてどうする。それとも、敗北を、滅亡をお前は望んでいるのか」(ロイエンタール)
「度しがたいな、吾ながら……」(ロイエンタール)
「あなた、ウォルフ、わたしはロイエンタール元帥を敬愛しています。それは、あの方があなたの親友でいらっしゃるから」
「でも、あの方があなたの敵におなりなら、わたしは無条件で、あの方を憎むことができます」(エヴァンゼリン・ミッターマイヤー)
第七章 剣に生き……
「いや、ワーレン提督、お気づかいは必要ない。ロイエンタール元帥とおれとの友誼は、つまるところ私事であって、公務の重さと比較はできないからな」(ミッターマイヤー)
「だが、ロイエンタールを討って、それでおれの心は安らぎをえるのだろうか」(ラインハルト)
「おれは自分が何のためにこの世に生を亨けたか、長いことわからなかった。知恵なき身の悲しさだ。だが、いまにしてようやく得心がいく」
「おれは皇帝と戦い、それによって充足感をえるために、生きてきたのではなかったのか、と」(ロイエンタール)
「酔っているな、卿は」
「酒にではない、血の色をした夢に酔っている」(ミッターマイヤー)
「夢は醒める。さめた後どうなる? 卿は言ったな、皇帝と戦うことで充足感をえたいと」
「では戦って勝った後、どうするのだ。皇帝がいなくなった後、どうやって卿は心の飢えを耕すつもりだ?」(ミッターマイヤー)
「夢かもしれんが、いずれにしてもおれの夢の話だ。卿の夢ではない。どうやら接点も見出しえないようだし、もう無益な長話はやめよう」(ロイエンタール)
「……さらばだ、ミッターマイヤー、おれが言うのはおかしいが、皇帝を頼む。これはおれの本心だ」(ロイエンタール)
「ロイエンタールの大ばか野郎!」(ミッターマイヤー)
「前進、力戦、敢闘、奮励」
「突撃だ! ミッターマイヤーに朝食を摂る時間をつくってやろう」(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト)
「青二才に、用兵の何たるかを教えてやるとしようか」(ロイエンタール)
「一度失ったものを、もう一度失っても、べつに不自由はせんよ」
「さて、これで悪運を切り離したぞ。恐れるべきものは、怯懦のみだ」(アウグスト・ザムエル・ワーレン)
「死ぬのがこわくて生きていられるか」(ポプラン)
第八章 剣に斃れ
「要するに敵も味方もセンチメンタリストの集まりだってことだな。イゼルローンは聖なる墓、か」(シェーンコップ)
「いうなれば、宇宙はひとつの劇場だよ」(ヤン)
「騒ぐな、負傷したのはおれだ、卿ではない」(ロイエンタール)
「どのみち、おれたちの人生録は、どのページをめくっても、血文字で書かれているのさ。いまさら人道主義の厚化粧をやっても、血の色は消せんよ」(ビッテンフェルト)
「……ふたりの人間の野心を、同時代に共存させるには、どうやら銀河系は狭すぎるらしい……」(エルネスト・メックリンガー)
「そうか、案外、世のなかにはばかが多いな」(ロイエンタール)
「きさまが民主共和政治を愚弄しようと、国家を喰いつぶそうと、市民をたぶらかそうと、そんなことは、おれの関知するところではない。だが……」
「だが、その穢らわしい舌で、皇帝の尊厳に汚物をなすりつけることは赦さん。おれはきさまごときに侮辱されるような方におつかえしていたのではないし、背いたのでもない」(ロイエンタール)
「どこまでも不愉快な奴だったな。おれが生涯の最後に殺した人間が武器を持っていなかったとは……不名誉な所業を、おれにさせてくれたものだ」(ロイエンタール)
「じゃまをせんでほしいな。おれは死ぬのではなく、死んでいく。その過程を、けっこう楽しんでいるところだ。おれの最後の楽しみをさまたげんでくれ」(ロイエンタール)
「古代の、えらそうな奴がえらそうに言ったことばがある。死ぬにあたって、幼い子供を託しえるような友人を持つことがかなえば、人生最上の幸福だ、と……」(ロイエンタール)
「ウォルフガング・ミッターマイヤーに会って、その子の将来を頼むがいい。それがその子にとっては最良の人生を保障することになる」(ロイエンタール)
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー……」
「卿が来るまで生きているつもりだったのに、まにあわないじゃないか。疾風ウォルフなどという、たいそうなあだ名に恥ずかしいだろう……」(ロイエンタール)
第九章 終わりなき鎮魂曲
「表面的には互角に見えるかもしれないが、おれにはワーレンとビッテンフェルトがいた。ロイエンタールには誰もいなかった。いずれが勝者の名に値するか、論議の余地もない」(ミッターマイヤー)
「あれを見たか。おれは一生、この光景を忘れられないだろう。疾風ウォルフが泣いているぜ……」(カール・エドワルド・バイエルライン)
「それにしても、私も口数が多くなったものだ」(オーベルシュタイン)
「卿は死ぬな。卿がいなくなれば、帝国全軍に、用兵の何たるかを身をもって教える者がいなくなる。予も貴重な戦友を失う。これは命令だ、死ぬなよ」(ラインハルト)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。