「銀河英雄伝説8巻(田中芳樹)」の名言・台詞をまとめていきます。
8巻 乱離篇
第一章 風は回廊へ
「ハイネセンが真に同盟人の敬慕に値する男なら、予の処置を是とするだろう。巨大な像など、まともな人間に耐えられるものではない」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
「ヤン・ウェンリーがいかに希謀を誇ろうとも、この期におよんで軍事上の選択肢はふたつしかありえない。進んで戦うか、退いて守るか、だ。彼がどう選択し、どう予をしとめようとするか、大いに興味がある」(ラインハルト)
「名将の器量が他の条件に規制されるとは気の毒なことだな」(ラインハルト)
「フロイライン、予が休息するとしたら、ヤン・ウェンリーに対する負債を、まず完済せねばならぬ。彼を屈伏させ、宇宙の統一をはたしてから、予にとってはすべてがはじまるのだ」(ラインハルト)
「陛下に無能者と呼ばれるのには、おれは耐えられる。だが卑劣漢と非難されては、今日まで生命がけで陛下におつかえしてきた意味がない」(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト)
第二章 春の嵐
「おれとしては、何も悪いことをできなかったような甲斐性なしに、30歳になってもらいたくないね」(ワルター・フォン・シェーンコップ)
民主共和政治の建前──言論の自由のおかげである。政治上の建前というものは尊重されるべきであろう。
それは権力者の暴走を阻止する最大の武器であり、弱者の甲冑であるのだから。(ヤン・ウェンリー)
「皇帝ラインハルトは、私と戦うことを欲しているらしいよ。その期待を裏切るような所業をしたら、彼は私を永久に赦さないだろうな」(ヤン)
「運命というならまだしも、宿命というのは、じつに嫌なことばだね。二重の意味で人間を侮辱している」
「ひとつには、状況を分析する思考を停止させ、もうひとつには、人間の自由意志を価値の低いものとみなしてしまう」
「宿命の対決なんてないんだよ、ユリアン、どんな状況のなかにあっても結局は当人が選択したことだ」(ヤン)
「半数が味方になってくれたら大したものさ」(ヤン)
「この世で一番、強い台詞さ。どんな正論も雄弁も、この一言にはかなわない」
「つまりな、『それがどうした』、というんだ」(ダスティ・アッテンボロー)
「伊達と酔狂でやってるんだ。いまさらまじめになっても帝国軍のまじめさにはかなわんよ。犬はかみつく、猫はひっかく、それぞれに適した喧嘩のやりかたがあるさ」(アッテンボロー)
狂信者に必要なものはありのままの事実ではなく、彼の好みの色に塗りたてた幻想である。(ド・ヴィリエ)
第三章 常勝と不敗と
「ヤン・ウェンリーも戦いを欲するか」(ラインハルト)
「ヤン・ウェンリーの真の偉大さは、正確な予測にあるのではなく、彼の予測の範囲においてのみ、敵に行動あるいは選択させる点にある」
「銀河帝国の歴戦の名将たちは、つねに彼によって彼の用意した舞台の上で踊らされたのである」(エルネスト・メックリンガー)
「罠ということは卿に教わるまでもない。おれが問題にしているのは、何を目的としての罠かということだ」(ビッテンフェルト)
「こちらは両艦隊あわせて三万隻。敵軍をことごとく葬って、なお一万隻はあまるではないか」(ビッテンフェルト)
「大軍に区々たる用兵など必要ない。攻勢あるのみ。ひたすら前進し、攻撃せよ」(アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト)
「世の中を甘く見ることさ」(オリビエ・ポプラン)
「見栄をはるのは、けっこうなことだ。最初は大きすぎる服でも、成長すれば身体にあうようになる。勇気も同じことだ」
「……と、人生相談係のポプラン氏は無責任にのたもうた。しょせん他人の人生である」(ポプラン)
「よし、行け、カリン、教えたことの62.4パーセントばかり実行すれば、お前さんは生き残れる」(ポプラン)
「わかった、形見をやる……」
「お前の生命だ。生きて皇帝にお目にかかれ。死ぬなよ、いいか……」(ファーレンハイト)
「勝利か死か、ですか、わが皇帝(マイン・カイザー)」(オスカー・フォン・ロイエンタール)
「ちがうな。勝利か死か、ではない。勝利か、より完全な勝利か、だ」(ラインハルト)
第四章 万華鏡
「元帥だの宇宙艦隊司令長官だのと顕職にまつりあげられている間に、おれも戦闘指揮の感覚がにぶったとみえる。味方がついてこれないような作戦をたてるとはな」(ウォルフガング・ミッターマイヤー)
「これだ、これでなくてはな」(ラインハルト)
「ああ、その指揮官は鉄壁ミュラーにちがいないよ」
「異名にふさわしく、主君を守ろうとしているのだ。彼を部下に持ったという一事だけで、皇帝ラインハルトの名は後世に伝えられるだろうな」(ヤン)
「つまりは、人は人にしたがうのであって、理念や制度にしたがうのではないということかな」(ヤン)
「前後、左右、上下、いずれの方角を見ても味方の艦影で埋まっている。にもかかわらず、わが軍が劣勢であるのはどういうわけだ」(フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー)
「予はこれまで戦うにあたって、受け身となってよき結果を報われたことは一度もなかった。それを忘れたとき、軍神は予の怠惰を罰したもうた」
「今回、いまだ勝利をえられぬゆえんである」(ラインハルト)
「吾々は宇宙を征服しうるも、一個人を征服するあたわざるか」(ミッターマイヤー)
第五章 魔術師、還らず
「かっこうよく死ぬのは、ビュコック爺さんに先をこされてしまったからな。後追い心中をしても誰もほめちゃくれない。したたかに生き残っていい目を見なきゃ損さ」(アッテンボロー)
「ヤン・ウェンリーは宇宙のすべてを欲しているのではないと思います。あえて申しあげますが、譲歩が必要であるとすれば、それをなさる権利と責任は陛下のほうにおありです」(ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ、通称:ヒルダ)
「キルヒアイスが諌めにきたのだ。キルヒアイスが言ったのだ、これ以上ヤン・ウェンリーと争うのはおよしください、と。あいつは死んでまでおれに意見する……」(ラインハルト)
「(人質の)使者として他に候補者なき場合は、臣がその任にあたりましょう」(パウル・フォン・オーベルシュタイン)
「作戦をたてるだけでは勝てない。それを完全に実行する能力が艦隊になくては、どうしようもない」
「ここで会談の申しいれを拒否して、短時日のうちに再戦することになっては自殺行為だよ」(ヤン)
「誰もが平和を望んでいた。自分たちの主導権下における平和を。共通の目的が、それぞれの勝利を要求したのである」(歴史家)
「予はヤン・ウェンリーに手を差しだすつもりだが、ひとたびそれを拒まれたときには、ふたたび握手を求めるつもりはない」(ラインハルト)
「(フォークは)秀才だったのですが、現実が彼のほうに歩みよってくれなかったのですな」
「方程式や公式で解決できる問題なら、手ぎわよくかたづけたにちがいありませんが、教本のない世界では生きられなかったらしい」(フョードル・パトリチェフ)
「よせよ、痛いじゃないかね」(パトリチェフ)
「ごめん、フレデリカ。ごめん、ユリアン。ごめん、みんな……」(ヤン)
第六章 祭りの後
「提督、イゼルローンへ帰りましょう。あそこがぼくたち皆の家ですから。家に帰りましょう……」(ユリアン・ミンツ)
「生きるということは、他人の死を見ることだ」(ヤン)
「戦争やテロリズムは何よりも、いい人間を無益に死なせるからこそ否定されねばならない」(ヤン)
あの人が言っていたのは、いつも正しかった。だけど、いくら正しいことばを残しても、当人が死んでしまったら何にもならないではないか!(ユリアン)
「きらいな奴に好かれようとは思わない。理解したくない人に理解される必要もない」(ヤン)
「なあ、ユリアン、もともとヤンの奴は順当にいけばお前さんより15年早く死ぬ予定になっていたんだ。だがなあ、ヤンはおれより6歳若かったんだぜ」
「おれがあいつを送らなきゃならないなんて、順序が逆じゃないか」(アレックス・キャゼルヌ)
「ユリアン、これはあなたの責任であり義務ですよ。あなたはヤンご夫妻の家族だったんですからね。あなた以外の誰が話すというの」
「もし話さなかったら、話したとき以上に後悔するわよ」(オルタンス・キャゼルヌ)
「あの人はね、こんな死にかたをする人じゃないのよ。あの人にはあの人らしい死にかたがあったのに」(フレデリカ・グリーンヒル)
……戦乱が一世紀以上も過去のことになった平和な時代、ひとりの老人が生きている。
かつては名声を有した軍人だったというが、それを実見した証人たちもすくなくなり、当人も誇らしげに武勲を語ることはない。
若い家族たちに七割の愛情と三割の粗略さで遇されながら、年金生活を送っている。
サンルームに大きな揺り椅子を置いて、食事に呼ばれないかぎり、まるで椅子の一部になってしまったように静かに本を読んでいる。毎日毎日、時がとまったように。
ある日、外で遊んでいた孫娘が、サンルームの入口からなかにボールを放りこんでしまう。ボールは老人の足もとに転々とする。
いつもは緩慢な動作でボールをひろってくれる祖父が、孫の声を無視したように動かない。
駆けよってボールをひろいあげた孫娘は、下方から祖父の顔を覗きこんで苦情を言いかけ、説明しがたい何かを感じる。
「お祖父ちゃん……?」返答はなく、老人は眠りに落ちたような顔を、陽光が斜めから照らしている。孫娘はボールを抱いたまま、居間へ駆けこんで大声で報告する。
「パパ、ママ、お祖父ちゃんが変なの!」その声が遠ざかっていくなかで、老人はなお揺り椅子にすわっている。永遠の静謐さが老人の顔を潮のように満たしはじめる……。
そんな死にかたこそがヤン・ウェンリーにはふさわしい。(フレデリカ)
「人間は主義だの思想だののためには戦わないんだよ! 主義や思想を体現した人のために戦うんだ。革命のために戦うのではなくて、革命家のために戦うんだ」
「おれたちは、どのみち死せるヤン提督を奉じて戦うことになるが、その場合でも、この世に提督の代理をつとめる人間が必要だ」(アッテンボロー)
「ユリアン、いいか、政治における形式や法制というものは、二代めから拘束力を持つのだぜ。初代はそれを定める立場にある」(キャゼルヌ)
「あたりまえよ、ユリアン、ヤン・ウェンリーみたいなことは誰にもできないわ」
「いえ、(才能ではなく)個性の差よ、ユリアン。あなたはあなたにしかできないことをやればいい。ヤン・ウェンリーの模倣をすることはないわ」
「歴史上にヤン・ウェンリーがただひとりしかいないのと同様、ユリアン・ミンツもただひとりなのだから」(フレデリカ)
「なぜユリアンのような亜麻色の髪の孺子に兵権をゆだねるかって? おれたちにとって必要なのは過去の日記ではなくて未来のカレンダーだからさ」(アッテンボロー)
「いま私が離脱を公表すれば、動揺している連中は私のもとに集まってくる。ムライのような幹部でさえ離脱するのだから、という自己正当化ができるからな」(ムライ)
「私がいないほうが、貴官らにとってはよかろう。羽を伸ばすことができて」(ムライ)
「否定はしませんよ。ですが、酒を飲む楽しみの半分は禁酒令を破ることにあるのでね」(アッテンボロー)
「世間はきっとあんたのことを悪く言いますよ。損な役まわりをなさるものだ」(アッテンボロー)
「なに、私は耐えるだけですむ。君らと同行する苦労にくらべればささやかなものさ」(ムライ)
「あなたがたが出て行かれるのを、ぼくは制めはしません。ですから、あなたがたも気持よく出発なさってください。何も今日までのあなたがた自身を否定なさる必要はないでしょう」(ユリアン)
第七章 失意の凱旋
「あなたから凶報を聞いたことは幾度もあるが、今回はきわめつけだ。それほど予を失望させる権利が、あなたにあるのか?」
「誰も彼も、敵も味方も、皆、予をおいて行ってしまう! なぜ予のために生きつづけないのか!」(ラインハルト)
「予には敵が必要なのだ」(ラインハルト)
「わが皇帝よ、あなたは私に過分な地位と権力を与えてくださるが、何を望んでおられるのか。私が単に忠実で有益な覇道の歯車であれば、それでいいのか」(ロイエンタール)
「卿にはわかっているはずだ、ミッターマイヤー。昨日正しかった戦略が今日も正しいとはかぎらぬ」(ロイエンタール)
「ひとりの貴族が死んで一万人の平民が救われるなら、それが予にとっての正義というものだ。餓死するのがいやなら働け。平民たちは500年間そうしてきたのだからな」(ラインハルト)
「もし予が死んで血族なきときは、予の臣下でも他の何者でもよい、実力ある者が自らを帝位にでも王位にでもつけばよかろう。もともと予はそう思っていた」
「予が全宇宙を征服したからといって、予の子孫が実力も名望もなくそれを継承すべき理由はあるまい」(ラインハルト)
第八章 遷都令
「あいつは小物だ。その証拠に、実物より大きく映る鏡を見せれば喜ぶ。私は奴のほしがる鏡をしめしてやっただけさ」(アドリアン・ルビンスキー)
「虫が食った柱だからといって切り倒せば、家そのものが崩壊してしまうこともあるだろう。大と小とを問わず、ことごとく危険人物なるものを粛清し終えた後に、何が残るか」
「軍務尚書自身が倒れた柱の下に敷かれるかもしれんな」(アントン・フェルナー)
第九章 八月の新政府
「どのみち、急速に事態が変わるとは思っていません。国父アーレ・ハイネセンの長征一万光年は50年がかりでした。それぐらいの歳月は覚悟しておきましょうよ」(ユリアン)
「何と言われてもかまいませんよ。成功さえすればね」(ユリアン)
「戦略は正しいから勝つのだが、戦術は勝つから正しいのだ。だから、まっとうな頭脳を持った軍人なら、戦術的勝利によって戦略的劣勢を挽回しようとは思わない」
「いや、正確には、そういった要素を計算に入れて戦争を始めたりはしないだろうよ」(ヤン)
「戦術は戦略に従属し、戦略は政治に、政治は経済に従属するというわけさ」(ヤン)
「ひがんではいけませんな、アッテンボロー提督。女に関しては1の下は0。コンマいくつなんてのはないんですから」(ポプラン)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。