銀河鉄道の父(門井慶喜)より言葉と名言の紹介

銀河鉄道の父(門井慶喜)

 宮沢賢治の一生を、父親である政次郎の視点で描いた物語。

 

 小さいときから賢治は、良く出来た息子ではなかった。

 

 学校の成績こそ良かったが、やんちゃであり、親に歯向かい、金遣いは荒く、
そして家業を継ぐことに興味を示さなかった。

 

 そんな息子に対して一本筋は通していたが、どこまでも甘い父政次郎。

 

 そして暖かく見守る家族達。

 

 ほとんどコメディ、ちょっぴりほろりの第158回直木賞受賞作品。

厳格な父親?

 

 あやしてやりたい衝動に駆られた。いい子いい子。べろべろばあー。

  生まれたばかりの賢治を見た政次郎が、衝動的に考えたこと。

 

  しかし家長の威厳を考慮して、空想するに留めていた。

 

  これが時代なのか、地域性なのかは分からない。

 

  しかしこの後の親バカっぷりを見ていいたら、とても威厳なんで...

 

看護

 

 ただの病人ではねがべ。賢治だじゃい。
 万が一のことがあったら。

  病気になり、入院した賢治。

 

  赤痢の可能性があり、場合によれば命に係る。

 

  そんな時、当時の常識とは異なり男の立場で看病を願い出た。

 

  普通は看護師。次に母親。それが一般的な考え方。

 

  それなのに仕事をほっぽりだして、看病に向かった政次郎。

 

  この後の結果を知れば、この判断が正しいとは言えない。

 

  しかし人として、この判断を間違いとは絶対に言えない...

 

励まし

 

 自分のことを考えるごった。それだけでいいじゃ。

  病気で苦しい賢治だが、看病している父親を気遣っている。

 

  そんな時、父の政次郎が語りかけたこと。

 

  病気の時は気弱になる。

 

  わがまま過ぎるのは問題が、家族に気づかう必要はない。

 

 

 お前は、父でありすぎる。

  政次郎が、父親の喜助に言われた言葉になる。

 

  全てをほったらかしにして、息子を気遣う政次郎。

 

  良くも悪くも親バカである...

 

不問

 

 子供のやることは、叱るより、不問に付すほうが心の燃料が要る。

  子供たちの行動を見て、政次郎が常に考えていること。

 

  怒ったり叱ったりしている親は大変そうに見える。

 

  しかしこの行動は意外と簡単だ。

 

  そして自分に対する言い訳も出来るので、心理的に楽である。

 

  しかし、「見守る」という行動は大変だ。

 

  もちろんに常に不問にしていたら、単なる放置になる。

 

  本当に大切なことは伝える、それ以外は不問とするのが正しいのだろうか?

 

議論

 

 議論に勝つのは弁の立つ人間ではない。
 話を聞かない人間なのである。

  議論の結果について、政次郎の考え方。

 

  議論に勝つとは、自分の考えを認めさせること。

 

  自分が折れなければ勝ち、となる。

 

  しかし個人的な考えでは、これは議論ではない。

 

  議論とは常に同じ立場で行うもの。

 

  相手の考えを認める気がないのなら、ただの命令に過ぎない。

 

父親

 

 理解のある父になりたいのか、息子の壁でありたいのか。
 ただ楽しくはある。

  賢治の要求を聞いてしまって政次郎。

 

  そんな父親としての行動を自問している。

 

  結局、「楽しくはある」と書いている時点で答えは分かっている。

 

  これを見ると、父親業とは楽しいのかも...

 

学問

 

 質屋もつぶれます。学問がなければ。

  質屋の息子に学問はいらない、と信じる喜助。

 

  その結果、中学校に行けなかった政次郎。

 

  賢治を中学校に行かせるため、父親に政次郎が語ったこと。

 

  この後もいろいろと理由を言っているが、おろらく言ってる本人も信じていない。

 

  ただ方便として使っているだけ。

 

  そして実際、賢治は質屋と縁遠くなる。

 

商才

 

 商才というのは、その何割かは、口舌ときかん気で成っているのである。

  娘のトシが議論をふっかけるのが好きなことから、その商才を惜しんでいる。

 

  残念ながらこの時代、娘が家を継ぐという発想はないのだろう。

 

  子ども全員をあたたかく見守っている政次郎も、賢治以外は熱量が低い。

 

  家を継いで欲しい長男は、やはり別格なのだろうか?

 

世間

 

 世間のひろさがわかっただろう。

  小学生の時は首席だった賢治。

 

  しかし中学では、下から数えた方が早い順位だった。

 

  そんな成績表を見た、政次郎が賢治に語ったこと。

 

  普通なら怒ってもいいところを、言葉優しく諭している。

 

  多少の打算?もあるのだが、なかなか言えることではない。

 

  学問をするとは、自分の無力さを知ることと同じ。

 

  その結果、自分を伸ばすか諦めるかの二択が待っている...

 

商売

 

 こちらから、客に何かを聞いてはいけない。

  賢治に質屋の店番をさせた時、客の要求ばかりを聞いていたため、
 商売の極意として政次郎が語ったこと。

 

  議論は好きなのに、人の機微に疎い賢治。

 

  まったく商売に向いてなく、夢見るだけの少年に過ぎない。

 

  父として将来を不安に思うだろう...

 

心の声

 

 自分はそんなに強い人間ではない。
 強く見せる義務にしたがっているだけなのだ。

  中学卒業後、更に進学していった賢治を見て、政次郎が自分を
 振り返った時の心の声。

 

  誰もが多かれ少なかれ、自分を犠牲にしている。

 

  全くの自由気ままなど、あり得ない。

 

  しかし賢治を見ていると、裕福な実家を利用して自由気ままに過ごしている。

 

  この言葉の続きは、「誰かにそう訴えたかった」になる。

 

成長

 

 いっしょに成長するというのは、つまるところ、相手のなかに自分に
ないものを発見する、その連続なのかもしれなかった。

  まったく同じ人は世の中に存在しない。

 

  全てにおいて優れている人もいなければ、逆に劣っている人もいない。

 

  一人で出来ることは限られているし、一人では気づかないことも多い。

 

  やはり最後は人になるのだろうか?

 

現実

 

 現実は、八方ふさがりである。

  大きな夢を持ち、学問も修めてきた賢治。

 

  しかし現実は、普通以下ともいえる毎日。

 

  その現状に、身動きが取れなくなっている。

 

  良くも悪くも、世間知らずのお坊ちゃん。

 

  苦労を知らず、お金もどこかから湧いてくると考えている。

 

  しかしここで考える。

 

  現状を受け入れ諦めるのと、八方ふさがりを自覚するのと、どちらが正しいのだろうか?

 

ことば

 

 手でつかまえなければ永遠に虚空へ消えてしまうだろう一瞬の風景たち、
動物たち、人間たち、せりふたち、性格たち、比喩や警句たち、話の運びたち。

  賢治の頭の中に、突然ことばが溢れてきた時の感覚になる。

 

  言葉やストーリーは一瞬のきらめき。

 

  そうそう出るものとは思えない。

 

  連載している人は、どこからそのストーリーが生み出されるのだろうか?

 

理由

 

 書けたから、書いた。

  思いつくままに作品を書き上げた賢治が、その書けた理由を表現した言葉。

 

  そこに理由はない。

 

  この言葉を体験した人はいるだろうか?

 

仕事

 

 仕事があるということの最大の利点は、月給ではない。
 いわゆる生きがいの獲得でもない。
 仕事以外の誘惑に人生を費消せずにすむというこの一事にほかならないのである。

  学校の教師という、初めて職に付いた賢治。

 

  そのことを喜んだ政次郎が考えたこと。

 

  人は暇になると、ろくなことをしないですからね。

 

贖罪

 

 沈黙こそが、結局は、いちばんの贖罪にほかならないのだ。

  病気により、最後が近づいてきたトシ。

 

  過去に政次郎が選択したことを間違いとして謝ろうとしたが、
 結局は沈黙を貫くことにした理由になる。

 

  過去をあやまることは、相手のためではない。

 

  自分の重荷を、相手の判断に委ねること。

 

  だから沈黙を守るのが良い、という結論になる。

 

  ただこの判断は難しい。

 

  場合によれば、相手はその重荷を一緒に背負いたいかもしれない。

 

  結局、全てにおいて完全は方法など存在しない...

 

人生

 

 あいつは、降伏していない。
 こんどこそ。こんどこそ賢治は人生をはじめる。

  本を販売しても、結果が出ない賢治。

 

  今までなら逃げていたところを、努力を継続している姿を見て
 政次郎が思い至ったこと。

 

  負けは負けを認めた時、初めて負けとなる。

 

  勝つまで続けなければ、勝つことなどあり得ない。

 

  あらゆることは、続けることから始めないといけない。

 

商売

 

 どんな商売も、はじめの一売りがむずかしいのだ。

  本当に初めが難しい。

 

  何をしても上手く行かないことがある。

 

  と言うより、初めから上手く行くほうが珍しい。

 

  残念ながら多くの人が、一歩も進めずに諦めていく...

 

詩人

 

 お前がほんとうの詩人なら、後悔のなかに、宿痾のなかに、
あらたな詩のたねを見いだすものだべじゃ。
 何度でも何度でもペンを取るもんだべじゃ。
 人間は、寝ながらでも前が向ける。

  病に伏した賢治に対して、政次郎が励ました言葉。

 

  もちろん、これが気休めだということは分かっている。

 

  しかし言わずにはいられなかったのであろう。

 

  最後まで親バカである...

感想

 

  初めは直木賞受賞作品ということでミーハー気分で読み始めたが、
 あっという間に物語に引き込まれてしまった。

 

  受賞作とは思えないほど、分かりやすい文章。

 

  父政次郎はもちろんだが、それぞれが目に浮かぶ家族達。

 

  よくある親子の葛藤。

 

  そして、圧倒的な親バカ...

 

  受賞云々は別にして、非常に面白い作品です。

 

  宮沢賢治ファンはもちろん、知識がない人にもおすすめできる一冊です。

 

 

 

 

 

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