「おらおらでひとりいぐも(若竹千佐子)」の名言・台詞まとめました

「おらおらでひとりいぐも(若竹千佐子)」の名言・台詞をまとめていきます。

 

おらおらでひとりいぐも

なにしろ桃子さん以外とんと人の気配の途絶えたこの家で、音は何であれ貴重である。
最初は迷惑千万厭うていたが、今となればむしろ音が途絶え部屋中がしんと静まり返るのを恐れた。

 

クラシックは悲しみをいや増した。そんな中で聞いたジャズ。
いまだにその曲が誰の何という曲なのか知らないが、悲しみではちきれそうになっていた頭を、内側からガシガシとはたかれた気がした。

囲っていた悲しみが飛び出した。

 

東北弁とは最古層のおらそのものである。もしくは最古層のおらを汲み上げるストローのごときものである。(桃子)

 

喉に引っかかった魚の骨ならばご飯をげろ飲みすればすぐ治るども、心に引っかかった言葉だば、いつまでたってもいづいのす。苦しくてたまらない。(桃子)

 

まぁ人間の無力を思い知らされたわげで、この世は絶望づ壁がある。

したども一回ぞれを認めでしまえば、これで案外楽でねがと、おらは思ったわげで、そこに至るまでの身の処し方を考えればいいどいうごどになる。(桃子)

 

若さというのは今思えばほんとうに無知と同義だった。
ならば、老いることは経験することと同義だろうか、分かることと同義だろうか。(桃子)

 

結婚と同時に家を離れた直美といつごろからか疎遠になった。きっかけは何であったか思い出せない。仕方ないと思っていた。桃子さんと母もそうだったから。

直美と桃子さんに起きたことはいつも桃子さんと母に起きたことの忠実な複製なのだった。

 

「あの……伝染(うつ)るんだよ」(桃子)

 

母親は何度も何度も自分に言い聞かせるべきなんだと思う。自分より大事な子供などいない。
子供に仮託してはいけない。仮託して、期待という名で縛ってはいけない。(桃子)

 

いけない。飼いならし自在に操れるはずの孤独が暴れる。(桃子)

 

人に関わる余地がなかったのだ。見るだけで自足した人生だもの。(桃子)

 

周造は桃子さんが都会で見つけたふるさとだった。故郷に取って代わるもの。美しさと純真さで余りあるもの。目の前でうっとりと眺める美しい彫像であった。

 

……おらくやしいのは新しい女のつもりだった。家に縛られない。親の言いなりにならない。それで出できた、故郷を捨てだ。
で、それで何だったか。結局古い生き方に絡め捕られた。(桃子)

 

四十六億年の過去があった。つづく未来もあると思いたい。(桃子)

 

目的がある一日はいい。
そうだ、おらに必要なのはこの目的だなす。(桃子)

 

猛々しいものを猛々しいままで認めてやれるなら、老いるという境地もそんなに悪くない。(桃子)

 

何にも、何にもながったじゃい。亭主に早くに死なれるは、子供らとは疎遠だは、こんなに淋しい秋の日になるとは思わねがった。(桃子)

 

亭主が死んで初めて、目に見えない世界があってほしいという切実が生まれた。
それまでは現実の世界に充足していて、そんなことは考えもしなかった(桃子)

 

人間の力で如何ともしがたいことがある。そういうことが骨身に滲みて分かってきた月日と重なる。悔いも責めももういいのだ。許されていい。(桃子)

 

意味さえあれば。我慢もできる。(桃子)

 

横顔がさびしそうだった。別れが必然であるなら、生きることそのものが悲しいことなのだと気付いた女の顔だった。(桃子)

 

愛だの恋だのおらには借り物の言葉だ。そんな言葉で言いたくない。周造は惚れだ男だった。惚れぬいだ男だった。(桃子)

 

死は恐れでなくて解放なんだなす。これほどの安心ほかにあったべか。(桃子)

 

おらの命の行く末に涙などいらね。金輪際いらね。(桃子)

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

おらおらでひとりいぐも (文庫)

 

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